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マイクロソフト、生成AIの事業データセンター拠点を日本国内に切り替えへ

今年7月に、マイクロソフトが新たな方針を発表しました。これまでマイクロソフトの生成AIの事業のデータセンターは主にアメリカと欧州に位置していましたが、日本の顧客に対するサービス品質の向上とデータ管理を強化するために、日本の企業の生成AI事業用途のデータセンターは、すべて日本国内に切り替えることを明らかにしたのです。

 

今回の方針の背景には、データセンターの拠点が海外にあることによって機密性や重要性の高い情報管理に対する懸念が、以前から指摘されていたことがあります。

マイクロソフトはこの懸念を解消するため、全てのデータのやりとりを日本国内で行うことにしました。

 

現在東日本に設置しているデータセンターを拡充し、生成AIの拠点に。これにより、機密性の高い情報の処理を国内だけで行えるようになります。また、生成AIの事業の拡大に合わせて、今後は西日本に置かれているデータセンターの拡充も検討するとしています。

 

マイクロソフトの動きは、NECも日本国内のデータセンターを利用した新サービスを開始するなど、業界全体にも影響を及ぼしています。

 

デジタル社会推進本部も認識

 

マイクロソフトの新たな方針は、自民党のデジタル社会推進本部でも認識されています。

 

AIの活用に関する作業チームの会合を開き、マイクロソフト側から新たな方針について説明を受けた平井元デジタル大臣は、「世界各国で研究開発がどんどん進んでおり、日本でも環境を与えるという意味では有力な選択肢が増えることになる」との見解を示しました。

 

また、作業チームの座長を務める平将明衆議院議員は、「データセンターが海外にあるとセキュリティの問題が出てくるので、国内に拠点が整備されることは懸念の一つを解消する重要な提案だ」と評価。

 

国内のデータセンター拡充によって、政府や各省庁による生成AIの活用における最大の懸念点が解消されることになります。今回の新しい方針の発表によって、今後の生成AIの発展にますます期待が高まっていくことになりそうです。

TOPICS & NEWS

2023.10.28

GPU市場ほぼ独占状態で話題のエヌビディアについて探る

今回は、今年5月末に時価総額が一時1兆ドルの大台に乗ったことで話題になった、アメリカの半導体メーカー・エヌビディアについて探ります。

 

エヌビディアの製造するGPU

 

エヌビディアが製造しているのはGPU(画像処理半導体)です。GPUは動画・画像・アニメーション表示などのディスプレー機能のために設計されたチップで、ゲーミングPCなどで映像をなめらかに表示するために用いられてきました。近年は、自動運転技術や暗号資産の採掘作業(マイニング)で高度な演算処理の担い手として脚光を浴びました。

 

今、このGPUの需要が拡大しています。その起爆剤となっているのが、「データセンター」とChatGPTに代表される「生成AI」なのです。

 

GPUと生成AIとデータセンター

 

これまでデータセンターにはCPU(Central Processing Unit)のみ搭載するケースが一般的でしたが、AIの普及によってCPUと併せて、GPUもデータセンターに搭載する流れが進みます。ただデータセンターの中でGPUが搭載されているものは全体の1〜2割程度でした。

 

それが、生成AIの普及によって事情が変わります。

 

画像生成や自然言語生成などの生成AIでは、学習によって作り上げたAIモデルを動かして結論を得る「推論」というプロセスが必要になります。ChatGPTに質問をした際、答えが返ってくるのは「推論」の結果です。推論プロセスでは、学習プロセスよりも多くの計算が必要になります。そのため、大量の計算に適したGPUも併せて搭載する必要があるのです。

 

今後、世界のほとんどのデータセンターで情報を生成する主要な作業が生成AIになることは明らかで、また10年間で、世界のほとんどのデータセンターにGPUが搭載されることになるだろうと言われています。

 

エヌビディアの直近四半期決算(5-7月期)では、深刻な供給不足で出荷量が需要に追いついていないにもかかわらず、データセンター部門の売上高がわずか3カ月で2倍以上に増加。アナリストらは同部門の売上高が来年度(25年1月期)には600億ドルを超え、昨年度(23年1月期)の4倍以上になると予想しています。

 

なぜエヌビディアはこれほど強力なリードを保っているのでしょうか。

 

GPU市場、エヌビディアがほぼ独占状態の背景

 

エヌビディアは非常に早い時期からAIを推進するための地位を築いていました。エヌビディアは2006年、開発業者がGPU向けアプリケーションを書くためのプログラミング言語である「CUDA」を発表。CUDAはその後のAI事業にとって重要な構成要素となったのです。

 

CUDAはやがてAI開発業者が利用する250のソフトウェアライブラリを擁するまでになり、この幅広さのおかげでエヌビディアは実質的にAI開発業者が大いに頼りにするプラットフォームとなったのです。

 

CUDAはライバルが到底乗り越えられない競争上の「掘」としてエヌビディアを守っています。バーンスタイン・リサーチ主催の7月の電話会議で、元エヌビディア副社長のマイケル・ダグラス氏は、エヌビディアが競合他社を引き離すための「矢筒の中の重要な矢」はソフトウェアだと指摘。エヌビディアのシステムの今後数年間にわたる性能向上の多くは「ハードウエア主導ではなくソフトウェア主導によるものだろう」と予想しました。

 

エヌビディアの独占状態の背景のカギは、ソフトウェアの開発にあったのです。

 

当面はエヌビディア1強が続く

 

当面はデータセンター向けのGPU市場はエヌビディアのほぼ独占状態が予測されます。

 

とはいえ競争は激しくなっていきそうです。インテルやAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)といったすでにGPUを扱っている半導体メーカーとの競争はもちろんのこと、グーグルやアマゾン、メタといった巨大IT企業も自社製のAI半導体の開発に乗り出しています。

 

更なる生成AIの進化とエヌビディアの動向とともに、GPUを扱う他の企業の動きにも注目していきたいと思います。

TOPICS & NEWS

2023.10.26

AI活用の拡大とデータセンター需要

デジタル技術の進展やスマートフォンの普及によりAIの需要が急速に拡大、そして企業などの情報サーバーを保管するデータセンターの需要も拡大しています。

 

そもそも、AIの需要が拡大することでデータセンターが必要になるのはなぜでしょうか。

 

AI活用の拡大とデータセンター

 

「DX」(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる社会のデジタル化が進んでいます。ビジネスではAIを活用する場面が広がり、AIが質問に自然な文章で答える「ChatGPT」も脚光を浴び、スマートフォンの買い物サイトや交流サイト(SNS)、ゲームアプリなど、すばやい情報処理を求められるサービスは増え続けています。

 

日々AIの利用規模が拡張し、要求が多様化する今、企業は安定かつ安全なデータ・システムの運用を必要としています。

 

データセンターは、IT機器、ネットワーク機器やサーバーを安全に保管しておく専門の施設。IT機器を自社で管理すべき際も、十分なスペース・セキュリティ対策がない場合があります。これら様々な問題を解決するために、データセンターを利用する企業が増えています。データセンターは、IT機器の運用や管理に優れており、いろいろな企業の要求を満たすことができるのです。

 

AIの大量導入でデータセンターへの投資も拡大

 

2022年11月以降、ChatGPTの大成功に象徴されるように、AIの大量導入はカリフォルニアのゴールドラッシュのような関心を呼びました。投資市場は、NVidia、Google、Microsoftのような広範な研究開発努力によって先行者利益を獲得した先駆的企業に報いるために、シリコンバレー投資の時流に再び乗ります。投資家たちは当然ながら、ハイリスク企業や赤字企業を避けながら、次の受益者グループを探しています。

 

NVidiaの2024年第1四半期決算説明会は、AIサプライチェーンにとって転換点になりました。Nvidiaのハードウェアに対する直近の驚異的な需要の伸びが強調され、アナリストは通年の売上高予想を約40%上方修正したのです。(出典:Refinitiv)

 

2023年5月24日に行われた投資家向け決算説明会で、予想を上回る売上高見通しを説明する際には、同社は56回以上も「データセンター」について言及。同社の高度なGPUが、高性能で安全かつ安定したデータセンター環境に全面的に依存していることが明らかとなったのです。

 

AI対応のデータセンターの問題点

 

AI対応のデータセンターには問題点もあります。機械学習とAI活用は、HPCサーバーやGPUサーバーに多くの電力が必要になります。これらのサーバーは多大な電力を消費するため、基本、1ラック内に複数収まりきらないのが現状です。その結果電力供給が追い付かないため高密度に高性能サーバーを設置できないという問題を抱える企業が増加しています。HPCサーバーやGPUサーバーの大量電力消費は抑えられないため、サーバーは大量の熱が溜まり、適切に冷却する必要があります。そのためAI対応のデータセンターには、節電技術や空調技術の向上が更に求められています。

 

まとめ

 

今回は、AI活用の拡大とデータセンター需要について説明してきました。

 

データセンターは、今後もデジタル経済を支える重要なインフラとして、消費者や企業に新しいAIツールを提供する上で重要な役割を果たすことになります。また企業の技術動向・ビジネスニーズに合わせたサービスの提供が求められていくでしょう。

 

データセンター事業者は問題点などについても慎重に見極めながら議論を進めて、DXの波に乗っていってほしいと思います。

TOPICS & NEWS

2023.10.18