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Founder message その3:データセンター(DC)とカーボンニュートラル
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2022.09.05

その3:データセンター(DC)とカーボンニュートラル

DCの最適配置に向けての地方分散と現状の矛盾について

 

 国内のDCの立地を見ると、約8割が関東及び関西に集中してるのが現状です。これは大規模地震等の災害に対して脆弱な立地であり、BCPBusiness continuity plan:事業継続計画)の観点から大きな問題となっています。また、これらDCの約40%以上が竣工後20年以上を経過していると共に低電力DC2kVA/ラック以下)の割合が約60%以上を占めている状況で、加速度的に進むAIや深層学習需要等に対応するDCの提供が難しくなっています。加えて、我が国のデジタル化は欧米諸国やアジア圏諸国と比べ遅れを取っており(世界デジタル競争力ランキング202027位)、残念ながらデジタル後進国と言わざるを得ない状況です。

 現岸田政権においては、202112月の所信表明演説で「成長と分配の好循環を実する「新しい資本主義」をコロナ禍に伴う危機後の目標に位置づけ、成長戦略の柱としてイノベーションデジタル気候変動経済安全保障の4分野を掲げ、デジタル分野では日本を周回する海底ケーブル「デジタル田園都市スーパーハイウェイ」、大規模データセンターや光ファイバー、高速通信規格「5G」と組み合わせて高速大容量インフラの全国での整備を実現する」ことを約束しました。その結果を受けて、DCの最適配置に向けて地方分散の提案が徐々に取り纏まりつつある状況で、現在では多数の地方公共団体も名乗りを上げている状況となっています。

 それでは、国が推し進めるDCの最適配置(地方分散)が順調にいけばよいのですが、はたしてどうでしょうか。

 

 今、私たちが肌で感じていることは、新たにDC事業を企てているDC事業者等は、東京であれば東京23区内又は大手町から3050㎞圏内のDC用地を、大阪であれば大阪市内(内陸側)又は堂島から3050㎞圏内(且つ北摂及び京阪奈エリア)のDC用地を血眼になって探しています。東京23区内や大阪市内においては、都市型DCの建設を目論み、その3050㎞圏内には、ハイパースケールDCの建設を目論んでいます。つまり現状においては、我が国が進めるDCの最適配置と矛盾した状況が現場レベルでは進んでいるのが現状です。実は簡単なことで、DC事業者はサーバールームをDC利用者(サーバー設置を希望する企業等)に場所を提供して収益を上げる構造で成り立っていますが、DC利用者自体の需要が上記のエリアを希望していることが大きな要因となっています。当社の経営陣も地方でDC事業をしていた際、DC利用者の呼び込みに大変苦労していたようです。DC利用料金を都市部より安価に設定して営業攻勢をかけても、DC利用者から聞こえてくる声は「大手町、堂島のIXに近い方がレイテンシーの観点から安心」、「有事の際、事務所から1時間以内で駆け付けられる場所が理想的」、「BCPの観点からは地方分散をするべきであるが、大規模な天災直後は、社内経営陣も含め重要性は認知するものの、時の経過と共にトーンダウンしてしまう」等々、心理的要因が大きな影響を与えています。レイテンシーの観点で言えば、海外にサーバーを置くわけではなく、国内の強力な通信網と繋がったDCであれば、時間のずれはごく僅かです。事務所から1時間圏内も、複数の地方DCにバックアップ対策を講じていれば、概ね解消できる議論であり、かつ、各DCにおいても、各利用者の要請に応じてサーバーのマネージドサービスを提供しているのが一般的です。

 このような状況下、DCの最適配置に向けて地方に積極的にDCを誘致しても、DC事業者が積極的に手を挙げて、DC事業を展開していくにはハードルが高く、如何にしてDC利用者に地方進出に目を向けさせるかが課題となります。

(その4:最終回)ではDCの最適配置に向けて地方分散とカーボンニュートラルへ向けて成功するキーワードについて触れてまいります。

(文責)小杉 雅芳

 

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