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TOPICS & NEWS “オンプレ回帰”の動き顕在化とその背景
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2023.07.25

“オンプレ回帰”の動き顕在化とその背景

クラウドの利用が加速する中にあって、一度はクラウドに切り出した社内システムをオンプレミスに戻す、いわゆる“オンプレ回帰”の動きが顕在化していると言われています。

 

昨年には、楽天グループが、オンプレ回帰を決断しました。プライベートクラウド「One Cloud」の環境を拡充し、グループ企業の各種事業が用いるIT基盤の統合を進めています。現在、パブリッククラウドで稼働させている多数のシステムは、原則としてOne Cloudへのシフト。グループ全社でIT基盤のプライベートクラウドへの集約を進めてコスト効率を高めるほか、IT基盤のノウハウを蓄積し安定稼働や、セキュリティ強化につなげるとしています。

 

プライベートクラウドは、新たに参入を計画する法人向けITサービスの基盤にも活用されます。計画するのは本人確認に使うeKYCやWebサイトのアクセス分析、電子決済の機能などです。いずれもグループの事業で使うために開発した技術で、従量制のパブリッククラウドサービスとして外販する方向で準備を進めています。

 

クラウドファーストが叫ばれる中、オンプレミスでサーバーを導入する機会は多くの企業で確実に減っていると言われています。ただし、サーバー市場に目を転じれば、いまだ動きは堅調。一見すると矛盾するようですが、この背景にはいったい何があるのでしょうか。

 

オンプレ回帰の背景

 

サーバー市場は22年度も対前年比1~2割増と好調に推移している様子です。

 

サーバー仮想化が流行り始めた2000年代前半も、サーバー統合を通じて、サーバーは売れなくなると言われました。しかし、現実はそうなることはなく、仮想化によりサーバー調達の容易性が増し、逆に各種システム導入が活発化したことで、より多くのサーバーが求められるようになりました。

 

現在、DXを追い風にIT投資も活発化し、従来なかったシステム活用も広がっています。クラウドが必要とするサーバーリソースの急増という状況からも、サーバー市場の拡大はむしろ自然と言えます。

 

一方で、一般企業のオンプレでのサーバー利用がここにきて盛り返している背景には、実際に使ってみて、クラウドに対する誤解が解けていることがあります。振り返ればクラウドは、極めて低廉なコストでのリソース利用や、運用の外部への切り出しによる作業負荷の軽減で大きな期待を集めました。

 

しかし、現実は、コスト面でクラウドの特性を理解しないまま利用を進めた結果、予想外の高額な料金が請求されるケースも少なくありません。

 

また、運用面でも、ハードのお守りこそなくなりましたがシステム自体の運用は依然として残ります。クラウドの管理作業にはオンプレとは異なる知見が必要で、多くの企業がオンプレとクラウドの双方にシステムを抱えている現状では、二重管理がどうしても発生してしまいます。これによる負担は多忙なIT部門にとって決して小さくありません。

 

セキュリティの問題もあります。機密性が高いデータを扱う既存のレガシーシステムはパブリッククラウド上で運用できないといった理由でオンプレミスでの運用を廃止できず、その結果としてIT運用が複雑化することによる運用管理負荷が増加するといった問題が生じています。

 

これらの“現実”への理解が進んだことで、一度はクラウドに切り出したシステムについて、「合わない」と判断したものから順次オンプレに戻し、クラウドと併存させるスタイルへの揺り戻しが起こっています。

 

現在進行形でオンプレ回帰は進みます。ただ、クラウドを経験した企業はその良さも知っています。そうした企業が目指すべきIT基盤は、従来型のオンプレでよいのでしょうか。

 

現状のオンプレ回帰のアプローチは2通り

 

現状のオンプレ回帰のアプローチは2通りあります。サーバー関連はクラウドに残しつつ、DXで鍵となるデータのみをオンプレに戻すやり方が1つ。システム全体をオンプレに戻すのがもう1つです。問題となるのは後者の方法です。

 

コスト面だけを重視したSPOF(単一障害点)が存在する設計の3Tier型(サーバー群と共有ストレージをネットワークファブリックで接続するシステム形態)でないことだけは明白。ただし、全ての提案において3Tier型がよくないと言っているわけではなく、適切な課題への対策などを考慮した上でも、大規模になるほど複雑さが増し、見直しの都度、サーバー、ストレージ、ネットワークの担当者による議論で長いリードタイムが生じたり、ハードの世代などの問題で高額なリプレースコストが生じたりといった状況には誰も戻りたくはないと考えています。

 

目指すべきは、やはりクラウドライクな仮想化基盤の採用です。その観点から今、注目を集めているのが、クラウドライクなシステム基盤を実現するHCI(Hyper Converged Infrastructure)。このHCIが評価を大きく高めているようです。事前に検証済みのサーバーとストレージ、ネットワークの機能をソフトウェアで実装して1つの筐体に収め、仮想化ミドルウェアと一体で提供されるHCIは、IT基盤の構成を格段にシンプル化します。専門的な知識が乏しくともノードの追加で簡単にリソースを拡充でき、クラウドに近い拡張性を実現します。

 

大規模になるにつれ複雑さを増す3Tier構成に対し、シンプルな構成を保てるHCIは、今後も注目を集めることになりそうです。

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