ESG投資の優等生となれる
データセンターを
創りたい。
データセンター、
そしてデジタルインフラの
持続可能な未来のために
日本におけるデータセンター投資はまさに活況を呈しており、今後も需要が高まっていくと想定されます。その一方で、膨大な電力消費を伴うことに対する警鐘が鳴らされているのも事実です。 また、東京・大阪を中心とするエリアでの建設が集中する傾向にあり、日本の国策である「データセンターの国内最適配置」の実現への道のりは、厳しいと言わざるを得ません。土地保有者・データセンター事業者・デベロッパー・投資家・エネルギー事業者・データセンター設備関連事業者・政府・自治体…、ステークホルダー全員が同じ想いでデータセンターやデジタルインフラ*を整備・活用するプロジェクトを組成し、その伴走者となるべく、私たちデジタルインフラ・ラボ(DIL)は存在します。
*データセンターに限らず、eコマース物流施設、デジタル関連のLab、基地局・通信網、再生可能エネルギーの分野を対象としています。
“あるべき”デジタルインフラ投資を実現するために
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2024.03.25
エヌビディア決算、大幅な増収増益で好業績
エヌビディアが2月21日、2024年1月期決算を発表しました。通期での売上高は609億ドル(前年比126%増)、営業利益は330億ドル(同7.8倍)でした。
第4四半期(11月〜1月)の売上高は221億ドル(前年比265%増)となり、会社予想の200億ドルを上回りました。営業利益に至っては136億ドル(同10倍)で、営業利益率は61%を超えました。
好業績を受けて、時間外株価は目下7%強の高騰。2〜4月期の売上予想は240億ドル(±2%)とし、「2024年、2025年とそれ以降も成長を続ける」と力強い見通しを示しました。
クラウド向けがデータセンター売上の半分
エヌビディアの業績を牽引するのは、依然としてデータセンター需要です。
データセンターの売上高は四半期ごとに増加しており、第3四半期の売上高は145億1000万ドルと279%増加しました。その前の四半期は103億2,000万ドルで、171%増。第1四半期は42億8000万ドルで14%増でした。
最新の四半期では、データセンター売上の半分以上が大手クラウドプロバイダーからのものだったといいます。
エヌビディアの創業者兼CEOであるジェンセン・フアン氏は、「加速するコンピューティングと生成AIは転換点を迎えている。企業、産業、国家を問わず、世界中で需要が急増している」として、データセンターの設置ベースは約1兆ドルに上り、今後 4、5 年の間に、世界中のソフトウェアを動かす 2 兆ドル相当のデータセンターが誕生すると主張しています。
今後もエヌビディアは独走状態か
今後もデータセンター需要は拡大することが予想されます。生成AI拡大にともなって高性能な半導体の需要は急増しており、独走態勢で受注を伸ばしています。
3月19日には、日立製作所がエヌビディアとAIサービスの開発で協業すると発表しました。鉄道やインフラ設備をデジタルの仮想空間で再現し、保守点検の効率化につなげる予定です。
また、自動運転技術の強化に向けて、エヌビディアと中国EV各社が提携を拡大することも発表されています。
独走状態は当面続きそうですが、エヌビディアの動向を追っていきたいと思います。
2024.03.14
さくらインターネット積極姿勢、更なる成長に期待
前回の記事でも紹介したさくらインターネットが、今後5年間で最大1000億円を投じて能力を増強する方針です。
さくらインターネットの田中社長は、今後の経営戦略として
「来期は今期の2倍に当たる最大200人の人材を採用する。サーバーを保管するデータセンターの開発力と運用力を高める」と語っています。
積極姿勢の背景にはデータセンター需要の持続的な拡大があります。クラウドの裾野の広がりに加え、生成AIなど計算量の多い新技術の登場で、膨大な演算を効率的に行えるインフラを有するデータセンターが世界的に不足しています。
更に昨年11月「25年度末までにすべての技術要件を満たすこと」(河野デジタル相)という条件付きではあるものの、政府や地方自治体が共同で使う政府クラウドの基盤部分を提供する事業者に選ばれました。AWSジャパン、Googleクラウドジャパン、日本マイクロソフト、日本オラクルの米国勢4社に続く、日本勢としては初の参入となります。
日本企業初の政府クラウド認定の発表に、株式市場も反応。株価は発表直後から急押し。23年通年の値上がり率は東証プライムの上場銘柄で首位となりました。
日本拠点を持ち味に
さくらインターネットはデータセンターを通じてクラウドサービスに必要な仮想サーバーなどのインフラを貸し出していますが、海外IT大手とは異なり、運営する5ヵ所のデータセンターはすべて国内にあります。開発者全員が日本で働き、クラウドの機能を顧客の要望に合わせやすい小回りの良さが持ち味です。
政府クラウドを先行導入する省庁や自治体では、発行済みアカウント数175のうち9割超がAWSを選択しています。個人情報保護の観点から、さくらインターネット提供の「日の丸クラウド」の利用を望む自治体が一定数いるもようですが、増収効果は年間数十億円にとどまる見込み。
重要なのは政府クラウド参入で得られる知名度や信頼度の高まりといった間接的な効果です。生成AIを使って業務を効率化したい製造大手や訪日外国人向けの翻訳サービスに取り組む旅行大手など、新たな取引先の開拓につなげる方針です。
また、昨年北海道のデータセンターに生成AI向けクラウドサービス「高火力」の開発に3年間で130億円規模の投資を行うことを決定。米エヌビディア製高性能GPU「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載したサーバーを石狩データセンターに用意。大規模言語モデルなどの生成AIを中心とした利用を想定しており、今年1月に「高火力 PHY」の提供を開始しました。
さらに田中社長は中長期の見通しとして、「3~5年で現在の10倍を提供できなければ国内の需要を満たせない」として、日の丸クラウドの整備を後押しする経済産業省と連携し、エヌビディアに安定供給を求めています。
GPUの調達見通しに沿ってデータセンターの増強を続ける場合、単純計算で投資額は1000億円規模に。生成AI関連は利益率が高く、ここで生み出した利益を追加投資の原資とし、不足分は銀行借り入れなどを検討しています。
更なる成長を期待
競合の米IT大手も日本で攻勢を強めていますが、さくらインターネットは今後も攻めの姿勢を見せていくでしょう。日本拠点の地の利を生かし、更なる成長を期待したいと思います。
2024.02.22
さくらインターネット、国内勢で初めて政府クラウドの提供事業者に認定
さくらインターネットは、日本最大規模の大容量・高速の通信回線を保有し、高度なセキュリティと堅牢な設備環境を備えたデータセンターを自社で運営するインターネットサービス事業者です。
同社が提供するIaaS型クラウドの「さくらのクラウド」が、2023年11月にデジタル庁が募集した「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」に認定されました。従来はAWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructureという外資系事業者のみだったので、国産事業者としては初めての認定となります。また本認定は、2025年度末までに技術要件をすべて満たすことを前提とした条件付きです。
要件を満たすには、クラウドの機能を短期間で大幅に向上させる必要があり、高度なソフトウェアを開発できる優秀なIT人材の獲得がカギとなります。同社は補助金を主にIT人材の確保に充てる見通しで、2024年度に最大200人の人材を採用する方針です。データの保管や暗号化などの技術開発を加速します。
生成AI向けクラウドサービスを提供開始
またさくらインターネットは、政府クラウドの提供事業者に認定されたのを機に生成AI(人工知能)を活用する大企業の需要を開拓しています。
AIに関わるコンピューティングリソースを安定供給確保することは、日本のデジタル社会を発展させるために必要不可欠であるとして、生成AI向けクラウドサービス「高火力」の開発を決定。
「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載した、生成AI向けクラウドサービス「高火力」の第一弾として、ベアメタルシリーズ「高火力 PHY(ファイ)」を2024年1月31日(水)より提供を開始。3年間で130億円規模の投資を行うことも決定しており、引き続きサービスを拡大する予定です。
今回提供を開始した「高火力 PHY」は、「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」をサーバー1台当たり8基搭載し、サーバー間の通信を200GbE×4本の回線で行うことが可能であるなど、大規模言語モデルなどの生成AIを中心とした利用を想定した仕様となっているそうです。また本サービスは、再生可能エネルギー電源100%で同社が運営する石狩データセンターでの提供を予定。これによりCO2排出量ゼロを実現しながら生成AIを開発することができるとしています。
業界から注目を集めるさくらインターネット
長らく外資系のみだった政府クラウドの事業者に選定されたことで注目を集めるさくらインターネット。田中邦裕社長は、「2025年度末までに機能を充足させる計画を提出し、それを完遂させる覚悟を持って取り組みます」とコメントしており、並々ならぬ決意が感じられます。同社の今後の展開に期待が高まります。
2022.06.27
MW単位の地中熱活用について
地中熱活用というと「地中熱発電」が思い浮かび、不安定さが指摘されます。
しかし、地中熱は常に一定の温度を維持しているため、熱交換により冷暖房にも利用できます。
デジタルインフラ・ラボは地中熱活用の権威である笹田 政克氏(地中熱利用促進協会 理事長)を訪問し、地中熱の活用状況について伺いました。
大型病院でのは空調設備でMW単位の活用事例もあり、ゼネコン等から笹田氏への問い合わせが増えているとのこと。
データセンター用地で人気があり、かつ地中熱活用に適しているエリアに関する情報を聞くこともできました。
具体的な提案に活用するべく、引き続き研究していきます。
2022.08.09
「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」総務省、第一回の採択結果から見るデータセンター事業の未来
採択事業者一覧
令和4年6月27日、総務省は「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」の令和4年度1回公募採択結果を公表しました。
採択された事業者は以下の通り。
間接補助事業者 |
間接補助事業実施場所 |
合同会社石狩エネデータセンター第1号 |
北海道石狩市 |
ヤフー株式会社 |
福島県白河市 |
NTTグローバルデータセンター株式会社 |
京都府相楽郡 |
株式会社オプテージ及び合同会社KS東梅田 |
大阪府大阪市 |
ソフトバンク株式会社及びBBIX株式会社 |
奈良県生駒市 |
株式会社インターネットイニシアティブ |
島根県松江市 |
株式会社QTent |
福岡県福岡市 |
公募の目的は?
総務省はこの公募の目的について、大規模震災の発生等が予測される日本において、データセンター、海底ケーブル、インターネット接続点(IX)等のデジタルインフラを設置する支援を行い、地方分散による強靱な通信ネットワーク拠点の整備を行うことは、経済安全保障の観点等から、国内外のデータを「安全・安心」に蓄積・処理できるデータ・ハブとなることに貢献できる旨を掲げています。
データセンターを誘致したい地方自治体
これに先立ち、令和4年4月12日、経済産業省はデータセンターの新設に前向きな土地のリストを公式サイトで公開しました。
データセンター配置の最適化に向け、新設に前向きな地方公共団体と意見交換したところ、100を超える地方公共団体から候補地の提示があり、その多くは実現可能性に向けた検討段階であったこと、そしてデータセンター事業者などへの認知拡大を望む声もあったことから公表に至ったようです。
データセンター事業の未来は?
2021年に発表されたIDC Japan 株式会社の国内データセンターサービス市場の最新予測によると、2025年のデータセンターの国内市場規模は2兆7,987億円。2020年から2025年の年間成長率は12.5%になると予測されており、クラウド需要を背景に引き続き拡大すると期待されています。
また同社の調査によると、2021年から4年間ほどはデータセンターの新設が相次ぐと予測されており、この期間に新設される事業者データセンターは、延床面積ベースで毎年20万平方メートル(東京ドーム4個分)前後の見通しです。
ますます活性化するデータセンター投資から目が離せません!
デジタルインフラの知見を活かして、
オフバランス化をご提案します。
データセンターに代表されるデジタルインフラへの投資は、非常に高額で、かつ多様な情報収集が必要なため、スピーディーな意思決定ができずにビジネスチャンスを逸するケースが散見されます。私たちデジタルインフラ・ラボは、日本におけるデジタルインフラ投資を持続可能に促進するため、事業性評価、ファンドマネジメント及びアセットマネジメント、建設及び開発、そしてデータセンター運営の実務経験者が集っています。
デジタルインフラ領域の知見に基づくオフバランス化スキームを中心に、貴社にメリットのあるESG投資のご提案を致します。
詳しくはこちら
https://di-lab.biz/proposed-scheme/
引用・参考:
https://www.ciaj.or.jp/ciaj-wp/wp-content/uploads/2022/06/20220627saitaku.pdf
https://www.ciaj.or.jp/dc_inf/#inner_info
https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220412003/20220412003.html
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ48272821
2022.09.12
データセンターに求められるロケーション
近年、爆発的に増加するデータトラフィックに追従するかのように、長期的に収益を上げ続ける不動産投資としてデータセンターに注目が集まっています。
データセンターは、一般的な商業施設と比較しても非常に堅牢に設計されているため、資産価値が落ちにくく、投資先としての信頼性は高くなる傾向がありますが、実際に安定的に稼働し続ける(絶対に停止しない)ためには、立地の条件が非常に重要です。
今回は、安定的に稼働できるデータセンターを見極める立地条件を3つご紹介します。
1:通信遅延と冗長性への許容
データセンターに最適なロケーションは、通信遅延や冗長性(じょうちょうせい)に対しユーザーがどの程度許容できるかによって変わります。
通信遅延はほとんどの場合、データセンターとユーザー間の距離によって発生するため、レスポンスの速さが求められるシステムや、ビッグデータのリアルタイム処理など、高い通品質が求められる場合には、利用者が多い都市部に建設することが望ましいとされています。
その一方で、「一定の通信遅延は許容しつつ、広い敷地に大規模なデータセンターを建築して、膨大なデータを処理したい」というメガクラウドサービス事業者のニーズや、「データのバックアップを保管して災害に備えたい」という一般企業のニーズも存在します。
ネットワークの冗長性とは「異キャリア」及び「異ルート」の確保であり、「異キャリア」とは異なるキャリアのアクセス回線や接続サービスを組み合わせること。「異ルート」とは各回線経路が3km以上離れて敷設されていることを指します。データセンターはネットワーク接続されていなければ、ただの「箱」となってしまいます。
投資家はネットワーク環境を十分に調査した上で、データセンター投資案件を選別する必要があるのです。
2:電力確保
データセンターの投資価値の判断には、電力確保という観点も大切です。
データセンターでは、高性能なコンピューターを大量に、そして24時間365日、常に稼働させ続けるために、多くの電力を消費します。
IEAの2020年レポートによるとデータセンターの年間電力需要は約200TWhとされ、それは世界の最終電力需要の0.8%に相当します。日本の首都圏に限定すると、全消費電力のうち、データセンターは12%を占めるという調査結果もある程です。
全世界のインターネットのトラフィックが増え続け、世界のインターネットユーザーも2019年の38億人から2025年には50億人に達すると予測されている中、データ量は今後も増え続け、減ることはまず考えられません。
大量の電力を引き込むための工事は、場所によって費用や工期が大きく異なります。
変電所に近かったり、過去に大量の電力を使用していた工場の跡地などは短期間で比較的安価に送電を開始できる可能性がありますが、そのようなロケーションは限られているため、常に情報のアンテナを張り巡らせておくことが大切です。
3:自然災害への対策
日本は地震や台風、河川の氾濫など自然災害の影響を受けやすい国であるため、安定的な稼働に自然災害への対策という視点は欠かせません。
災害に強いロケーションとは、活断層が近場に存在せず、津波や高潮、集中豪雨などによる浸水の危険性を指摘されていない地域のことを指します。
実際にデータセンター投資を検討している投資家は、少なくとも以下の調査をしておきましょう。
・『活断層図(都市圏活断層図)』
(国土交通省国土地理院)
全国にある都市圏の活断層図を閲覧できます。
・『活断層の地域評価』
(文部科学省研究開発局地震・防災研究課の地震調査研究推進本部事務局)
全国の対象地域に分布する活断層で発生する地震を総合的に評価した結果を確認できます。
・『ハザードマップポータルサイト』
(国土交通省)
台風や豪雨などによる水害の危険性のある地域や洪水想定、地震による津波の想定などを確認できます。
災害の多い日本では、お客様の大切なデータを守るために地震や台風などの自然災害に強く、その被害を最小限に抑えられるようなロケーションでデータを管理することが重要です。
立地は後からの対策が難しい要素であるため、データセンター投資の際は、慎重にロケーション選定を行いましょう。
2022.06.06
水中発電機が日本で近く実用化へ
データセンターの消費する莫大な電力が、今後の投資マインドに大きく影響するとの指摘が聞こえてきます。
持続的で信頼性の高い再生可能エネルギー由来の電力供給をいかに実現するのか、その重要性は日に日に高まっていると言えます。
その解決策となる可能性を水中発電に感じました。
今後10年で実用化の段階に入った、水流発電システム“かいりゅう”は、潮力発電機とは違い、海流からのエネルギーを利用するように設計された実験機であり、海中のほうが流れはゆっくりですが、はるかに広い範囲で発生する可能性があります。
つまり、より多くの発電機を配置し、発電地域を拡張できるようになるということです。
また、水中発電は風力よりもはるかに効率が良く、太陽光ほど断続的ではありません。日本は太陽エネルギーに関して理想的な地域ではなく、かつ近海では各国海軍の活動が活発なため、潮力発電機の設置が難しくなっています。
これらの課題があるからこそ、再生可能エネルギーを活用した素晴らしい発電技術が日本で生まれたのでしょう。
デジタルインフラ・ラボの標榜する「ESG投資の優等生となるデータセンター」実現に向けて、心強いニュースとなりました。
引用:https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/5a7bd9898dee90868aa1e1e085beb50b.pdf
2022.12.24
持続可能なデータセンターに対する大手企業の取り組み
地球が気候変動の危機に晒される中、世界全体がカーボンニュートラル実現に向けての動きが加速しています。
最近になって、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成に関心抱く経営者も多くなっているのではないでしょうか。
そこで、今回はESGに関心がある方にむけて、電源、空調など多大なエネルギーを必要とするデータセンターを扱う企業のサステナブルな技術革新と取り組みをご紹介します。
・Microsoft
同社は、スウェーデンで最新のサステナブルデータセンターを開設したことを発表しました。
このデータセンターリージョンでは、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物ゼロの認証の達成、100%カーボンフリーエネルギーでの運用に取り組んでいます。
こちらのデータセンターで使用されている燃料は、再生可能な原材料を50%以上含み、標準的な化石燃料と比較して二酸化炭素の排出量をほぼ同等に削減することができる、世界初のノルディック・エコラベル付き燃料となっています。
これによりエネルギーや水などの資源を節約し、廃棄物の発生を抑えることができますので、まさにESG目標を体現している施設です。
また、データセンターでの加湿に必要な水を提供するための雨水貯留方法も開発されました。
この方法は雨水をデータセンターで回収し、データセンター内の設備に使用するという方法です。
他にもデータセンターのサーバーは年間を通じて100%外気のみで冷却されていて、ESG目標に貢献しています。
スウェーデンのデータセンターは、世界で最も持続可能な設計と運用を行っていると、スウェーデンマイクロソフト社のジェネラルマネージャーであるエレーヌ・バルネコウは述べています。
また、アメリカのアリゾナ州には「West US 3」と呼ばれるデータセンターリージョンを立ち上げました。
こちらは2030 年までにカーボンネガティブを実現するテーマの一環として、すべてのデータセンターで使用される電力に対してグリーン エネルギーの電力購入契約を締結しています。
この政策を実現するために、Microsoftは150メガワットの Sun Streams 2 太陽光発電所 (PV)を建設しました。
今後のMicrosoftの動向に目が離せません。
・NTT
NTTスマートコネクトは2022年4月、堂島近接エリアに開設する「曽根崎データセンター(仮称)」において、さまざまな省エネルギー設備の導入を予定しています。
一般的なデータセンターにおける消費電力の内訳として、冷却用設備関連がなんと約45%を占める結果が判明していますが、今回、曽根崎データセンターに導入した空調機は、ゼロサイドクリアランス設計と電源・制御盤、自動制御機器も収めたオールインワンパッケージで冷却能力の最大化を図っています。
また、建築用吹出しチャンバーを必要としない独自設計で、ファンと冷水コイルを逆転配置することにより、ファンルーム内の圧力を均等にすることを実現しています。
そのため、コイルを通過する気流を整流し、吹出気流の風向・風速分布の均一化を可能にしています。
消費電力を約50%削減する独自の高効率ECファンも導入し、省エネルギーに対して積極的に取り組む姿勢が見受けられます。
・京セラコミュニケーションシステム
北海道石狩市で、再生エネルギーを直接利用したDCの開業を目指しています。
太陽光や風力などの各発電所から電気をDCに直送する方法や冬に貯めた雪を夏にDCの冷房にも使う工夫が予定されています。
・ソニーグループ
ソニーグループはDCでの消費電力を抑えられるAIを搭載した画像センサーを開発しました。
撮影した画像をAIが処理し、必要な情報に絞ってDCへ送信します。撮影したままの画像データを送るよりも、ネットワークの負荷や消費電力を抑えられる画期的な仕組みです。
上記以外にも持続可能なデータセンターへの取り組みは、世界中で急速に進められています。
今後のデータセンターの動向にさらにご注目ください。
2023.01.31
2025年5月運用開始予定の「松江データセンターパーク」で、カーボンニュートラルに取り組む(IIJ)
インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月17日、2011年4月より島根県松江市で運用している自社データセンター「松江データセンターパーク(松江DCP)」内に、システムモジュール棟を新設すると発表しました。
2024年2月に着工し、2025年5月に運用開始予定です。
新たに建設するシステムモジュール棟は、建築面積約2000㎡、300ラック規模のキャパシティを有します。
需要が拡大しているIIJクラウドサービス用の設備収容スペースとして活用していくとともに、デジタル田園都市国家構想の目的の一つである「地方デジタル基盤の整備」を実現するデータセンターとして、地域のネットワークインフラ強靭化にも寄与していくことになります。
「システムモジュール棟」新設の背景
同事業は、総務省の令和3年度補正予算「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」の助成対象として採択され、実施しています。
松江DCPは、IIJが2011年4月に開設した、外気冷却機構を採用するモジュール型データセンターです。IIJのDC運用のノウハウを集積して開発したコンテナ型ITモジュール「IZmo(イズモ)」による、低コストで高いサーバー収容効率、容易なスケールアウトを実現。
2019年5月には、松江DCPで培ったエネルギー効率化技術や運用経験を生かした、システムモジュール型工法の「白井データセンターキャンパス(以下、白井DCC)」を、千葉県白井市に建設し、運用しています。
IIJでは、松江DCPと白井DCCは、IIJのクラウドやネットワークサービスの設備基盤や、顧客からIT機器を預かるコロケーションサービスの拠点として活用するとしていますが、自社クラウドサービスの需要は継続して増加しており、さらにBCP(事業継続)用途としてのコロケーションサービスの利用も広がっていると説明しています。
一方、政府が推進するデジタル田園都市国家構想のもと、データセンターの地方分散が推進され、地方の中小・中堅企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や観光DXなど、デジタル実装の取り組みが活性化し、地域DCへのニーズも高まっています。
こうした状況の中、現在約500ラックある松江DCPは2025年度中に満床となる見込みであることから、今回新たにコンテナ型モジュールより収容効率の高い「システムモジュール棟」を建設することになりました。
新たな設備の導入と実証、社会課題の解決を目指す
システムモジュール棟は、空調設備として、消費電力を少なくする「外気冷却空調方式」並びに効率的に空調搬送できる「壁吹き出し空調」を採用。
加えて、電気設備にも力を入れており、業界最高水準のPUE(データセンターの電力使用効率を示す指標)「1.2」を維持しています。
電気設備には三相4線式UPSを採用して電気損失を低減することで、業界最高水準のPUE「1.2」という実績を今後も継続し、サービス価値向上とともに社会的な責務を果たしていくことになります。
また、白井DCCではロボット技術を応用し、データセンターの運用自動化を推進。その先行実績を生かして松江DCPでもロボット技術によるデータセンターの設備巡回の導入と実証を進めます。
松江DCPでは、2022年2月から実質再生可能エネルギー由来の電力を導入し、カーボンニュートラルのモデルケースとなるデータセンターを目指しています。
今後は、オンサイトメガソーラー発電設備の併設や、オフサイト発電設備からの電力調達など、カーボンニュートラルデータセンターの実現に向けた取り組みを強化していくところです。
将来的には、データセンター内の発電/蓄電設備などを活用し、自治体、地域企業と連携して電力を地産地消するマイクログリッドを構築し、地域のレジリエンス強化、カーボンニュートラルなど社会課題の解決も期待されます。
日本のデータセンターの可能性を広げるIIJのシステムモジュール棟。2025年の運用開始に関心が高まっています。
2022.06.24
次世代デジタルインフラの
構築・発展のために
デジタルインフラ・ラボ株式会社は、デジタルインフラ分野のアセットを対象に、日本における投資の促進を目的として設立したアセットマネジメント会社です。
デジタル及びデジタルインフラ分野の発展と加速は、今や世界経済成長の大黒柱となっています。そんな中、日本におけるデジタル化は、先進主要欧米諸国やアジア圏諸国と比べ遅れをとっている状況(「世界デジタル競争力ランキング2020」で、日本は27位)です。21世紀に入って早20年余り、海外勢が鎬を削り、デジタル分野と経済が一体となって成長を加速させている一方で、日本のデジタル分野においては、政治、行政、経済、社会に至るまで従来型の手法から脱皮できず、大きな変革が進まなかったことが要因の一つではないかと考えています。 ところで、少し時代を遡った1990年代末期、日本は、バブル崩壊後の金融恐慌に陥りました。その際、巨額資金を持つ欧米の投資ファンド等が、日本の不良債権・不動産投資を加速させ、多大な利益を獲得しました。日本も、最悪のシナリオから脱却、徐々に経済が再生するとともに、その後は日本の金融改革も進みました。この中で、間接金融から直接金融への足がかりはできたものの、欧米諸国、中近東及びシンガポールのような巨大投資ファンド等の組成には、今も至っていない状況です。私は、私たち日本人の国民性が一つの要因なのではないかと考えています。リスクを取る感性が、農耕民族と大陸系民族とで異なると感じています。ただ、この状況は、巨額な設備投資を必要とする成長著しい企業の立場からすればどうでしょうか。間接金融での資金調達には限界があります。リスクを積極的に受け入れる資金を調達できなければ、更なる日本経済成長は見込めず、新たなビジネスを目論む優秀な人材・企業の多くの芽を摘んでしまうことになりかねません。
今日、私たちは、新型コロナウイルス禍後の経済再生、デジタル化の急速な推進、脱炭素化、国民の価値観の変化と多様化、SDGs、共生社会重視といった新しい潮流の中にいます。
私たちが取り組むものは、デジタル化推進の屋台骨となるデジタルインフラ分野の成長・加速です。現在、デジタル分野においては、、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)が不可欠ですが、これらを可能にするHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)を安心して設置するためのデジタルインフラの環境が整っていない状況です。高性能データセンター、エッジデータセンター及び通信網・基地局等デジタルインフラ全般を早期に整備する必要があります。また、日本のデータセンターの約8割が、レイテンシー(通信の遅延時間等)や交通アクセス等の理由で関東及び関西に集中しているため、BCPの観点からも問題となっています。さらに、現存するデータセンターは、築年数が20年以上経過したものが40%以上を占め、老朽化が進んでいます。加えて、低電力データセンター(2kVA/ラック以下)の割合が約60%以上であり、AI等の膨大なデータ処理(少なくとも6kVA/ラック以上必要とされています)ができない状況となっています。そして、最も重要な点は、デジタルインフラの投資には巨額の資金が必要ということです。データセンターを新規開発するために必要な資金は、延べ床面積当たり@300万円/坪以上と言われ、これは通常のオフィスビル等の建設に必要な資金の3倍程度です。例えば、1,000ラック規模のデータセンターの建設には概ね100億円以上の投資資金が必要となり、容易に投資判断ができるような規模ではありません。日本では、一部の資金力のある大手キャリア系や大手システムインテグレーター系の企業が限定的に投資を進めているのが一般的であり、巨額の投資資金がデータセンター開発促進の足かせとなっていると考えられます。これを解消するため、私たちは、アセットマネジメント業務を通じて不動産投資資金の流動化(オフバラ)を積極的に活用すべきと考えています。つまり、所有と経営の分離により、デジタルインフラ分野への投資を加速させていくことが可能となります。一方で、投資の推進に際しては、脱炭素化の潮流に配慮する必要もあります。デジタルインフラ分野の投資が、ESG投資の位置づけでなければならないということです。
私たちは、デジタルインフラ分野において必要とされ続ける企業として、アセットマネジメントの手法を活用して、日本におけるデジタルインフラへの投資促進を図り、次世代デジタルインフラの構築と経済発展に微力ながら貢献したいと考えております。
私たちの思いを、ステークホルダーの皆様にご理解・ご共感いただき、良好な関係性を構築していけることを心より期待しております。
2022年5月
デジタルインフラ・ラボ株式会社
代表取締役 小杉 雅芳
2022.09.05
その1:データセンター(DC)とカーボンニュートラル
今回はカーボンニュートラルなDCの実現の観点から考察してみたいと思います。
DCはサーバーやネットワーク機器類などを安全かつ安心して格納することを目的として作られる施設(不動産)です。サーバーは大量の電力消費が必要な機器です。よって、DCでは大量の電力が消費されます。加えて、サーバーは大量の熱を発生するため、サーバーを正常に稼働させるためにはDC内を一定温度に管理する必要があります。つまりDCはサーバーのみならず、空調機器も大量に電力を消費する、カーボンニュートラルの観点から、大変厄介な施設と言えます。
大雑把なデータですが、日本国内電力消費の約1.4%(2018年)をDCが消費していると言われており、2030年には2018年比6倍以上になるとの分析もあります。※
世界におけるデジタルインフラ分野の成長加速は不可欠で、その中でDCは重要な位置付けになる一方、CO2排出の観点で悪役にもなり兼ねません。
DCとカーボンニュートラルの両立は、はたして成しえることが可能でしょうか。
DCの電力消費をみる一つの指標としてPUE(Power Usage Effectiveness=DC全体の消費電力/IT機器の消費電力)があります。1.0に近ければ近いほど、IT機器以外の消費電力が少なく、効率的なDCということになります。
一昔前のDCのPUEは2.0前後であると言われていましたが、最近竣工しているDCのスペックを見ると、PUE=1.4程度のものが主流となっているようです。また、これから着手するDCにおいては、PUEが1.2を下回る設計値を謳っているものも目立ち始めました。
このようにPUE値が下がり、1.0に近づいている要因は、①空調機器等の性能の向上、②サーバールームの効率的冷却を実現するための設計レベルの向上です。ただ、PUE値を押し下げるにはもっと重要な点があります。それはDCが立地する自然的条件です。
サーバールームは一般的に室温を20℃〜27℃に保っておく必要があるため、空調機器類が最も電力を消費するのは真夏で、且つ昼間の外気温が高温になる時間帯です。DCの立地が寒冷地であれば、大都市と比べ空調効率も良く、更に日中夜の寒暖差が大きいところでは、夜は外気を活用した冷却も可能となります。つまり寒冷地等の地方の立地では、空調機器を極力利用せずにサーバールームの室温を管理することが可能となり、空調機器を使用しない分、PUE値改善に大きく貢献することとなります。
このように、DCを開発する事業者等はCO2削減、カーボンニュートラル社会に向けて鋭意努力していますが、DCは大量の電力消費が不可欠であることは変わりません。
次回のブログ(その2)では、カーボンニュートラルを目指したDCの再生可能エネルギー活用の取組みにつきご紹介したいと思います。
(文責)小杉 雅芳
- 総合資源エネルギー調査会(経済産業省:令和4年3月)
2022.09.05
その2:データセンター(DC)とカーボンニュートラル
カーボンニュートラルへ向けた再生可能エネルギー等の取組みの状況
現在、日本に限らず発電への依存が最も大きいのが化石燃料による発電です。石炭、石油、天然ガス等の化石燃料は、発電する代償として、大量のCO2を大気中に放出することが問題となり、地球温暖化を食い止める観点から世界中でCO2削減が叫ばれています。自動車、航空、運輸産業等においても同様で、化石燃料に代わるエネルギー源を模索し、開発・研究に力を入れている状況です。
また、元々エネルギー資源の乏しい日本においては、1980年代から原子力発電への舵取りに踏み切ったものの、福島第一原発事故に伴い、今後、原子力発電へ依存するか否かは不透明な状況となっています。
このような状況下、今一番注目されているのが再生可能エネルギー(以下、再エネという)の活用です。再エネには太陽光、風力、バイオマス、地熱、潮力、水中、その他と多岐に渡りますが、最も一般的に活用されているのが、太陽光発電です。太陽光発電はDCと一緒になって活用されるケースが日本でも最近は多くみられるようになりました。ただ、再エネの発電効率を考えると、現時点ではカーボンニュートラルと言えるには程遠く、結局のところは化石燃料由来の電力会社の電力に依存せざるを得ないのが現状です。
ところで、メガクラウドベンダーと言われるGAFAMの動向について触れてみると、マイクロソフトは、2030年までに「カーボンネガティブ」にする計画を発表しています。アマゾンは2025年までに再エネを100%使用することをコミットしており、Googleは同社の全てのDCでPUE値が1.1を下回っており、他社DCより消費電力が少なく、業界平均をはるかに下回っていると発表しています。
では、何故メガクラウドベンダーはこのようなカーボンニュートラルの施策が可能となるのでしょうか。ひとつは、北欧エリアの豊富な再生可能エネルギーを活用(開発や再エネの購入)していると共に、同エリアにDCを誘致して、寒冷地DCを実現していることにあります。また、アメリカ大陸においては、広大な土地を活用して、太陽光の大量発電とセットでDCを誘致し、再エネで電力を賄う規模で開発されている状況です。残念ながら日本において同様のDC開発は地理的観点から難易度は高く、実現性が乏しい先例となります。日本には日本に合ったカーボンニュートラルを実現するほかありません。そのためには、再エネの技術開発により一層注力して、例えば、水素、メタン、アンモニア等を活用して、再エネ分野で発電効率を上げることが重要と考えています。そして最も重要なのが、日本におけるDCの寒冷地エリアへの地方分散の実現です。
日本において寒冷地DCとして、高スペックの機能を発揮しているのが、さくらインターネット株式会社の石狩DCと株式会社データドックの新潟・長岡DCに代表されるものがあります。これらのDCは寒冷地特有の外気冷房方式を採用して、PUE値が1.2を下回る数値となっています。また、京セラコミュニケーションシステム株式会社は、再生可能エネルギー100%で運営するDCを石狩市で開業します。
このように、DCのカーボンニュートラル実現への近道は、寒冷地を中心としたDCの地方分散化が近道であり、国もDCの最適配置に向けて舵を切っている真っ只中にあります。
(その3)では、DCの最適配置に向けての地方分散と現状の矛盾について触れてまいります。
(文責)小杉 雅芳