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ESG投資の優等生となれる
データセンターを
創りたい。
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データセンター、
そしてデジタルインフラの
持続可能な未来のために
日本におけるデータセンター投資はまさに活況を呈しており、今後も需要が高まっていくと想定されます。その一方で、膨大な電力消費を伴うことに対する警鐘が鳴らされているのも事実です。 また、東京・大阪を中心とするエリアでの建設が集中する傾向にあり、日本の国策である「データセンターの国内最適配置」の実現への道のりは、厳しいと言わざるを得ません。土地保有者・データセンター事業者・デベロッパー・投資家・エネルギー事業者・データセンター設備関連事業者・政府・自治体…、ステークホルダー全員が同じ想いでデータセンターやデジタルインフラ*を整備・活用するプロジェクトを組成し、その伴走者となるべく、私たちデジタルインフラ・ラボ(DIL)は存在します。
*データセンターに限らず、eコマース物流施設、デジタル関連のLab、基地局・通信網、再生可能エネルギーの分野を対象としています。
“あるべき”デジタルインフラ投資を実現するために
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2025.02.14
ソフトバンクグループがオープンAIと共同プロジェクトを発表
2024年12月、アメリカのトランプ大統領と通信大手ソフトバンクグループの孫正義社長の記者会見の模様が話題になりましたが、そんなソフトバンクグループから2025年に入ってまた新たに発表がありましたので紹介していきます。
4年間で5000億ドルという巨額投資「Stargate Project」
2025年1月22日、ソフトバンクグループはOpenAIと共同で、大規模なAIインフラストラクチャ構築プロジェクト「Stargate Project」を発表しました。米国におけるAI分野でのリーダーシップ確立と、世界経済への貢献を目的としたプロジェクトとしています。
Stargate Projectでは、今後4年間で5000億ドルという巨額の投資を行い、そのうち1000億ドルは直ちに投資される予定。この投資は、単にデータセンターやAIインフラを整備するだけでなく、数十万もの米国における雇用創出や、米国の産業再活性化、さらには米国とその同盟国の国家安全保障強化にもつながる重要な基盤になると期待されています。
プロジェクトには、ソフトバンクグループ、OpenAIに加え、Oracle、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに拠点を置く人工知能(AI)に特化した投資会社のMGXが初期出資者として名を連ねています。ソフトバンクグループが財務管理を、OpenAIが運営を担い、孫正義氏が会長に就任。主要テクノロジーパートナーには、Arm、Microsoft、NVIDIA、Oracle、OpenAIが含まれており、これらの企業が緊密に連携し、コンピューティングシステムの構築と運営を行うとのこと。
AIインフラの構築は既にテキサス州で開始されており、全米の候補地でキャンパス建設の契約締結を進めています。Stargate Projectは、OpenAIとNVIDIAが2016年から築いてきた協力関係、そしてOpenAIとOracleの最近の提携に基づいたものです。また、OpenAIとMicrosoftの既存のパートナーシップも活用。Azureの利用を拡大しながら、リーディングモデルのトレーニングや高品質な製品・サービスの提供を目指すとしています。
進むAI・半導体産業への投資
AIのデータセンターなどさまざまなAI関連の投資を行うことを表明するなど、ソフトバンクグループの孫社長が存在感を見せる中、国内では政府が月内にまとめる総合経済対策に盛り込むAI・半導体産業支援策の概要が明らかになりました。2030年度までに10兆円以上の支援を行い、このうち次世代半導体の研究開発補助金などに6兆円程度、政府による出資や債務保証などの金融支援に4兆円以上を充てるとしています。
なお、ソフトバンクグループとOpenAIは、2025年2月3日に合弁会社「SBオープンAIジャパン」を設立しました。企業向けの生成AI(人工知能)サービス「クリスタル・インテリジェンス」を開発・販売し、企業の業務効率化を支援するとしています。ソフトバンクグループは、開発・運用の費用としてオープンAIに年間約4500億円を支払います。
このような背景もありデータセンター、AI・半導体産業投資は国内でも進行していくことが予想されます。ソフトバンクグループとOpenAIの動向も含めて、今後の日本、そして世界の経済成長に寄与する投資につながっていくのかどうか、その成果が問われていくことにもなりそうです。
2025.01.27
シャープ、堺市液晶パネル工場一部売却、AIデータセンター構築へ
昨年稼働停止したシャープの液晶パネル工場(堺市、敷地面積=約80万平方メートル)が、IT業界の注目を集めています。
広大な工場の敷地と建屋を人工知能(AI)向けのデータセンターにしたいソフトバンクとKDDIから協力を求められ、シャープはそれぞれと「合意した」と公表。
この件について12月に大きな発表がありましたので紹介していきます。
KDDIとAIデータセンター構築に関する基本合意書を締結
12月9日、シャープとKDDIは、堺工場跡地にAIデータセンターを構築して早期に稼働させることに合意し、基本合意書を締結したことを発表しました。
KDDIは、堺工場跡地の土地や建物、電源設備などを譲り受けることで、2024年度中にAIデータセンターへの転換工事に着工し、2025年度中に本格稼働させることを目指すとしています。
シャープは、売却を通じたアセットライト化により、ブランド事業を中心とした事業構造を確立していくとともに、KDDIによる速やかなデータセンターの構築に協力していくとのこと。
シャープとKDDIは、AIデータセンターの構築を通じて、各産業・各業界のビジネスパートナーとともに事業を通じた持続可能な社会の構築を進め、日本全体の活性化に貢献していくとしています。
ソフトバンクに1000億円で工場一部売却
12月20日には、堺工場跡地の土地や施設の一部をソフトバンクに売却すると発表。
売却額は約1000億円。ソフトバンクはAI向けデータセンターを構築する計画で、データ処理に使う画像処理半導体(GPU)の調達を含めると総投資額は数千億円規模に達する可能性があります。
データセンターは2025年度中に着工し、2026年の稼働開始を目指すとしています。規模を示す電力容量は開始時に国内最大級の150メガワット程度を見込み、早期に250メガワットまで引き上げ、GPUは米エヌビディアから次世代AI半導体「B200」などを購入する予定です。
ソフトバンクは各地の主要都市にデータセンターを整備する計画を掲げています。堺は関西エリアの大型拠点という位置づけに。生成AIの基盤となる独自の大規模言語モデル(LLM)の開発・運用に使うほか、外部企業などへの貸し出しも想定しています。
堺工場跡地の動向2025年も注目を
シャープは液晶パネル事業の代わりに、家電製品などの「ブランド事業」中心の収益構造に転換する方針を掲げています。売却で得た資金はブランド事業の強化に振り向けるとみられます。
堺工場跡地を巡っては積水化学工業も一部取得を検討しているとの情報もあり、2025年も動きがありそうです。今後も状況を紹介していきたいと思います。
2025.01.21
公正取引委員会、米巨大IT企業へは初のグーグルに排除措置命令へ
千葉県印西市に続いて、広島、和歌山へのデータセンター建設をリリースするなど、日本に対して大規模なデータセンター投資を行っているグーグル。欧米では、グーグルをはじめとする巨大テクノロジー企業に対する、規制当局からの監視が強まっています。また日本の公正取引委員会もグーグルへの監視を強化しています。
グーグルに独占禁止法に違反の疑い
インターネット検索最大手のアメリカの「グーグル」が、スマートフォンのメーカーに対し、自社のアプリを優遇させるなど独占禁止法に違反したとして、日本の公正取引委員会が違反行為の取りやめなどを求める排除措置命令を出す方針を固めたことが分かりました。
公正取引委員会は、グーグルがAndroid端末メーカーに対し、販売するスマートフォンに「Google Play」アプリをプリインストールを許諾する条件として「Google Search」アプリや「Google Chrome」アプリなど、いくつかの自社アプリを併せてプリインストールさせるとともに、それらアプリのアイコンの表示位置を細かく指定したライセンス契約を締結させているとの疑いがあるとして昨年10月に調査を開始。同時に第三者からの情報や意見の募集も実施していたとのこと。
Android端末でGoogle Playが利用できなければ、ユーザーは使いたいアプリのインストール用パッケージをインターネット上から探し、発見できればそれをダウンロードして、手動でインストールしなければなりません。そのため大多数のユーザーは、グーグルの要求に従うほかなく、これは独占禁止法が禁じる「拘束条件付き取引」に該当するのではないかと考えられています。
競合他社の検索アプリを搭載しないことを条件に、検索と連動する広告サービスで得た収益を分配した疑いもあるとのこと。
公正取引委員会は、グーグルがこうした取り引きで遅くとも2020年以降、競合他社を排除して自社を優遇し取引先の事業を不当に制限するなど独占禁止法に違反した疑いがあるとして、違反行為の取りやめなどを求める排除措置命令を出す方針を固めたということです。
もし、排除措置命令が出されれば、アメリカの巨大IT企業への初の措置ということになりますが、公正取引委員会はまず文書で通知を行い、それに対する意見をグーグルから聴取したうえで最終的に処分を決定することになります。
世界的に強まる規制当局からの監視
アメリカでは昨年8月、司法省がグーグルの検索サービスにおける独占的立場を解消するため起こした反トラスト法(アメリカの独占禁止法)訴訟において、裁判所が司法省の主張を認める判決を下しました。9月上旬には、同司法省がエヌビディアの強制調査に乗り出したことが明らかになっています。
そのような中で、日本の公正取引委員会がアメリカの巨大IT企業に排除措置命令を出すのは今回が初めてということもあり、今後の展開に注目が集まっています。
2024.12.24
中国データセンター事業大手GDS、府中市にデータセンター建設を発表
中国のデータセンター事業大手GDSは、国際事業子会社のGDS Internationalを通じて、海外進出を加速させています。今回はGDSが日本市場進出を発表したことについて紹介していきます。
中国データセンター事業大手GDS
GDSは2006年に設立され、同社は現在、蘇州昆山、成都、上海、深圳、北京を含む中華圏で数十のデータセンターを運営しています。
子会社のGDS Internationalは2022年に設立され、シンガポールを本社とし、中国本土以外でのデータセンター建設と運営を行っています。現在は香港、シンガポール、マレーシア、インドネシアで事業を展開中です。
Gaw Capitalと提携して都内にデータセンター建設を発表
GDSは、香港に本拠地を置く不動産プライベート・エクイティ企業Gaw Capitalと提携し、東京都内に総容量40メガワット(MW)のデータセンターパークを共同で建設すると発表しました。
Gawは2022年4月に東京都府中市の府中インテリジェントパークにある府中ビルを取得。GDSとGawは、その府中インテリジェントパークの内の区画にキャリアニュートラルなデータセンターパークを開設し、安全で拡張可能な最先端のデジタルインフラに対する巨大な需要を満たす計画です。
区画の総面積は10,970平方メートル(118,080平方フィート)で、第1期は2026年末の稼働開始が予定されており、すでにGDSに対して発注の意向を示した顧客もいるそうです。
GDSの黄偉・会長兼最高経営責任者(CEO)は日本の市場規模、アジア太平洋地域の3大データセンター市場の1つであることと、人工知能(AI)の需要の急拡大について触れ「当社のグローバル事業の急成長を確信している」としています。
日本経済新聞によると、東京圏でデータセンターが急増しており、施設規模は今後3〜5年で倍に膨らんでシンガポールを抜き、アジア首位の北京に迫る見通しとされ、そういった状況もGDSの日本進出の要因の1つであったことが予想されます。
中国データセンター企業初日本進出で注目を集めるGDS
今回は、中国データセンター企業初の日本市場進出ということで注目されている発表について紹介していきました。
GDSのデータセンター建設について更なる詳細が分かり次第、また状況をお伝えしていきます。
2023.07.05
アイルランド政府のデータセンター開発モラトリアムに、Googleが反発
アイルランド政府、データセンター開発に制限
アイルランドの公益事業規制委員会(CRU)が、ダブリン大都市圏での新しいデータセンター開発に事実上のモラトリアムを課し、影響を制限する決定を下しました。
アイルランドの国営送電事業者EirGridは、それを受けて、ケースバイケースでグリッドへの接続のための新しいアプリケーションのみを検討すると述べました。伝えられるところによると、制限は2028年まで続く可能性があります。
アイルランド政府産業開発庁(IDA)のマーティン・シャナハン最高経営責任者(CEO)は最近、新しいデータセンターは「現時点では、ダブリンと東海岸で発生する可能性は低い」と述べています。
Googleはこのようなアイルランドの規制当局に対し、同国のデータセンター開発にモラトリアムを強制しないよう求めています。
同社は公益事業規制委員会(CRU)への提出書類で、検索およびクラウド会社は、データセンター開発のモラトリアムは「絶対に」回避する必要があると述べました。
アイリッシュ・タイムズ紙が情報公開請求により最初に報じたところによると、Googleはこのような禁止措置はアイルランドのデジタル経済としての野心について「誤ったシグナル」を送ることになり、同国のインフラへのさらなる投資を「不可能」にすると付け加えています。
提出書類の中でGoogle は、アイルランドのネットワークに既存の電力容量がある場所についてより透明性を求めるとともに、データセンターの電力使用量の伸びを予測するEirGridの予測について、より明確でオープンなものにする必要があるとしています。
高まるクラウドコンピューティングの需要、Googleの提案
2012年にアイルランドで最初のデータセンターを立ち上げた Googleは、最終的に必要とする以上の容量を予約したり、その容量に成長するのが遅すぎるデータセンター事業者に対する新しい料金体系を提案しました。
「最大予約容量に向かって需要が増加していない消費者は、毎年増加していることを実証している消費者よりも多く請求されるように、送電料金制度を設計することができる」と述べています。
EirGridと政治家は以前、データセンターの開発をアイルランド西部(ダブリンの制約のある地域から離れ、再生可能エネルギー源に近い場所)に移すことを提案しましたが、Google はこれが実現可能な解決策ではないと指摘しています。
「ダブリンでのクラウドコンピューティングの需要は高まっています。多くのクラウドサービスはユーザーの近くにあるデータセンターで提供する必要があり、ダブリンから遠く離れたデータセンターでは、顧客の必要に応じてこれらのサービスを提供することはできません。」
AWSの別の提出書類では、アイルランドは過去に供給問題に対処する機会を逸してきたと述べています。
「これまでの10年間、補強工事を行い、成長と投資に備えた送電網を整備し、より断続的な資源の統合に備えた送電網を整備する機会があった」と述べています。
社会民主党とPeople Before Profitの両党は、過去12ヶ月間、将来のデータセンタープロジェクトの全国的なモラトリアムを求めてきました。PBPの法案は、データセンター、液体天然ガスプラント、新しい化石燃料関連のインフラを絶対禁止とするものでした。
ダブリンでは先月、南ダブリン郡議会(SDCC)が新しい開発計画案の一環として、同郡での今後のデータセンター建設を阻止することを決議しています。
では、アイルランド政府のデータセンター開発モラトリアムには、どのような背景があるのでしょうか。
アイルランド政府、データセンター開発モラトリアムの背景
アイルランド政府による、排出量と再生可能エネルギーの目標の達成が背景にあります。
EirGridによると、データセンターのエネルギー使用量は、2030年までに9TWh増加すると予測されており、2030年のアイルランドの送電網の供給量の23%から31%の範囲で予測されています。これは、政府が自然エネルギーの割合を増やすことで、排出量を60〜80%削減したいと考えている時期にあたります。同時に政府は暖房や輸送を電気に移行することで脱炭素化を図りたいと考えており、送電網の需要をさらに高めています。
アイリッシュ・タイムズ紙によるとEirGrid社はさらに1.8GWのデータセンターをグリッドに接続することに合意しており、現在のピーク時の需要は約5GWで、さらに2GWのアプリケーションが準備されているとのことです。
2018年に発表された「アイルランドの企業戦略におけるデータセンターの役割に関する政府声明2018」 (Government Statement on the Role of Data Centres in Ireland’s Enterprise Strategy 2018)では、国の経済パフォーマンスにおいてデータセンターに積極的な役割を与えていましたが、今後は「セクターごとの排出量の上限や再生可能エネルギーの目標、継続的な供給の安全性に関する懸念、現在必要とされている需要の柔軟性対策との整合性を確保するため」に見直されることになりました。「また、さらなる規制の強化も検討されます」と報じられています。
功を奏するのか裏目に出るのか
世界的にも需要が高まるデータセンター開発にモラトリアムを課すアイルランド政府。Googleからの反発を受けながらもモラトリアムを継続する様子。この決断が功を奏するのか、裏目に出るのか。動向を見守っていきます。
2023.03.26
データセンターの設備点検業務ロボット2023年4月から本格展開(NTTデータ)
株式会社NTTデータは、同社が運営するデータセンター「NTT品川TWINS DATA棟(以下、品川データセンター)」において、ロボットを使った設備点検業務の遠隔化/自動化の取り組みを行い、従来人手で行われていた設備点検業務を約50%削減できることを確認したことを発表しました。
NTTデータは2023年4月以降、全国のデータセンター拠点へのロボット導入を進めます。
ロボット導入の背景
NTTデータでは、データセンターをはじめとしたビル管理業界では人手不足が深刻化しており、中でも設備管理業務は熟練者の不足が問題となっており、省人化や効率的な業務実施が求められていると説明。
設備管理業務の中では、点検業務が省人化による効果やデジタル技術活用による遠隔化/自動化の実現性が高いと考え、同社の品川データセンターにおいて、実用化に向けた検証を進めてきました。
ロボット導入の概要と変化するチェック業務
取り組みでは、あらかじめ設定した点検ルートをロボットが自動巡回し、メーターやランプ、設備外観の撮影、センサーによる臭気など環境データの取得を行うことで、人が行っていたメーター測定やランプ確認、外観異常・異臭チェックの業務を代替します。
この方法の場合、1つのカメラやセンサーで複数箇所の点検を行え、稼働中の現用設備に手を入れる必要もないため、点検対象ごとのIoTカメラ・センサーの設置やスマートメーター化といった他の方法と比較して、安価かつ簡易に遠隔化/自動化を実現できます。
今回用いたロボットは、業務DXロボットのメーカーであるugo株式会社と共同で、次世代型アバターロボット「ugo Pro」を設備点検業務用に改良したものです。
メーター値を詳細に撮影するため、標準モデルより高画質な4Kカメラを搭載するとともに、においセンサーやマイク、サーモカメラなど、点検項目に応じて複数のデバイスをugo本体に搭載し、用途を拡大できます。
PCのみで操作が可能で、走行ルートもノーコードで設定できるため、現場担当者も気軽にロボットを利用できます。自動走行と遠隔操縦を切り替えられ、自動で点検業務を行うだけでなく、遠隔からの作業支援など複数の用途で利用も可能です。
これらの特徴により、さまざまな点検項目に対応できるだけでなく、遠隔からの作業支援や工事の立ち合いなど用途を拡大することも可能です。
ロボットやセンサーを使って点検業務を遠隔化/自動化することで、業務時間が削減できるだけでなく、人の感覚に頼っていた異常判断のしきい値を数値化し、熟練者に頼らない異常発見を実現できます。
また、作業支援や工事の立ち合いなども含め、現地でしかできなかった業務を遠隔で実施可能にすることで、柔軟な働き方に対応し、新たな担い手の確保等の効果が期待できます。
今後について
NTTデータでは今後、メーター読み取りシステムや異常検知AIとの連携を進めることで、現在担当者による実施が必要となる記録・報告作業まで自動化範囲を拡大し、点検業務にかかる時間を最大80%削減することを目指しています。
また、ロボットやセンサーで取得したデータを活用した高度な異常検知や設備の予知保全といった、設備管理業務の高度化にも取り組んでいくとのことです。
2023年4月から、全国15のデータセンターを対象として、取り組みを順次展開していく予定。
さらに、これらにより得られた知見をもとに、2023年度中に設備点検業務の遠隔化/自動化サービスとして商用提供することを目指します。
商用提供にあたっては、ugoがNTTデータとの共同検証で得られた知見を生かして開発した新型ロボット「ugo mini」を活用した設備管理業務の遠隔化/自動化ソリューションの開発を行い、導入のコンサルティングからシステム構築・運用までワンストップで、顧客の課題解決をサポートしていきます。
深刻化する人手不足の解消に向けて、データセンターの設備点検業務ロボットの本格展開の日が待たれます。
2023.03.11
北海道石狩市で計画する「ゼロエミッション・データセンター」の着工を発表(KCCS)
京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)は24日、北海道石狩市で計画する「ゼロエミッション・データセンター」について、2022年12月にデータセンター建設に着工し、2024年秋に開業を予定すると発表しました。
KCCSでは2019年に、北海道石狩市において、再生可能エネルギー100%で運営するゼロエミッション・データセンターの計画を発表。
その後、当初予定していたベースロード電源の計画変更により、電源構成およびデータセンター設計を見直していましたが、今回、建設着手と開業予定を発表しました。
建設するデータセンターは、北海道石狩市の石狩湾新港地域に位置し、敷地面積は約1万5000㎡、延床面積は約5300㎡(開設時)、ラック数は400ラック規模(開設時)。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて
国内では2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の達成に向けた再エネの地産地消や、政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」におけるデータセンターの地方分散が重要なテーマとなっており、非化石証書等の環境価値の購入により環境負荷をプラスマイナスゼロにする「実質再エネ」の導入が進んでいます。
そのために、再エネ導入量のさらなる拡大に向けて、「再エネの直接利用」の拡大も必要とされます。
しかし、データセンター等の大規模な需要施設においては安定した再エネ電力と経済性の確保が課題となっており、「再エネの直接利用」の実現は容易ではありません。
石狩市は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、環境省の公募事業「脱炭素先行地域(第1回)」に選定されています。
また、ゼロ・カーボンに向けた施策「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」を策定し、石狩湾新港地域にデータセンター群および周辺施設へ再エネを供給することで、脱炭素型の産業集積を目指しています。
ゼロエミッション・データセンターでは、地域の豊富な再エネ電源を活用するとともに、KCCSの所有の太陽光発電所をデータセンターの近隣に新設し、それらの再エネ電源を直接利用することになります。
また、複数の再エネを「信頼性」「環境性」「経済性」を同時に確保しながらデータセンターを運営するために、蓄電池とAI技術を活用した電力需給制御の仕組みを独自に構築します。
KCCSでは、石狩市における「再生可能エネルギー100%で運営するデータセンター事業」を通じて、再エネの地産地消の可能性を実証するとともに、国内でのデータ分散保管や、データセンター技術者・エネルギー関連技術者などの雇用創出による地域活性化への貢献を目指すとしています。
2050年カーボンニュートラル実現に向けて「ゼロエミッション・データセンター」の開業に、期待が高まっています。
2023.03.01
2030年までのウォーター・ポジティブを表明(AWS)
ウォーター・ポジティブとは
ウォーター・ポジティブとは、消費する水よりも多くの水を供給することを指します。世界中で淡水不足が課題となっている中、企業などが水を確保するために様々な取り組みを行っています。
方法は主に2通りで、消費を減らすか供給を増やすかのどちらかです。
水の消費を減らすためには、節水や再生利用、水の供給を増やすには、水不足や水の汚染など、水ストレスが高い地域や事業への投資などの方法があります。
データセンターにおける水使用量の削減に取り組むAWS
Amazon Web Services(AWS)は、自らの事業をウォーター・ポジティブにすることを表明した新たなハイパースケーラーとなりました。
ラスベガスで開催されたイベント「AWS re:Invent」で、同社は2030年までにウォーター・ポジティブを実現し、直接業務で使用する以上の水を地域社会に還元するという方針を示しています。
AWSのCEOであるAdam Selipsky氏は次のように述べています。
「水不足は世界中で大きな問題となっており、本日のウォーター・ポジティブの発表により、私たちはこの急速に広がる問題の解決に向け、自らの役割を果たすことを約束します。
すべての人が水を使えるようにするためには、この貴重な資源を節約し、再利用するための新たな方法を開発する必要があります。私たちは、これまでの歩みを誇りに思う一方で、もっとできることがあるとも思っています。
私たちは、クラウド事業におけるウォーター・スチュワードシップをリードし、私たちが事業を展開するコミュニティで使用した以上の水を還元することを約束します。これが環境とお客様にとって正しい行動であることを私たちは確信しています。」
この目標を達成するための同社の取り組みとしては、水の使用量をリアルタイムで分析し、IoT技術を用いて漏水を特定して修正する、冷却にリサイクル水や雨水を利用する水を複数回再利用できるオンサイト水処理システムを含む、さらに可能な限り施設での水なし冷却や様々な水の補充活動に資金提供するなど、還元だけでなく補充活動も含まれます。
2021年、AWSは世界の水使用効率(WUE)指標である1kWhあたり0.25Lの水を達成したと述べています。アイルランドやスウェーデンでは、AWSは1年のうち95%、データセンターの冷却に水を使用していないとのことです。
なお、米国エネルギー省のレポートによると、平均的な蒸発冷却式データセンターのWUEは、1kWhあたり1.8Lであるとされています。
英国では、AWSはThe Rivers Trust社およびAction for the River Kennet社と共同で、テムズ川の支流に2つの湿地帯を作ることに取り組んでいます。
「イングランドの河川は国の宝であり、AWSと提携し、この地のメンバートラストと協力してテムズ川とその支流を保護できることを嬉しく思います」と、The Rivers TrustのCEOであるMark Lloyd氏は述べています。
「2030年までにウォーター・ポジティブになるというAWSのコミットメントは、気候変動の影響を受けた河川や水資源の回復を支援するために必要な行動を後押しするものです。
私たちは、AWSとの関係を拡大し、このパートナーシップを利用して、他の企業が河川の回復力を向上させる水管理活動を共同で支援できる同様の道を示すことを楽しみにしています。」
データセンターは冷却のために大量の水を使用しますが、業界が実際に使用する水の量は明確ではありません。
研究者らは、米国の平均で、データセンターのエネルギー消費1MWhは7.1㎥の水を必要とすると推定していますが、これは地域や施設によって大きく異なる可能性があります。
Google、Microsoft、Metaの取り組み
Google、Meta、Microsoftは、2030年までのウォーター・ポジティブを公約していますが、彼らの施設の多くは現在、1日あたり数百万ガロンもの水を使用しています。
北米、ヨーロッパ、南米に40を超えるキャリアニュートラルデータセンターを所有および運営しており、コロケーションおよびピアリングサービスを提供しているCyrusOneは、自社のいくつかの施設がウォーター・ポジティブであると主張しています。
世界中の投資家による責任投資戦略の開発と実践をサポートしてきたESG調査・レーティング・データ提供のリーディングカンパニーMorningstar Sustainalyticsは以前、マイクロソフトが節水への取り組みで市場をリードしている、という報告書を公開しました。
ヨーロッパのデータセンター事業者らは今年、欧州委員会に対し、2040年までに水の使用量をコンピュータの電力1kWhあたり最大400mlに削減することを表明しました。
地球温暖化や人口増加の影響により、世界中で水不足が問題視されはじめています。大手企業のウォーター・ポジティブに向けた取り組みに今後も目が離せません。
2022.09.05
その4:最終回 – データセンター(DC)とカーボンニュートラル
DCの最適配置に向けて地方分散とカーボンニュートラルへ向けて成功するキーワード
地球温暖化や異常気象、CO2対策、SDGs及びESG投資のキーワードは、企業レベルにとどまらず、今や国民一人一人にも浸透し意識レベルが向上しています。
ちょっと視点を変えますが、今日までのコロナ禍において、世界では外出禁止令等法規制という強い措置をもってコロナ対策をしていましたが、日本では法による罰則がなくても殆どの事業者及び個人は、国が指導する3蜜対策、リモートワーク、営業自主規制、マスク着用等々を成功させています。日本人の国民性が自己の権利・主張のみならず、周囲への配慮、気遣いができる義務を重んじる国民性であることが、改めてコロナを通じて再認識したのではないでしょうか。
DCの最適配置における地方分散の実現も、我が国の国民性を活用して成功するキーワードがあるような気がします。
その3で説明した通り、国内のDC利用者が都市部に集中するのであれば、DC利用者に対し、地方の一定の基準を満たした新たなDCを活用することを国が指導し、一定の恩恵を与えることで、DCの最適配置に向けての課題は解消できるのではないかと考えています。
では、地方の一定の基準を満たした新たなDCとはどのようなものにすればよいでしょうか。
DCの開発先例からみてみると、株式会社データドックは新潟県長岡市に今まで類を見ないハイスペックの寒冷地型DCを建設しました。JDCC:ティア4のみならず、PUE値:1.19、床荷重:3.0t/㎡、雪氷冷熱設備の装備、産学連携による余剰エネルギーを活用した植物工場の誘致、その他の耐災害性等々、環境にやさしく、DC利用者が安全・安心してサーバーを設置することが可能なDCとなっています。これらの性能を各方面から評価を受けた結果、世界でトップクラスのサーバーベンダーであるNVIDIAが独自の高い基準による自社のサーバーを設置するために推薦する「NVIDIA DGX-Ready Data Center」として、アジアの7社の1つに認定すると共に、国内においてDCでは初めてとなるJクレジットの認証を受けました。
地方の一定の基準を満たした新たなDCとは、上記を参考として国が一定基準を設けてクリアしたDCのみに与える(仮)認証エコDCとして地方誘致促進を図り、一定規模のサーバーを保有する企業(主に大企業や中堅企業)に対して(仮)認証エコDCにサーバーを置くことを指導する仕組みです。指導に従った企業には、一定の税制措置の優遇や、認証マークの企業広告の活用を可能にして、企業側のESGへの取組みPRに最大限活用してもらいます。加えて、クラウド事業などを展開する企業にとっては、中小企業や個人のエッジコンピューターを利用している相手方に対して、(仮)認証エコDCにサーバーを設置していることをPRして、エッジの利用者のクラウド利用促進を図り、エッジの利用者も間接的にCO2削減に貢献していることを認識させる仕組みです。
その3でDC利用者の都市部での利用が心理的要因であるならば、上記の方法は功を奏することに違いなく、発展形として(仮)認証エコDC周辺にICT系企業の地方誘致促進につながり、地方創生の一助にもなるのではないかと考えています。
(仮)認証エコDCの認定基準ですが、DCがカーボンニュートラルへとより近づくために、認証基準のハードルはより高く、可能な限りPUE値を低く且つ再生可能エネルギーを最大限活用したDCであるべきと考えています。
最後になりますが、このブログが国または地方公共団体のデジタルインフラ関連のご担当者の目に留まり、日本のデジタルインフラの発展の一助となるような、有益な展開になることを切に願っております。
(文責:小杉 雅芳)
以上
2022.09.05
その3:データセンター(DC)とカーボンニュートラル
DCの最適配置に向けての地方分散と現状の矛盾について
国内のDCの立地を見ると、約8割が関東及び関西に集中してるのが現状です。これは大規模地震等の災害に対して脆弱な立地であり、BCP(Business continuity plan:事業継続計画)の観点から大きな問題となっています。また、これらDCの約40%以上が竣工後20年以上を経過していると共に低電力DC(2kVA/ラック以下)の割合が約60%以上を占めている状況で、加速度的に進むAIや深層学習需要等に対応するDCの提供が難しくなっています。加えて、我が国のデジタル化は欧米諸国やアジア圏諸国と比べ遅れを取っており(世界デジタル競争力ランキング2020で27位)、残念ながらデジタル後進国と言わざるを得ない状況です。
現岸田政権においては、2021年12月の所信表明演説で「成長と分配の好循環を実する「新しい資本主義」をコロナ禍に伴う危機後の目標に位置づけ、成長戦略の柱として①イノベーション②デジタル③気候変動④経済安全保障の4分野を掲げ、デジタル分野では日本を周回する海底ケーブル「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」、大規模データセンターや光ファイバー、高速通信規格「5G」と組み合わせて高速大容量インフラの全国での整備を実現する」ことを約束しました。その結果を受けて、DCの最適配置に向けて地方分散の提案が徐々に取り纏まりつつある状況で、現在では多数の地方公共団体も名乗りを上げている状況となっています。
それでは、国が推し進めるDCの最適配置(地方分散)が順調にいけばよいのですが、はたしてどうでしょうか。
今、私たちが肌で感じていることは、新たにDC事業を企てているDC事業者等は、東京であれば東京23区内又は大手町から30〜50㎞圏内のDC用地を、大阪であれば大阪市内(内陸側)又は堂島から30〜50㎞圏内(且つ北摂及び京阪奈エリア)のDC用地を血眼になって探しています。東京23区内や大阪市内においては、都市型DCの建設を目論み、その30〜50㎞圏内には、ハイパースケールDCの建設を目論んでいます。つまり現状においては、我が国が進めるDCの最適配置と矛盾した状況が現場レベルでは進んでいるのが現状です。実は簡単なことで、DC事業者はサーバールームをDC利用者(サーバー設置を希望する企業等)に場所を提供して収益を上げる構造で成り立っていますが、DC利用者自体の需要が上記のエリアを希望していることが大きな要因となっています。当社の経営陣も地方でDC事業をしていた際、DC利用者の呼び込みに大変苦労していたようです。DC利用料金を都市部より安価に設定して営業攻勢をかけても、DC利用者から聞こえてくる声は「大手町、堂島のIXに近い方がレイテンシーの観点から安心」、「有事の際、事務所から1時間以内で駆け付けられる場所が理想的」、「BCPの観点からは地方分散をするべきであるが、大規模な天災直後は、社内経営陣も含め重要性は認知するものの、時の経過と共にトーンダウンしてしまう」等々、心理的要因が大きな影響を与えています。レイテンシーの観点で言えば、海外にサーバーを置くわけではなく、国内の強力な通信網と繋がったDCであれば、時間のずれはごく僅かです。事務所から1時間圏内も、複数の地方DCにバックアップ対策を講じていれば、概ね解消できる議論であり、かつ、各DCにおいても、各利用者の要請に応じてサーバーのマネージドサービスを提供しているのが一般的です。
このような状況下、DCの最適配置に向けて地方に積極的にDCを誘致しても、DC事業者が積極的に手を挙げて、DC事業を展開していくにはハードルが高く、如何にしてDC利用者に地方進出に目を向けさせるかが課題となります。
(その4:最終回)ではDCの最適配置に向けて地方分散とカーボンニュートラルへ向けて成功するキーワードについて触れてまいります。
(文責)小杉 雅芳
第二百七回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説(2021年12月6日)
令和3年12月6日 第二百七回国会における岸田内閣総理大臣所信表明演説 | 総理の演説・記者会見など | 首相官邸ホームページ (kantei.go.jp)
デジタルインフラを巡る現状と課題(2021年4月)
2022.09.05
その2:データセンター(DC)とカーボンニュートラル
カーボンニュートラルへ向けた再生可能エネルギー等の取組みの状況
現在、日本に限らず発電への依存が最も大きいのが化石燃料による発電です。石炭、石油、天然ガス等の化石燃料は、発電する代償として、大量のCO2を大気中に放出することが問題となり、地球温暖化を食い止める観点から世界中でCO2削減が叫ばれています。自動車、航空、運輸産業等においても同様で、化石燃料に代わるエネルギー源を模索し、開発・研究に力を入れている状況です。
また、元々エネルギー資源の乏しい日本においては、1980年代から原子力発電への舵取りに踏み切ったものの、福島第一原発事故に伴い、今後、原子力発電へ依存するか否かは不透明な状況となっています。
このような状況下、今一番注目されているのが再生可能エネルギー(以下、再エネという)の活用です。再エネには太陽光、風力、バイオマス、地熱、潮力、水中、その他と多岐に渡りますが、最も一般的に活用されているのが、太陽光発電です。太陽光発電はDCと一緒になって活用されるケースが日本でも最近は多くみられるようになりました。ただ、再エネの発電効率を考えると、現時点ではカーボンニュートラルと言えるには程遠く、結局のところは化石燃料由来の電力会社の電力に依存せざるを得ないのが現状です。
ところで、メガクラウドベンダーと言われるGAFAMの動向について触れてみると、マイクロソフトは、2030年までに「カーボンネガティブ」にする計画を発表しています。アマゾンは2025年までに再エネを100%使用することをコミットしており、Googleは同社の全てのDCでPUE値が1.1を下回っており、他社DCより消費電力が少なく、業界平均をはるかに下回っていると発表しています。
では、何故メガクラウドベンダーはこのようなカーボンニュートラルの施策が可能となるのでしょうか。ひとつは、北欧エリアの豊富な再生可能エネルギーを活用(開発や再エネの購入)していると共に、同エリアにDCを誘致して、寒冷地DCを実現していることにあります。また、アメリカ大陸においては、広大な土地を活用して、太陽光の大量発電とセットでDCを誘致し、再エネで電力を賄う規模で開発されている状況です。残念ながら日本において同様のDC開発は地理的観点から難易度は高く、実現性が乏しい先例となります。日本には日本に合ったカーボンニュートラルを実現するほかありません。そのためには、再エネの技術開発により一層注力して、例えば、水素、メタン、アンモニア等を活用して、再エネ分野で発電効率を上げることが重要と考えています。そして最も重要なのが、日本におけるDCの寒冷地エリアへの地方分散の実現です。
日本において寒冷地DCとして、高スペックの機能を発揮しているのが、さくらインターネット株式会社の石狩DCと株式会社データドックの新潟・長岡DCに代表されるものがあります。これらのDCは寒冷地特有の外気冷房方式を採用して、PUE値が1.2を下回る数値となっています。また、京セラコミュニケーションシステム株式会社は、再生可能エネルギー100%で運営するDCを石狩市で開業します。
このように、DCのカーボンニュートラル実現への近道は、寒冷地を中心としたDCの地方分散化が近道であり、国もDCの最適配置に向けて舵を切っている真っ只中にあります。
(その3)では、DCの最適配置に向けての地方分散と現状の矛盾について触れてまいります。
(文責)小杉 雅芳
2022.09.05
その1:データセンター(DC)とカーボンニュートラル
今回はカーボンニュートラルなDCの実現の観点から考察してみたいと思います。
DCはサーバーやネットワーク機器類などを安全かつ安心して格納することを目的として作られる施設(不動産)です。サーバーは大量の電力消費が必要な機器です。よって、DCでは大量の電力が消費されます。加えて、サーバーは大量の熱を発生するため、サーバーを正常に稼働させるためにはDC内を一定温度に管理する必要があります。つまりDCはサーバーのみならず、空調機器も大量に電力を消費する、カーボンニュートラルの観点から、大変厄介な施設と言えます。
大雑把なデータですが、日本国内電力消費の約1.4%(2018年)をDCが消費していると言われており、2030年には2018年比6倍以上になるとの分析もあります。※
世界におけるデジタルインフラ分野の成長加速は不可欠で、その中でDCは重要な位置付けになる一方、CO2排出の観点で悪役にもなり兼ねません。
DCとカーボンニュートラルの両立は、はたして成しえることが可能でしょうか。
DCの電力消費をみる一つの指標としてPUE(Power Usage Effectiveness=DC全体の消費電力/IT機器の消費電力)があります。1.0に近ければ近いほど、IT機器以外の消費電力が少なく、効率的なDCということになります。
一昔前のDCのPUEは2.0前後であると言われていましたが、最近竣工しているDCのスペックを見ると、PUE=1.4程度のものが主流となっているようです。また、これから着手するDCにおいては、PUEが1.2を下回る設計値を謳っているものも目立ち始めました。
このようにPUE値が下がり、1.0に近づいている要因は、①空調機器等の性能の向上、②サーバールームの効率的冷却を実現するための設計レベルの向上です。ただ、PUE値を押し下げるにはもっと重要な点があります。それはDCが立地する自然的条件です。
サーバールームは一般的に室温を20℃〜27℃に保っておく必要があるため、空調機器類が最も電力を消費するのは真夏で、且つ昼間の外気温が高温になる時間帯です。DCの立地が寒冷地であれば、大都市と比べ空調効率も良く、更に日中夜の寒暖差が大きいところでは、夜は外気を活用した冷却も可能となります。つまり寒冷地等の地方の立地では、空調機器を極力利用せずにサーバールームの室温を管理することが可能となり、空調機器を使用しない分、PUE値改善に大きく貢献することとなります。
このように、DCを開発する事業者等はCO2削減、カーボンニュートラル社会に向けて鋭意努力していますが、DCは大量の電力消費が不可欠であることは変わりません。
次回のブログ(その2)では、カーボンニュートラルを目指したDCの再生可能エネルギー活用の取組みにつきご紹介したいと思います。
(文責)小杉 雅芳
- 総合資源エネルギー調査会(経済産業省:令和4年3月)
2025.02.14
ソフトバンクグループがオープンAIと共同プロジェクトを発表
2024年12月、アメリカのトランプ大統領と通信大手ソフトバンクグループの孫正義社長の記者会見の模様が話題になりましたが、そんなソフトバンクグループから2025年に入ってまた新たに発表がありましたので紹介していきます。
4年間で5000億ドルという巨額投資「Stargate Project」
2025年1月22日、ソフトバンクグループはOpenAIと共同で、大規模なAIインフラストラクチャ構築プロジェクト「Stargate Project」を発表しました。米国におけるAI分野でのリーダーシップ確立と、世界経済への貢献を目的としたプロジェクトとしています。
Stargate Projectでは、今後4年間で5000億ドルという巨額の投資を行い、そのうち1000億ドルは直ちに投資される予定。この投資は、単にデータセンターやAIインフラを整備するだけでなく、数十万もの米国における雇用創出や、米国の産業再活性化、さらには米国とその同盟国の国家安全保障強化にもつながる重要な基盤になると期待されています。
プロジェクトには、ソフトバンクグループ、OpenAIに加え、Oracle、アラブ首長国連邦(UAE)のアブダビに拠点を置く人工知能(AI)に特化した投資会社のMGXが初期出資者として名を連ねています。ソフトバンクグループが財務管理を、OpenAIが運営を担い、孫正義氏が会長に就任。主要テクノロジーパートナーには、Arm、Microsoft、NVIDIA、Oracle、OpenAIが含まれており、これらの企業が緊密に連携し、コンピューティングシステムの構築と運営を行うとのこと。
AIインフラの構築は既にテキサス州で開始されており、全米の候補地でキャンパス建設の契約締結を進めています。Stargate Projectは、OpenAIとNVIDIAが2016年から築いてきた協力関係、そしてOpenAIとOracleの最近の提携に基づいたものです。また、OpenAIとMicrosoftの既存のパートナーシップも活用。Azureの利用を拡大しながら、リーディングモデルのトレーニングや高品質な製品・サービスの提供を目指すとしています。
進むAI・半導体産業への投資
AIのデータセンターなどさまざまなAI関連の投資を行うことを表明するなど、ソフトバンクグループの孫社長が存在感を見せる中、国内では政府が月内にまとめる総合経済対策に盛り込むAI・半導体産業支援策の概要が明らかになりました。2030年度までに10兆円以上の支援を行い、このうち次世代半導体の研究開発補助金などに6兆円程度、政府による出資や債務保証などの金融支援に4兆円以上を充てるとしています。
なお、ソフトバンクグループとOpenAIは、2025年2月3日に合弁会社「SBオープンAIジャパン」を設立しました。企業向けの生成AI(人工知能)サービス「クリスタル・インテリジェンス」を開発・販売し、企業の業務効率化を支援するとしています。ソフトバンクグループは、開発・運用の費用としてオープンAIに年間約4500億円を支払います。
このような背景もありデータセンター、AI・半導体産業投資は国内でも進行していくことが予想されます。ソフトバンクグループとOpenAIの動向も含めて、今後の日本、そして世界の経済成長に寄与する投資につながっていくのかどうか、その成果が問われていくことにもなりそうです。
2025.01.27
シャープ、堺市液晶パネル工場一部売却、AIデータセンター構築へ
昨年稼働停止したシャープの液晶パネル工場(堺市、敷地面積=約80万平方メートル)が、IT業界の注目を集めています。
広大な工場の敷地と建屋を人工知能(AI)向けのデータセンターにしたいソフトバンクとKDDIから協力を求められ、シャープはそれぞれと「合意した」と公表。
この件について12月に大きな発表がありましたので紹介していきます。
KDDIとAIデータセンター構築に関する基本合意書を締結
12月9日、シャープとKDDIは、堺工場跡地にAIデータセンターを構築して早期に稼働させることに合意し、基本合意書を締結したことを発表しました。
KDDIは、堺工場跡地の土地や建物、電源設備などを譲り受けることで、2024年度中にAIデータセンターへの転換工事に着工し、2025年度中に本格稼働させることを目指すとしています。
シャープは、売却を通じたアセットライト化により、ブランド事業を中心とした事業構造を確立していくとともに、KDDIによる速やかなデータセンターの構築に協力していくとのこと。
シャープとKDDIは、AIデータセンターの構築を通じて、各産業・各業界のビジネスパートナーとともに事業を通じた持続可能な社会の構築を進め、日本全体の活性化に貢献していくとしています。
ソフトバンクに1000億円で工場一部売却
12月20日には、堺工場跡地の土地や施設の一部をソフトバンクに売却すると発表。
売却額は約1000億円。ソフトバンクはAI向けデータセンターを構築する計画で、データ処理に使う画像処理半導体(GPU)の調達を含めると総投資額は数千億円規模に達する可能性があります。
データセンターは2025年度中に着工し、2026年の稼働開始を目指すとしています。規模を示す電力容量は開始時に国内最大級の150メガワット程度を見込み、早期に250メガワットまで引き上げ、GPUは米エヌビディアから次世代AI半導体「B200」などを購入する予定です。
ソフトバンクは各地の主要都市にデータセンターを整備する計画を掲げています。堺は関西エリアの大型拠点という位置づけに。生成AIの基盤となる独自の大規模言語モデル(LLM)の開発・運用に使うほか、外部企業などへの貸し出しも想定しています。
堺工場跡地の動向2025年も注目を
シャープは液晶パネル事業の代わりに、家電製品などの「ブランド事業」中心の収益構造に転換する方針を掲げています。売却で得た資金はブランド事業の強化に振り向けるとみられます。
堺工場跡地を巡っては積水化学工業も一部取得を検討しているとの情報もあり、2025年も動きがありそうです。今後も状況を紹介していきたいと思います。
2025.01.21
公正取引委員会、米巨大IT企業へは初のグーグルに排除措置命令へ
千葉県印西市に続いて、広島、和歌山へのデータセンター建設をリリースするなど、日本に対して大規模なデータセンター投資を行っているグーグル。欧米では、グーグルをはじめとする巨大テクノロジー企業に対する、規制当局からの監視が強まっています。また日本の公正取引委員会もグーグルへの監視を強化しています。
グーグルに独占禁止法に違反の疑い
インターネット検索最大手のアメリカの「グーグル」が、スマートフォンのメーカーに対し、自社のアプリを優遇させるなど独占禁止法に違反したとして、日本の公正取引委員会が違反行為の取りやめなどを求める排除措置命令を出す方針を固めたことが分かりました。
公正取引委員会は、グーグルがAndroid端末メーカーに対し、販売するスマートフォンに「Google Play」アプリをプリインストールを許諾する条件として「Google Search」アプリや「Google Chrome」アプリなど、いくつかの自社アプリを併せてプリインストールさせるとともに、それらアプリのアイコンの表示位置を細かく指定したライセンス契約を締結させているとの疑いがあるとして昨年10月に調査を開始。同時に第三者からの情報や意見の募集も実施していたとのこと。
Android端末でGoogle Playが利用できなければ、ユーザーは使いたいアプリのインストール用パッケージをインターネット上から探し、発見できればそれをダウンロードして、手動でインストールしなければなりません。そのため大多数のユーザーは、グーグルの要求に従うほかなく、これは独占禁止法が禁じる「拘束条件付き取引」に該当するのではないかと考えられています。
競合他社の検索アプリを搭載しないことを条件に、検索と連動する広告サービスで得た収益を分配した疑いもあるとのこと。
公正取引委員会は、グーグルがこうした取り引きで遅くとも2020年以降、競合他社を排除して自社を優遇し取引先の事業を不当に制限するなど独占禁止法に違反した疑いがあるとして、違反行為の取りやめなどを求める排除措置命令を出す方針を固めたということです。
もし、排除措置命令が出されれば、アメリカの巨大IT企業への初の措置ということになりますが、公正取引委員会はまず文書で通知を行い、それに対する意見をグーグルから聴取したうえで最終的に処分を決定することになります。
世界的に強まる規制当局からの監視
アメリカでは昨年8月、司法省がグーグルの検索サービスにおける独占的立場を解消するため起こした反トラスト法(アメリカの独占禁止法)訴訟において、裁判所が司法省の主張を認める判決を下しました。9月上旬には、同司法省がエヌビディアの強制調査に乗り出したことが明らかになっています。
そのような中で、日本の公正取引委員会がアメリカの巨大IT企業に排除措置命令を出すのは今回が初めてということもあり、今後の展開に注目が集まっています。
2024.12.24
中国データセンター事業大手GDS、府中市にデータセンター建設を発表
中国のデータセンター事業大手GDSは、国際事業子会社のGDS Internationalを通じて、海外進出を加速させています。今回はGDSが日本市場進出を発表したことについて紹介していきます。
中国データセンター事業大手GDS
GDSは2006年に設立され、同社は現在、蘇州昆山、成都、上海、深圳、北京を含む中華圏で数十のデータセンターを運営しています。
子会社のGDS Internationalは2022年に設立され、シンガポールを本社とし、中国本土以外でのデータセンター建設と運営を行っています。現在は香港、シンガポール、マレーシア、インドネシアで事業を展開中です。
Gaw Capitalと提携して都内にデータセンター建設を発表
GDSは、香港に本拠地を置く不動産プライベート・エクイティ企業Gaw Capitalと提携し、東京都内に総容量40メガワット(MW)のデータセンターパークを共同で建設すると発表しました。
Gawは2022年4月に東京都府中市の府中インテリジェントパークにある府中ビルを取得。GDSとGawは、その府中インテリジェントパークの内の区画にキャリアニュートラルなデータセンターパークを開設し、安全で拡張可能な最先端のデジタルインフラに対する巨大な需要を満たす計画です。
区画の総面積は10,970平方メートル(118,080平方フィート)で、第1期は2026年末の稼働開始が予定されており、すでにGDSに対して発注の意向を示した顧客もいるそうです。
GDSの黄偉・会長兼最高経営責任者(CEO)は日本の市場規模、アジア太平洋地域の3大データセンター市場の1つであることと、人工知能(AI)の需要の急拡大について触れ「当社のグローバル事業の急成長を確信している」としています。
日本経済新聞によると、東京圏でデータセンターが急増しており、施設規模は今後3〜5年で倍に膨らんでシンガポールを抜き、アジア首位の北京に迫る見通しとされ、そういった状況もGDSの日本進出の要因の1つであったことが予想されます。
中国データセンター企業初日本進出で注目を集めるGDS
今回は、中国データセンター企業初の日本市場進出ということで注目されている発表について紹介していきました。
GDSのデータセンター建設について更なる詳細が分かり次第、また状況をお伝えしていきます。