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アイルランド政府のデータセンター開発モラトリアムに、Googleが反発

アイルランド政府、データセンター開発に制限

 

アイルランドの公益事業規制委員会(CRU)が、ダブリン大都市圏での新しいデータセンター開発に事実上のモラトリアムを課し、影響を制限する決定を下しました。

 

アイルランドの国営送電事業者EirGridは、それを受けて、ケースバイケースでグリッドへの接続のための新しいアプリケーションのみを検討すると述べました。伝えられるところによると、制限は2028年まで続く可能性があります。

 

アイルランド政府産業開発庁(IDA)のマーティン・シャナハン最高経営責任者(CEO)は最近、新しいデータセンターは「現時点では、ダブリンと東海岸で発生する可能性は低い」と述べています。

 

Googleはこのようなアイルランドの規制当局に対し、同国のデータセンター開発にモラトリアムを強制しないよう求めています。

 

同社は公益事業規制委員会(CRU)への提出書類で、検索およびクラウド会社は、データセンター開発のモラトリアムは「絶対に」回避する必要があると述べました。

 

アイリッシュ・タイムズ紙が情報公開請求により最初に報じたところによると、Googleはこのような禁止措置はアイルランドのデジタル経済としての野心について「誤ったシグナル」を送ることになり、同国のインフラへのさらなる投資を「不可能」にすると付け加えています。

 

提出書類の中でGoogle は、アイルランドのネットワークに既存の電力容量がある場所についてより透明性を求めるとともに、データセンターの電力使用量の伸びを予測するEirGridの予測について、より明確でオープンなものにする必要があるとしています。

 

高まるクラウドコンピューティングの需要、Googleの提案

 

2012年にアイルランドで最初のデータセンターを立ち上げた Googleは、最終的に必要とする以上の容量を予約したり、その容量に成長するのが遅すぎるデータセンター事業者に対する新しい料金体系を提案しました。

 

「最大予約容量に向かって需要が増加していない消費者は、毎年増加していることを実証している消費者よりも多く請求されるように、送電料金制度を設計することができる」と述べています。

 

EirGridと政治家は以前、データセンターの開発をアイルランド西部(ダブリンの制約のある地域から離れ、再生可能エネルギー源に近い場所)に移すことを提案しましたが、Google はこれが実現可能な解決策ではないと指摘しています。

 

「ダブリンでのクラウドコンピューティングの需要は高まっています。多くのクラウドサービスはユーザーの近くにあるデータセンターで提供する必要があり、ダブリンから遠く離れたデータセンターでは、顧客の必要に応じてこれらのサービスを提供することはできません。」

 

AWSの別の提出書類では、アイルランドは過去に供給問題に対処する機会を逸してきたと述べています。

 

「これまでの10年間、補強工事を行い、成長と投資に備えた送電網を整備し、より断続的な資源の統合に備えた送電網を整備する機会があった」と述べています。

 

社会民主党とPeople Before Profitの両党は、過去12ヶ月間、将来のデータセンタープロジェクトの全国的なモラトリアムを求めてきました。PBPの法案は、データセンター、液体天然ガスプラント、新しい化石燃料関連のインフラを絶対禁止とするものでした。

 

ダブリンでは先月、南ダブリン郡議会(SDCC)が新しい開発計画案の一環として、同郡での今後のデータセンター建設を阻止することを決議しています。

 

では、アイルランド政府のデータセンター開発モラトリアムには、どのような背景があるのでしょうか。

 

アイルランド政府、データセンター開発モラトリアムの背景

 

アイルランド政府による、排出量と再生可能エネルギーの目標の達成が背景にあります。

 

EirGridによると、データセンターのエネルギー使用量は、2030年までに9TWh増加すると予測されており、2030年のアイルランドの送電網の供給量の23%から31%の範囲で予測されています。これは、政府が自然エネルギーの割合を増やすことで、排出量を60〜80%削減したいと考えている時期にあたります。同時に政府は暖房や輸送を電気に移行することで脱炭素化を図りたいと考えており、送電網の需要をさらに高めています。

 

アイリッシュ・タイムズ紙によるとEirGrid社はさらに1.8GWのデータセンターをグリッドに接続することに合意しており、現在のピーク時の需要は約5GWで、さらに2GWのアプリケーションが準備されているとのことです。

 

2018年に発表された「アイルランドの企業戦略におけるデータセンターの役割に関する政府声明2018」 (Government Statement on the Role of Data Centres in Ireland’s Enterprise Strategy 2018)では、国の経済パフォーマンスにおいてデータセンターに積極的な役割を与えていましたが、今後は「セクターごとの排出量の上限や再生可能エネルギーの目標、継続的な供給の安全性に関する懸念、現在必要とされている需要の柔軟性対策との整合性を確保するため」に見直されることになりました。「また、さらなる規制の強化も検討されます」と報じられています。

 

功を奏するのか裏目に出るのか

 

世界的にも需要が高まるデータセンター開発にモラトリアムを課すアイルランド政府。Googleからの反発を受けながらもモラトリアムを継続する様子。この決断が功を奏するのか、裏目に出るのか。動向を見守っていきます。

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2023.07.05

データセンターの設備点検業務ロボット2023年4月から本格展開(NTTデータ)

株式会社NTTデータは、同社が運営するデータセンター「NTT品川TWINS DATA棟(以下、品川データセンター)」において、ロボットを使った設備点検業務の遠隔化/自動化の取り組みを行い、従来人手で行われていた設備点検業務を約50%削減できることを確認したことを発表しました。

 

NTTデータは2023年4月以降、全国のデータセンター拠点へのロボット導入を進めます。

 

ロボット導入の背景

 

NTTデータでは、データセンターをはじめとしたビル管理業界では人手不足が深刻化しており、中でも設備管理業務は熟練者の不足が問題となっており、省人化や効率的な業務実施が求められていると説明。

 

設備管理業務の中では、点検業務が省人化による効果やデジタル技術活用による遠隔化/自動化の実現性が高いと考え、同社の品川データセンターにおいて、実用化に向けた検証を進めてきました。

 

ロボット導入の概要と変化するチェック業務

 

取り組みでは、あらかじめ設定した点検ルートをロボットが自動巡回し、メーターやランプ、設備外観の撮影、センサーによる臭気など環境データの取得を行うことで、人が行っていたメーター測定やランプ確認、外観異常・異臭チェックの業務を代替します。

 

この方法の場合、1つのカメラやセンサーで複数箇所の点検を行え、稼働中の現用設備に手を入れる必要もないため、点検対象ごとのIoTカメラ・センサーの設置やスマートメーター化といった他の方法と比較して、安価かつ簡易に遠隔化/自動化を実現できます。

 

今回用いたロボットは、業務DXロボットのメーカーであるugo株式会社と共同で、次世代型アバターロボット「ugo Pro」を設備点検業務用に改良したものです。

 

メーター値を詳細に撮影するため、標準モデルより高画質な4Kカメラを搭載するとともに、においセンサーやマイク、サーモカメラなど、点検項目に応じて複数のデバイスをugo本体に搭載し、用途を拡大できます。

 

PCのみで操作が可能で、走行ルートもノーコードで設定できるため、現場担当者も気軽にロボットを利用できます。自動走行と遠隔操縦を切り替えられ、自動で点検業務を行うだけでなく、遠隔からの作業支援など複数の用途で利用も可能です。

 

これらの特徴により、さまざまな点検項目に対応できるだけでなく、遠隔からの作業支援や工事の立ち合いなど用途を拡大することも可能です。

 

ロボットやセンサーを使って点検業務を遠隔化/自動化することで、業務時間が削減できるだけでなく、人の感覚に頼っていた異常判断のしきい値を数値化し、熟練者に頼らない異常発見を実現できます。

 

また、作業支援や工事の立ち合いなども含め、現地でしかできなかった業務を遠隔で実施可能にすることで、柔軟な働き方に対応し、新たな担い手の確保等の効果が期待できます。

 

今後について

 

NTTデータでは今後、メーター読み取りシステムや異常検知AIとの連携を進めることで、現在担当者による実施が必要となる記録・報告作業まで自動化範囲を拡大し、点検業務にかかる時間を最大80%削減することを目指しています。

 

また、ロボットやセンサーで取得したデータを活用した高度な異常検知や設備の予知保全といった、設備管理業務の高度化にも取り組んでいくとのことです。

 

2023年4月から、全国15のデータセンターを対象として、取り組みを順次展開していく予定。

 

さらに、これらにより得られた知見をもとに、2023年度中に設備点検業務の遠隔化/自動化サービスとして商用提供することを目指します。

 

商用提供にあたっては、ugoがNTTデータとの共同検証で得られた知見を生かして開発した新型ロボット「ugo mini」を活用した設備管理業務の遠隔化/自動化ソリューションの開発を行い、導入のコンサルティングからシステム構築・運用までワンストップで、顧客の課題解決をサポートしていきます。

 

深刻化する人手不足の解消に向けて、データセンターの設備点検業務ロボットの本格展開の日が待たれます。

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2023.03.26

北海道石狩市で計画する「ゼロエミッション・データセンター」の着工を発表(KCCS)

京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)は24日、北海道石狩市で計画する「ゼロエミッション・データセンター」について、2022年12月にデータセンター建設に着工し、2024年秋に開業を予定すると発表しました。

 

KCCSでは2019年に、北海道石狩市において、再生可能エネルギー100%で運営するゼロエミッション・データセンターの計画を発表。

 

その後、当初予定していたベースロード電源の計画変更により、電源構成およびデータセンター設計を見直していましたが、今回、建設着手と開業予定を発表しました。

 

建設するデータセンターは、北海道石狩市の石狩湾新港地域に位置し、敷地面積は約1万5000㎡、延床面積は約5300㎡(開設時)、ラック数は400ラック規模(開設時)。

 

2050年カーボンニュートラル実現に向けて

 

国内では2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の達成に向けた再エネの地産地消や、政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」におけるデータセンターの地方分散が重要なテーマとなっており、非化石証書等の環境価値の購入により環境負荷をプラスマイナスゼロにする「実質再エネ」の導入が進んでいます。

 

そのために、再エネ導入量のさらなる拡大に向けて、「再エネの直接利用」の拡大も必要とされます。

 

しかし、データセンター等の大規模な需要施設においては安定した再エネ電力と経済性の確保が課題となっており、「再エネの直接利用」の実現は容易ではありません。

 

石狩市は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、環境省の公募事業「脱炭素先行地域(第1回)」に選定されています。

 

また、ゼロ・カーボンに向けた施策「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」を策定し、石狩湾新港地域にデータセンター群および周辺施設へ再エネを供給することで、脱炭素型の産業集積を目指しています。

 

ゼロエミッション・データセンターでは、地域の豊富な再エネ電源を活用するとともに、KCCSの所有の太陽光発電所をデータセンターの近隣に新設し、それらの再エネ電源を直接利用することになります。

 

また、複数の再エネを「信頼性」「環境性」「経済性」を同時に確保しながらデータセンターを運営するために、蓄電池とAI技術を活用した電力需給制御の仕組みを独自に構築します。

 

KCCSでは、石狩市における「再生可能エネルギー100%で運営するデータセンター事業」を通じて、再エネの地産地消の可能性を実証するとともに、国内でのデータ分散保管や、データセンター技術者・エネルギー関連技術者などの雇用創出による地域活性化への貢献を目指すとしています。

 

2050年カーボンニュートラル実現に向けて「ゼロエミッション・データセンター」の開業に、期待が高まっています。

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2023.03.11

2030年までのウォーター・ポジティブを表明(AWS)

ウォーター・ポジティブとは

ウォーター・ポジティブとは、消費する水よりも多くの水を供給することを指します。世界中で淡水不足が課題となっている中、企業などが水を確保するために様々な取り組みを行っています。

 

方法は主に2通りで、消費を減らすか供給を増やすかのどちらかです。

 

水の消費を減らすためには、節水や再生利用、水の供給を増やすには、水不足や水の汚染など、水ストレスが高い地域や事業への投資などの方法があります。

 

データセンターにおける水使用量の削減に取り組むAWS

 

Amazon Web Services(AWS)は、自らの事業をウォーター・ポジティブにすることを表明した新たなハイパースケーラーとなりました。

 

ラスベガスで開催されたイベント「AWS re:Invent」で、同社は2030年までにウォーター・ポジティブを実現し、直接業務で使用する以上の水を地域社会に還元するという方針を示しています。

 

AWSのCEOであるAdam Selipsky氏は次のように述べています。

 

「水不足は世界中で大きな問題となっており、本日のウォーター・ポジティブの発表により、私たちはこの急速に広がる問題の解決に向け、自らの役割を果たすことを約束します。

 

すべての人が水を使えるようにするためには、この貴重な資源を節約し、再利用するための新たな方法を開発する必要があります。私たちは、これまでの歩みを誇りに思う一方で、もっとできることがあるとも思っています。

 

私たちは、クラウド事業におけるウォーター・スチュワードシップをリードし、私たちが事業を展開するコミュニティで使用した以上の水を還元することを約束します。これが環境とお客様にとって正しい行動であることを私たちは確信しています。」

 

この目標を達成するための同社の取り組みとしては、水の使用量をリアルタイムで分析し、IoT技術を用いて漏水を特定して修正する、冷却にリサイクル水や雨水を利用する水を複数回再利用できるオンサイト水処理システムを含む、さらに可能な限り施設での水なし冷却や様々な水の補充活動に資金提供するなど、還元だけでなく補充活動も含まれます。

 

2021年、AWSは世界の水使用効率(WUE)指標である1kWhあたり0.25Lの水を達成したと述べています。アイルランドやスウェーデンでは、AWSは1年のうち95%、データセンターの冷却に水を使用していないとのことです。

 

なお、米国エネルギー省のレポートによると、平均的な蒸発冷却式データセンターのWUEは、1kWhあたり1.8Lであるとされています。

 

英国では、AWSはThe Rivers Trust社およびAction for the River Kennet社と共同で、テムズ川の支流に2つの湿地帯を作ることに取り組んでいます。

「イングランドの河川は国の宝であり、AWSと提携し、この地のメンバートラストと協力してテムズ川とその支流を保護できることを嬉しく思います」と、The Rivers TrustのCEOであるMark Lloyd氏は述べています。

 

「2030年までにウォーター・ポジティブになるというAWSのコミットメントは、気候変動の影響を受けた河川や水資源の回復を支援するために必要な行動を後押しするものです。

 

私たちは、AWSとの関係を拡大し、このパートナーシップを利用して、他の企業が河川の回復力を向上させる水管理活動を共同で支援できる同様の道を示すことを楽しみにしています。」

 

データセンターは冷却のために大量の水を使用しますが、業界が実際に使用する水の量は明確ではありません。

 

研究者らは、米国の平均で、データセンターのエネルギー消費1MWhは7.1㎥の水を必要とすると推定していますが、これは地域や施設によって大きく異なる可能性があります。

 

GoogleMicrosoftMetaの取り組み

 

Google、Meta、Microsoftは、2030年までのウォーター・ポジティブを公約していますが、彼らの施設の多くは現在、1日あたり数百万ガロンもの水を使用しています。

 

北米、ヨーロッパ、南米に40を超えるキャリアニュートラルデータセンターを所有および運営しており、コロケーションおよびピアリングサービスを提供しているCyrusOneは、自社のいくつかの施設がウォーター・ポジティブであると主張しています。

 

世界中の投資家による責任投資戦略の開発と実践をサポートしてきたESG調査・レーティング・データ提供のリーディングカンパニーMorningstar Sustainalyticsは以前、マイクロソフトが節水への取り組みで市場をリードしている、という報告書を公開しました。

 

ヨーロッパのデータセンター事業者らは今年、欧州委員会に対し、2040年までに水の使用量をコンピュータの電力1kWhあたり最大400mlに削減することを表明しました。

 

地球温暖化や人口増加の影響により、世界中で水不足が問題視されはじめています。大手企業のウォーター・ポジティブに向けた取り組みに今後も目が離せません。

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2023.03.01

クラウド業界大手2社が、データセンターの「カーボンフリー」に取り組む

エンタープライズ市場で常にビジネスを争っていると考えられている、クラウドに特化した世界最大の企業Googleとマイクロソフト。この2つの企業に共通する重要な危機意識が1つだけあります。

 

それは、世界中で拡大し続けるデータセンターが環境に与えている影響を、大幅に変える必要があるということです。

 

Googleとマイクロソフトの両社は、短期間で完全に「カーボンフリー」にすることを究極の目的として、ヨーロッパでの事業用に新しい持続可能なエネルギーを積極的に求めています。

 

カーボンフリーとは、温室効果ガスを「排出しない」ことを指しますが、事業においてカーボンフリーを実現するには、再生可能エネルギーを利用するという方法があります。

 

再生可能な資源からクリーンなエネルギーを得るための新たな協定によって、より環境に配慮したクラウドコンピューティング産業への道が開かれたのです。

 

「カーボンフリー」の達成を目指して

 

最近、Googleはフランスの電力会社Engieと新たに電力購入契約(PPA)を結び、スコットランドの洋上風力発電所から100MWの再生可能エネルギーを購入することを発表しました。

 

この新しいエネルギーを使って英国でのMountain View社の活動を支援することで、少なくとも欧州ではカーボンフリーの組織に近づくことになります。

 

Engieの最新のPPAによって、Google は2025年までに90%のカーボンフリーを達成し、2030年までに英国のオフィスとクラウド地域で再生可能エネルギーのみを利用することを想定。

 

Google EMEA社長のMatt Brittin氏によると、英国や欧州の消費者はエネルギー源や気候変動への関心を高めています。

 

同氏によると、Googleも同様にこれらの問題を懸念しており、自社だけでなく他社の排出量も減らすことで、エネルギー危機を解決するために技術が重要になるとのこと。

 

Google は以前、テキサス州のデータセンター用に900MWの太陽光発電を調達するため、ソフトバンク/SB エナジーと契約を交わしました。

 

また、マイクロソフトも同様に、自社のクラウドデータセンターが環境に与える影響を意識しており、ヨーロッパをはじめ世界各地の状況を改善することに力を注いでいます。

 

最近、アイルランドのデータセンターに900MWの再生可能エネルギーを供給する新たなPPAを発表し、欧州の容量で利用できるグリーンエネルギーの総量を10 GW以上に引き上げると発表しました。

 

マイクロソフトは、アイルランドにおける新たなエネルギー供給元に関する詳細を明らかにしていませんが、他の情報源によると、Statkraft(ノルウェー)とEnergia Groupが新たな契約の当事者となっているとのことです(アイルランド)。

 

再生可能エネルギーは風力発電所と太陽光発電所の組み合わせで発電され、マイクロソフトは2025年までにアイルランドにあるすべてのデータセンターをカーボンフリーにする意向です。

 

すでに、カリフォルニア州にあるデータセンターを再生可能エネルギーで運営するため、AES Corporationと20年間の契約に合意。

 

大手2社のカーボンフリーの取り組みが、世界のデーターセンターにも影響を及ぼしています。

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2023.02.14

2025年5月運用開始予定の「松江データセンターパーク」で、カーボンニュートラルに取り組む(IIJ)

インターネットイニシアティブ(IIJ)は11月17日、2011年4月より島根県松江市で運用している自社データセンター「松江データセンターパーク(松江DCP)」内に、システムモジュール棟を新設すると発表しました。

 

2024年2月に着工し、2025年5月に運用開始予定です。

 

新たに建設するシステムモジュール棟は、建築面積約2000㎡、300ラック規模のキャパシティを有します。

 

需要が拡大しているIIJクラウドサービス用の設備収容スペースとして活用していくとともに、デジタル田園都市国家構想の目的の一つである「地方デジタル基盤の整備」を実現するデータセンターとして、地域のネットワークインフラ強靭化にも寄与していくことになります。

 

「システムモジュール棟」新設の背景

 

同事業は、総務省の令和3年度補正予算「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」の助成対象として採択され、実施しています。

 

松江DCPは、IIJが2011年4月に開設した、外気冷却機構を採用するモジュール型データセンターです。IIJのDC運用のノウハウを集積して開発したコンテナ型ITモジュール「IZmo(イズモ)」による、低コストで高いサーバー収容効率、容易なスケールアウトを実現。

 

2019年5月には、松江DCPで培ったエネルギー効率化技術や運用経験を生かした、システムモジュール型工法の「白井データセンターキャンパス(以下、白井DCC)」を、千葉県白井市に建設し、運用しています。

 

IIJでは、松江DCPと白井DCCは、IIJのクラウドやネットワークサービスの設備基盤や、顧客からIT機器を預かるコロケーションサービスの拠点として活用するとしていますが、自社クラウドサービスの需要は継続して増加しており、さらにBCP(事業継続)用途としてのコロケーションサービスの利用も広がっていると説明しています。

 

一方、政府が推進するデジタル田園都市国家構想のもと、データセンターの地方分散が推進され、地方の中小・中堅企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)や観光DXなど、デジタル実装の取り組みが活性化し、地域DCへのニーズも高まっています。

 

こうした状況の中、現在約500ラックある松江DCPは2025年度中に満床となる見込みであることから、今回新たにコンテナ型モジュールより収容効率の高い「システムモジュール棟」を建設することになりました。

 

新たな設備の導入と実証、社会課題の解決を目指す

 

システムモジュール棟は、空調設備として、消費電力を少なくする「外気冷却空調方式」並びに効率的に空調搬送できる「壁吹き出し空調」を採用。

 

加えて、電気設備にも力を入れており、業界最高水準のPUE(データセンターの電力使用効率を示す指標)「1.2」を維持しています。

 

電気設備には三相4線式UPSを採用して電気損失を低減することで、業界最高水準のPUE「1.2」という実績を今後も継続し、サービス価値向上とともに社会的な責務を果たしていくことになります。

 

また、白井DCCではロボット技術を応用し、データセンターの運用自動化を推進。その先行実績を生かして松江DCPでもロボット技術によるデータセンターの設備巡回の導入と実証を進めます。

 

松江DCPでは、2022年2月から実質再生可能エネルギー由来の電力を導入し、カーボンニュートラルのモデルケースとなるデータセンターを目指しています。

 

今後は、オンサイトメガソーラー発電設備の併設や、オフサイト発電設備からの電力調達など、カーボンニュートラルデータセンターの実現に向けた取り組みを強化していくところです。

 

将来的には、データセンター内の発電/蓄電設備などを活用し、自治体、地域企業と連携して電力を地産地消するマイクログリッドを構築し、地域のレジリエンス強化、カーボンニュートラルなど社会課題の解決も期待されます。

 

日本のデータセンターの可能性を広げるIIJのシステムモジュール棟。2025年の運用開始に関心が高まっています。

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2023.01.31

持続可能なデータセンターに対する大手企業の取り組み

地球が気候変動の危機に晒される中、世界全体がカーボンニュートラル実現に向けての動きが加速しています。

最近になって、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成に関心抱く経営者も多くなっているのではないでしょうか。

そこで、今回はESGに関心がある方にむけて、電源、空調など多大なエネルギーを必要とするデータセンターを扱う企業のサステナブルな技術革新と取り組みをご紹介します。

 

・Microsoft

 

同社は、スウェーデンで最新のサステナブルデータセンターを開設したことを発表しました。

このデータセンターリージョンでは、二酸化炭素排出量の削減、廃棄物ゼロの認証の達成、100%カーボンフリーエネルギーでの運用に取り組んでいます。

こちらのデータセンターで使用されている燃料は、再生可能な原材料を50%以上含み、標準的な化石燃料と比較して二酸化炭素の排出量をほぼ同等に削減することができる、世界初のノルディック・エコラベル付き燃料となっています。

これによりエネルギーや水などの資源を節約し、廃棄物の発生を抑えることができますので、まさにESG目標を体現している施設です。

 

また、データセンターでの加湿に必要な水を提供するための雨水貯留方法も開発されました。

この方法は雨水をデータセンターで回収し、データセンター内の設備に使用するという方法です。

他にもデータセンターのサーバーは年間を通じて100%外気のみで冷却されていて、ESG目標に貢献しています。

 

スウェーデンのデータセンターは、世界で最も持続可能な設計と運用を行っていると、スウェーデンマイクロソフト社のジェネラルマネージャーであるエレーヌ・バルネコウは述べています。

また、アメリカのアリゾナ州には「West US 3」と呼ばれるデータセンターリージョンを立ち上げました。

 

こちらは2030 年までにカーボンネガティブを実現するテーマの一環として、すべてのデータセンターで使用される電力に対してグリーン エネルギーの電力購入契約を締結しています。

この政策を実現するために、Microsoftは150メガワットの Sun Streams 2 太陽光発電所 (PV)を建設しました。

今後のMicrosoftの動向に目が離せません。

 

・NTT

 

NTTスマートコネクトは2022年4月、堂島近接エリアに開設する「曽根崎データセンター(仮称)」において、さまざまな省エネルギー設備の導入を予定しています。

一般的なデータセンターにおける消費電力の内訳として、冷却用設備関連がなんと約45%を占める結果が判明していますが、今回、曽根崎データセンターに導入した空調機は、ゼロサイドクリアランス設計と電源・制御盤、自動制御機器も収めたオールインワンパッケージで冷却能力の最大化を図っています。

 

また、建築用吹出しチャンバーを必要としない独自設計で、ファンと冷水コイルを逆転配置することにより、ファンルーム内の圧力を均等にすることを実現しています。

そのため、コイルを通過する気流を整流し、吹出気流の風向・風速分布の均一化を可能にしています。

 

消費電力を約50%削減する独自の高効率ECファンも導入し、省エネルギーに対して積極的に取り組む姿勢が見受けられます。

 

・京セラコミュニケーションシステム

 

北海道石狩市で、再生エネルギーを直接利用したDCの開業を目指しています。

太陽光や風力などの各発電所から電気をDCに直送する方法や冬に貯めた雪を夏にDCの冷房にも使う工夫が予定されています。

 

・ソニーグループ

 

ソニーグループはDCでの消費電力を抑えられるAIを搭載した画像センサーを開発しました。

 

撮影した画像をAIが処理し、必要な情報に絞ってDCへ送信します。撮影したままの画像データを送るよりも、ネットワークの負荷や消費電力を抑えられる画期的な仕組みです。

 

上記以外にも持続可能なデータセンターへの取り組みは、世界中で急速に進められています。

今後のデータセンターの動向にさらにご注目ください。

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2022.12.24

水中発電機が日本で近く実用化へ

データセンターの消費する莫大な電力が、今後の投資マインドに大きく影響するとの指摘が聞こえてきます。
持続的で信頼性の高い再生可能エネルギー由来の電力供給をいかに実現するのか、その重要性は日に日に高まっていると言えます。
 
その解決策となる可能性を水中発電に感じました。
今後10年で実用化の段階に入った、水流発電システム“かいりゅう”は、潮力発電機とは違い、海流からのエネルギーを利用するように設計された実験機であり、海中のほうが流れはゆっくりですが、はるかに広い範囲で発生する可能性があります。
つまり、より多くの発電機を配置し、発電地域を拡張できるようになるということです。
また、水中発電は風力よりもはるかに効率が良く、太陽光ほど断続的ではありません。日本は太陽エネルギーに関して理想的な地域ではなく、かつ近海では各国海軍の活動が活発なため、潮力発電機の設置が難しくなっています。
これらの課題があるからこそ、再生可能エネルギーを活用した素晴らしい発電技術が日本で生まれたのでしょう。
デジタルインフラ・ラボの標榜する「ESG投資の優等生となるデータセンター」実現に向けて、心強いニュースとなりました。
 
 

引用:https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/5a7bd9898dee90868aa1e1e085beb50b.pdf
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2022.06.06