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データセンターの設備点検業務ロボット2023年4月から本格展開(NTTデータ)

株式会社NTTデータは、同社が運営するデータセンター「NTT品川TWINS DATA棟(以下、品川データセンター)」において、ロボットを使った設備点検業務の遠隔化/自動化の取り組みを行い、従来人手で行われていた設備点検業務を約50%削減できることを確認したことを発表しました。

 

NTTデータは2023年4月以降、全国のデータセンター拠点へのロボット導入を進めます。

 

ロボット導入の背景

 

NTTデータでは、データセンターをはじめとしたビル管理業界では人手不足が深刻化しており、中でも設備管理業務は熟練者の不足が問題となっており、省人化や効率的な業務実施が求められていると説明。

 

設備管理業務の中では、点検業務が省人化による効果やデジタル技術活用による遠隔化/自動化の実現性が高いと考え、同社の品川データセンターにおいて、実用化に向けた検証を進めてきました。

 

ロボット導入の概要と変化するチェック業務

 

取り組みでは、あらかじめ設定した点検ルートをロボットが自動巡回し、メーターやランプ、設備外観の撮影、センサーによる臭気など環境データの取得を行うことで、人が行っていたメーター測定やランプ確認、外観異常・異臭チェックの業務を代替します。

 

この方法の場合、1つのカメラやセンサーで複数箇所の点検を行え、稼働中の現用設備に手を入れる必要もないため、点検対象ごとのIoTカメラ・センサーの設置やスマートメーター化といった他の方法と比較して、安価かつ簡易に遠隔化/自動化を実現できます。

 

今回用いたロボットは、業務DXロボットのメーカーであるugo株式会社と共同で、次世代型アバターロボット「ugo Pro」を設備点検業務用に改良したものです。

 

メーター値を詳細に撮影するため、標準モデルより高画質な4Kカメラを搭載するとともに、においセンサーやマイク、サーモカメラなど、点検項目に応じて複数のデバイスをugo本体に搭載し、用途を拡大できます。

 

PCのみで操作が可能で、走行ルートもノーコードで設定できるため、現場担当者も気軽にロボットを利用できます。自動走行と遠隔操縦を切り替えられ、自動で点検業務を行うだけでなく、遠隔からの作業支援など複数の用途で利用も可能です。

 

これらの特徴により、さまざまな点検項目に対応できるだけでなく、遠隔からの作業支援や工事の立ち合いなど用途を拡大することも可能です。

 

ロボットやセンサーを使って点検業務を遠隔化/自動化することで、業務時間が削減できるだけでなく、人の感覚に頼っていた異常判断のしきい値を数値化し、熟練者に頼らない異常発見を実現できます。

 

また、作業支援や工事の立ち合いなども含め、現地でしかできなかった業務を遠隔で実施可能にすることで、柔軟な働き方に対応し、新たな担い手の確保等の効果が期待できます。

 

今後について

 

NTTデータでは今後、メーター読み取りシステムや異常検知AIとの連携を進めることで、現在担当者による実施が必要となる記録・報告作業まで自動化範囲を拡大し、点検業務にかかる時間を最大80%削減することを目指しています。

 

また、ロボットやセンサーで取得したデータを活用した高度な異常検知や設備の予知保全といった、設備管理業務の高度化にも取り組んでいくとのことです。

 

2023年4月から、全国15のデータセンターを対象として、取り組みを順次展開していく予定。

 

さらに、これらにより得られた知見をもとに、2023年度中に設備点検業務の遠隔化/自動化サービスとして商用提供することを目指します。

 

商用提供にあたっては、ugoがNTTデータとの共同検証で得られた知見を生かして開発した新型ロボット「ugo mini」を活用した設備管理業務の遠隔化/自動化ソリューションの開発を行い、導入のコンサルティングからシステム構築・運用までワンストップで、顧客の課題解決をサポートしていきます。

 

深刻化する人手不足の解消に向けて、データセンターの設備点検業務ロボットの本格展開の日が待たれます。

ESG + DC

2023.03.26

北海道石狩市で計画する「ゼロエミッション・データセンター」の着工を発表(KCCS)

京セラコミュニケーションシステム株式会社(以下、KCCS)は24日、北海道石狩市で計画する「ゼロエミッション・データセンター」について、2022年12月にデータセンター建設に着工し、2024年秋に開業を予定すると発表しました。

 

KCCSでは2019年に、北海道石狩市において、再生可能エネルギー100%で運営するゼロエミッション・データセンターの計画を発表。

 

その後、当初予定していたベースロード電源の計画変更により、電源構成およびデータセンター設計を見直していましたが、今回、建設着手と開業予定を発表しました。

 

建設するデータセンターは、北海道石狩市の石狩湾新港地域に位置し、敷地面積は約1万5000㎡、延床面積は約5300㎡(開設時)、ラック数は400ラック規模(開設時)。

 

2050年カーボンニュートラル実現に向けて

 

国内では2050年カーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量実質ゼロ)の達成に向けた再エネの地産地消や、政府が推進する「デジタル田園都市国家構想」におけるデータセンターの地方分散が重要なテーマとなっており、非化石証書等の環境価値の購入により環境負荷をプラスマイナスゼロにする「実質再エネ」の導入が進んでいます。

 

そのために、再エネ導入量のさらなる拡大に向けて、「再エネの直接利用」の拡大も必要とされます。

 

しかし、データセンター等の大規模な需要施設においては安定した再エネ電力と経済性の確保が課題となっており、「再エネの直接利用」の実現は容易ではありません。

 

石狩市は、2050年カーボンニュートラル実現に向けて、環境省の公募事業「脱炭素先行地域(第1回)」に選定されています。

 

また、ゼロ・カーボンに向けた施策「再エネの地産地活・脱炭素で地域をリデザイン」を策定し、石狩湾新港地域にデータセンター群および周辺施設へ再エネを供給することで、脱炭素型の産業集積を目指しています。

 

ゼロエミッション・データセンターでは、地域の豊富な再エネ電源を活用するとともに、KCCSの所有の太陽光発電所をデータセンターの近隣に新設し、それらの再エネ電源を直接利用することになります。

 

また、複数の再エネを「信頼性」「環境性」「経済性」を同時に確保しながらデータセンターを運営するために、蓄電池とAI技術を活用した電力需給制御の仕組みを独自に構築します。

 

KCCSでは、石狩市における「再生可能エネルギー100%で運営するデータセンター事業」を通じて、再エネの地産地消の可能性を実証するとともに、国内でのデータ分散保管や、データセンター技術者・エネルギー関連技術者などの雇用創出による地域活性化への貢献を目指すとしています。

 

2050年カーボンニュートラル実現に向けて「ゼロエミッション・データセンター」の開業に、期待が高まっています。

ESG + DC

2023.03.11

2030年までのウォーター・ポジティブを表明(AWS)

ウォーター・ポジティブとは

ウォーター・ポジティブとは、消費する水よりも多くの水を供給することを指します。世界中で淡水不足が課題となっている中、企業などが水を確保するために様々な取り組みを行っています。

 

方法は主に2通りで、消費を減らすか供給を増やすかのどちらかです。

 

水の消費を減らすためには、節水や再生利用、水の供給を増やすには、水不足や水の汚染など、水ストレスが高い地域や事業への投資などの方法があります。

 

データセンターにおける水使用量の削減に取り組むAWS

 

Amazon Web Services(AWS)は、自らの事業をウォーター・ポジティブにすることを表明した新たなハイパースケーラーとなりました。

 

ラスベガスで開催されたイベント「AWS re:Invent」で、同社は2030年までにウォーター・ポジティブを実現し、直接業務で使用する以上の水を地域社会に還元するという方針を示しています。

 

AWSのCEOであるAdam Selipsky氏は次のように述べています。

 

「水不足は世界中で大きな問題となっており、本日のウォーター・ポジティブの発表により、私たちはこの急速に広がる問題の解決に向け、自らの役割を果たすことを約束します。

 

すべての人が水を使えるようにするためには、この貴重な資源を節約し、再利用するための新たな方法を開発する必要があります。私たちは、これまでの歩みを誇りに思う一方で、もっとできることがあるとも思っています。

 

私たちは、クラウド事業におけるウォーター・スチュワードシップをリードし、私たちが事業を展開するコミュニティで使用した以上の水を還元することを約束します。これが環境とお客様にとって正しい行動であることを私たちは確信しています。」

 

この目標を達成するための同社の取り組みとしては、水の使用量をリアルタイムで分析し、IoT技術を用いて漏水を特定して修正する、冷却にリサイクル水や雨水を利用する水を複数回再利用できるオンサイト水処理システムを含む、さらに可能な限り施設での水なし冷却や様々な水の補充活動に資金提供するなど、還元だけでなく補充活動も含まれます。

 

2021年、AWSは世界の水使用効率(WUE)指標である1kWhあたり0.25Lの水を達成したと述べています。アイルランドやスウェーデンでは、AWSは1年のうち95%、データセンターの冷却に水を使用していないとのことです。

 

なお、米国エネルギー省のレポートによると、平均的な蒸発冷却式データセンターのWUEは、1kWhあたり1.8Lであるとされています。

 

英国では、AWSはThe Rivers Trust社およびAction for the River Kennet社と共同で、テムズ川の支流に2つの湿地帯を作ることに取り組んでいます。

「イングランドの河川は国の宝であり、AWSと提携し、この地のメンバートラストと協力してテムズ川とその支流を保護できることを嬉しく思います」と、The Rivers TrustのCEOであるMark Lloyd氏は述べています。

 

「2030年までにウォーター・ポジティブになるというAWSのコミットメントは、気候変動の影響を受けた河川や水資源の回復を支援するために必要な行動を後押しするものです。

 

私たちは、AWSとの関係を拡大し、このパートナーシップを利用して、他の企業が河川の回復力を向上させる水管理活動を共同で支援できる同様の道を示すことを楽しみにしています。」

 

データセンターは冷却のために大量の水を使用しますが、業界が実際に使用する水の量は明確ではありません。

 

研究者らは、米国の平均で、データセンターのエネルギー消費1MWhは7.1㎥の水を必要とすると推定していますが、これは地域や施設によって大きく異なる可能性があります。

 

GoogleMicrosoftMetaの取り組み

 

Google、Meta、Microsoftは、2030年までのウォーター・ポジティブを公約していますが、彼らの施設の多くは現在、1日あたり数百万ガロンもの水を使用しています。

 

北米、ヨーロッパ、南米に40を超えるキャリアニュートラルデータセンターを所有および運営しており、コロケーションおよびピアリングサービスを提供しているCyrusOneは、自社のいくつかの施設がウォーター・ポジティブであると主張しています。

 

世界中の投資家による責任投資戦略の開発と実践をサポートしてきたESG調査・レーティング・データ提供のリーディングカンパニーMorningstar Sustainalyticsは以前、マイクロソフトが節水への取り組みで市場をリードしている、という報告書を公開しました。

 

ヨーロッパのデータセンター事業者らは今年、欧州委員会に対し、2040年までに水の使用量をコンピュータの電力1kWhあたり最大400mlに削減することを表明しました。

 

地球温暖化や人口増加の影響により、世界中で水不足が問題視されはじめています。大手企業のウォーター・ポジティブに向けた取り組みに今後も目が離せません。

ESG + DC

2023.03.01