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NTTと東電が協業事業における新会社設立へ

東京電力ホールディングスとNTTが、2023年12月19日、協業事業における2つの新たな取り組みを発表しました。

 

データセンター事業

 

まずはデータセンター事業です。NTTデータグループ、NTTグローバルデータセンター、東京電力パワーグリッドは、千葉県印西白井エリアにおいて、データセンターの共同開発および運用を目的とした新会社の設立に向けて合意しました。2023年度内に特別目的会社を設立し、電力容量50MWのデータセンターの開発を進め、2026年度下期の開設・サービス開始を目指すということです。

 

生成AIの普及などでデータセンターへの需要は高まることが期待されており、両社の持つノウハウを活かし、カーボンニュートラルの実現なども踏まえた先進的なデータセンターモデルを目指す方針を示しています。

 

蓄電所立ち上げ

 

2つ目は東電ホールディングスおよびNTTアノードエナジーによる、蓄電所事業です。群馬県吾妻郡嬬恋村に、合同会社「嬬恋蓄電所合同会社」を11月に設立しました。今後、2025年の事業開始を目指し、蓄電所構築等の準備を進めます。

 

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの導入・活用が進む中、それに伴い必要となる調整力の確保や電力系統の増強対策等、電力システムにおける課題が顕在化しています。

これらの課題に対しては、これまでも東電ホールディングスおよびNTTアノードエナジー双方で蓄電池を活用した取り組みを行なってきました。

両社でこれまで培ってきたノウハウを持ち寄り、今後必要性が高まる蓄電所事業を協業することで蓄電池の活用領域拡大やコスト低減を進め、さらなる蓄電所事業の発展を目指すということです。

 

今後も動向に注目を

 

2020年のデータセンターの消費電力量は、総消費電力量(9135億kWh)の2.1%を占めており、2018年の約1.4%から拡大しています。また、国際環境経済研究所の報告書によると、計算負荷の増大傾向が将来にわたって継続する場合、2030年に国内で90TWhになるとの見通しが出されています。

拡大する電力需要を、カーボンニュートラルで満たしていくという難題をクリアするうえで、日本最大のデータデンター事業者でもあるNTTと東京電力による新会社設立は、業界全体からの注目を集めています。

日本のデータセンター市場を語るうえで重要な話題でもあるので、今後も動向を追っていきたいと思います。

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2024.01.06

ソフトバンク、北海道にデータセンター建設とその目的

データセンターの地方分散化の流れについては前回もお伝えしました。今回は、その中でも北海道にデータセンター建設予定のソフトバンクの動きについて見ていきます。

 

ソフトバンク宮川社長、北海道鈴木知事と面会

 

ソフトバンクは、生成AIの開発などに活用する国内最大規模のデータセンターを苫小牧市に段階的に整備していく計画を11月に正式決定し、国も整備費用として最大300億円の補助を決めています。

 

11月24日に、ソフトバンクの宮川潤一社長が道庁を訪れ、鈴木知事と面会しました。

 

宮川社長は2年半ほど前から鈴木知事と話し合ってきたことを明かした上で、冷涼な北海道の気候のおかげでサーバーを冷却するための電気代の大幅な節約が見込めることなど利点を挙げつつ、「東京や大阪などデータニーズがあるところからちょっと離れており、通信に遅延がある」といった不利な点についても言及。

 

インターネットの基幹回線の整備や、通信の遅延があまり問題とならないというAIの学習モデルづくりなどを、主たる用途にすることで地理的課題を克服するという考えと、再生可能エネルギーを夜間などにも供給ができるよう蓄電設備や水力などの電源開発を進める考えも示しました。

 

3年後に開業予定のデータセンターで進める生成AIの開発については「都会などのデータを学習させた上で、いろいろな地域で使えるサービスモデルを構築したい」と抱負を述べました。

 

それについて鈴木知事は「先端半導体の国産化を目指すRapidusも進出し、研究と人材育成の一体的な複合拠点を北海道で実現したい。

今回の整備計画の決定を契機にして『データセンターパーク』としての機能も集積させていきたい」と応じました。

北海道とソフトバンクは今後、地域の課題の解決に向けて包括連携協定を結ぶことにしています。

 

データセンター事業によって地域の活性化はなされるのか

 

データセンターでの生成AIの開発。そして、研究と人材育成の拠点の実現。

この目的が達成されることで考えられる地域の経済などへの影響は計り知れません。

データセンター事業が地域の活性のカギを握るのか。

今後もソフトバンクの北海道のデータセンター建設の動向に注目していきます。

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2023.12.26

データセンター地方分散の流れ

データセンターの一極集中化の問題が顕在化する中で、政府はデータセンターの地方分散化に取り組んでいます。すでに複数の省庁で事業や検討がはじまっています。

 

広島県三原市にデータセンター建設が明らかに

 

三原市の本郷産業団地に東京の企業がデータ処理の高速化と安定性を高めるため、大規模なデータセンターを建設することが明らかになりました。

この企業はアメリカのIT大手「グーグル」のグループ企業だということです。

三原市の本郷産業団地は、広島県と三原市が出資して27万5000平方メートルの敷地を一昨年に整備し、11月17日に結ばれた契約で土地の売却価格は58億円あまりとなっています。

また、データセンターの整備に伴う投資額は1000億円規模になると見込まれています。

 

本郷産業団地が選ばれた理由

 

広島県によると、本郷産業団地が選ばれた理由としてデータセンターは膨大な情報を取り扱うことから災害リスクが少ないほか、広島空港から車で15分ほどの場所にあり、高速道路のインターチェンジも近く、保守点検や機器更新のための交通アクセスの良さなどが評価されたということです。

 

この企業では段階的に施設の整備を進め、すべての施設が稼働するのは10年後の2033年ごろになる見込みだとしていて、今後、県は三原市と連携して必要な支援を行う方針です。

 

経済産業省、データセンターの地方分散化を支援

 

経済産業省は通信大手のソフトバンクが生成AIの開発などに活用するための新たなデータセンターを苫小牧市に整備する計画に対し、最大で300億円を補助すると発表しました。

 

国内のデータセンターは東京や大阪の周辺に集中していることから、地方への分散を進めることで大規模な災害に備えるとともに、膨大な電力を使用することによる電力負荷の地域的な偏りを解消する狙いがあります。

 

西村経済産業大臣は11月7日の閣議のあとの会見で「地方にある再生可能エネルギーの利用の促進にもつながるので、今後もデータセンターの地方への分散をしっかりと支援をしたい」と述べました。

 

データセンターの地方分散の流れに注目を

 

ChatGPTなど、目覚ましい進化を遂げているAI(人工知能)。大量のデータがやりとりされるため、通信環境に問題があると、ユーザーに大きなストレスをもたらすことになります。データのやりとりの基盤となる良好な通信環境を実現しなければなりません。一部の地域にデータセンターが集中することは、街の機能維持の観点から、都市の電力が逼迫することの可能性も懸念されています。リスク分散等の観点からも、データセンターの地方分散化は重要です。

 

データセンター建設による地域経済の活性化に繋がる可能性も考えられます。今後のデータセンター地方分散の流れには、大いに注目していきたいです。

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2023.12.16

アイルランド燃料電池を利用したデータセンター建設計画による可能性

先日、アイルランドから韓国への貿易使節団が派遣された際に、アイルランドの開発会社LLUMCLOONエナジー社とSKグループの建設子会社との間で契約がとり交わされました。

 

アイリッシュタイムズによると両社はアイルランドで送電網への接続を行わず、ガス燃料電池を利用した「燃料電池を動力源とするデータセンター」を計画しているとのことです。

 

燃料電池とは

 

燃料電池とは、エネルギーを利用して電気を生成する装置のことを言います。

 

車載燃料(通常は水素)と酸素などの酸化剤との間の化学反応。特に、固体酸化物型燃料電池 (SOFC) は高温で動作し、効率が高いですが、通常は天然ガスなどの炭化水素燃料を使用します。

 

この化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、将来的にはより環境に優しい燃料源の進歩により水素に移行する見通しです。

 

燃料電池の開発を進めるSKプラント

 

SK E&Cとして知られていたSKエコプラント社は、SKテレコムや SKハイニックスなどを所有する韓国のコングロマリットSK グループの建設子会社。サンノゼに拠点を置くブルーム・エナジー社と提携し、現在燃料電池と水素発電設備の開発を進めています。

 

重要な技術を提供するだけでなく、データセンターの建設において包括的な役割も担うことになります。

 

データセンターにおける燃料電池の可能性

 

データセンターの需要は増加しています。データセンターが使用するエネルギー、送電網への負担、データセンターの二酸化炭素排出量は、ここ数年、多くの政治的議論の原因となっています。

 

開発のスケジュールと運用能力に関する詳細はまだ明らかにされていませんが、この取り組みはアイルランドにおける将来のグリーンエネルギーソリューションに向けた大きな前進を示しています。

 

マイクロソフトやアマゾンなどの世界的なハイテク大手も同様に、自社のデータセンターに電力を供給するための燃料電池アプリケーションを検討しており、より持続可能なバックアップおよび主電源への業界全体の方向転換を示しています。

 

計画の成功は、実際に、ヨーロッパ全土および日本を含むその他の地域のデータセンターにおける燃料電池の将来の開発のベンチマークとなる可能性があります。

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2023.11.15

マイクロソフト、生成AIの事業データセンター拠点を日本国内に切り替えへ

今年7月に、マイクロソフトが新たな方針を発表しました。これまでマイクロソフトの生成AIの事業のデータセンターは主にアメリカと欧州に位置していましたが、日本の顧客に対するサービス品質の向上とデータ管理を強化するために、日本の企業の生成AI事業用途のデータセンターは、すべて日本国内に切り替えることを明らかにしたのです。

 

今回の方針の背景には、データセンターの拠点が海外にあることによって機密性や重要性の高い情報管理に対する懸念が、以前から指摘されていたことがあります。

マイクロソフトはこの懸念を解消するため、全てのデータのやりとりを日本国内で行うことにしました。

 

現在東日本に設置しているデータセンターを拡充し、生成AIの拠点に。これにより、機密性の高い情報の処理を国内だけで行えるようになります。また、生成AIの事業の拡大に合わせて、今後は西日本に置かれているデータセンターの拡充も検討するとしています。

 

マイクロソフトの動きは、NECも日本国内のデータセンターを利用した新サービスを開始するなど、業界全体にも影響を及ぼしています。

 

デジタル社会推進本部も認識

 

マイクロソフトの新たな方針は、自民党のデジタル社会推進本部でも認識されています。

 

AIの活用に関する作業チームの会合を開き、マイクロソフト側から新たな方針について説明を受けた平井元デジタル大臣は、「世界各国で研究開発がどんどん進んでおり、日本でも環境を与えるという意味では有力な選択肢が増えることになる」との見解を示しました。

 

また、作業チームの座長を務める平将明衆議院議員は、「データセンターが海外にあるとセキュリティの問題が出てくるので、国内に拠点が整備されることは懸念の一つを解消する重要な提案だ」と評価。

 

国内のデータセンター拡充によって、政府や各省庁による生成AIの活用における最大の懸念点が解消されることになります。今回の新しい方針の発表によって、今後の生成AIの発展にますます期待が高まっていくことになりそうです。

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2023.10.28

GPU市場ほぼ独占状態で話題のエヌビディアについて探る

今回は、今年5月末に時価総額が一時1兆ドルの大台に乗ったことで話題になった、アメリカの半導体メーカー・エヌビディアについて探ります。

 

エヌビディアの製造するGPU

 

エヌビディアが製造しているのはGPU(画像処理半導体)です。GPUは動画・画像・アニメーション表示などのディスプレー機能のために設計されたチップで、ゲーミングPCなどで映像をなめらかに表示するために用いられてきました。近年は、自動運転技術や暗号資産の採掘作業(マイニング)で高度な演算処理の担い手として脚光を浴びました。

 

今、このGPUの需要が拡大しています。その起爆剤となっているのが、「データセンター」とChatGPTに代表される「生成AI」なのです。

 

GPUと生成AIとデータセンター

 

これまでデータセンターにはCPU(Central Processing Unit)のみ搭載するケースが一般的でしたが、AIの普及によってCPUと併せて、GPUもデータセンターに搭載する流れが進みます。ただデータセンターの中でGPUが搭載されているものは全体の1〜2割程度でした。

 

それが、生成AIの普及によって事情が変わります。

 

画像生成や自然言語生成などの生成AIでは、学習によって作り上げたAIモデルを動かして結論を得る「推論」というプロセスが必要になります。ChatGPTに質問をした際、答えが返ってくるのは「推論」の結果です。推論プロセスでは、学習プロセスよりも多くの計算が必要になります。そのため、大量の計算に適したGPUも併せて搭載する必要があるのです。

 

今後、世界のほとんどのデータセンターで情報を生成する主要な作業が生成AIになることは明らかで、また10年間で、世界のほとんどのデータセンターにGPUが搭載されることになるだろうと言われています。

 

エヌビディアの直近四半期決算(5-7月期)では、深刻な供給不足で出荷量が需要に追いついていないにもかかわらず、データセンター部門の売上高がわずか3カ月で2倍以上に増加。アナリストらは同部門の売上高が来年度(25年1月期)には600億ドルを超え、昨年度(23年1月期)の4倍以上になると予想しています。

 

なぜエヌビディアはこれほど強力なリードを保っているのでしょうか。

 

GPU市場、エヌビディアがほぼ独占状態の背景

 

エヌビディアは非常に早い時期からAIを推進するための地位を築いていました。エヌビディアは2006年、開発業者がGPU向けアプリケーションを書くためのプログラミング言語である「CUDA」を発表。CUDAはその後のAI事業にとって重要な構成要素となったのです。

 

CUDAはやがてAI開発業者が利用する250のソフトウェアライブラリを擁するまでになり、この幅広さのおかげでエヌビディアは実質的にAI開発業者が大いに頼りにするプラットフォームとなったのです。

 

CUDAはライバルが到底乗り越えられない競争上の「掘」としてエヌビディアを守っています。バーンスタイン・リサーチ主催の7月の電話会議で、元エヌビディア副社長のマイケル・ダグラス氏は、エヌビディアが競合他社を引き離すための「矢筒の中の重要な矢」はソフトウェアだと指摘。エヌビディアのシステムの今後数年間にわたる性能向上の多くは「ハードウエア主導ではなくソフトウェア主導によるものだろう」と予想しました。

 

エヌビディアの独占状態の背景のカギは、ソフトウェアの開発にあったのです。

 

当面はエヌビディア1強が続く

 

当面はデータセンター向けのGPU市場はエヌビディアのほぼ独占状態が予測されます。

 

とはいえ競争は激しくなっていきそうです。インテルやAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)といったすでにGPUを扱っている半導体メーカーとの競争はもちろんのこと、グーグルやアマゾン、メタといった巨大IT企業も自社製のAI半導体の開発に乗り出しています。

 

更なる生成AIの進化とエヌビディアの動向とともに、GPUを扱う他の企業の動きにも注目していきたいと思います。

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2023.10.26

AI活用の拡大とデータセンター需要

デジタル技術の進展やスマートフォンの普及によりAIの需要が急速に拡大、そして企業などの情報サーバーを保管するデータセンターの需要も拡大しています。

 

そもそも、AIの需要が拡大することでデータセンターが必要になるのはなぜでしょうか。

 

AI活用の拡大とデータセンター

 

「DX」(デジタルトランスフォーメーション)と呼ばれる社会のデジタル化が進んでいます。ビジネスではAIを活用する場面が広がり、AIが質問に自然な文章で答える「ChatGPT」も脚光を浴び、スマートフォンの買い物サイトや交流サイト(SNS)、ゲームアプリなど、すばやい情報処理を求められるサービスは増え続けています。

 

日々AIの利用規模が拡張し、要求が多様化する今、企業は安定かつ安全なデータ・システムの運用を必要としています。

 

データセンターは、IT機器、ネットワーク機器やサーバーを安全に保管しておく専門の施設。IT機器を自社で管理すべき際も、十分なスペース・セキュリティ対策がない場合があります。これら様々な問題を解決するために、データセンターを利用する企業が増えています。データセンターは、IT機器の運用や管理に優れており、いろいろな企業の要求を満たすことができるのです。

 

AIの大量導入でデータセンターへの投資も拡大

 

2022年11月以降、ChatGPTの大成功に象徴されるように、AIの大量導入はカリフォルニアのゴールドラッシュのような関心を呼びました。投資市場は、NVidia、Google、Microsoftのような広範な研究開発努力によって先行者利益を獲得した先駆的企業に報いるために、シリコンバレー投資の時流に再び乗ります。投資家たちは当然ながら、ハイリスク企業や赤字企業を避けながら、次の受益者グループを探しています。

 

NVidiaの2024年第1四半期決算説明会は、AIサプライチェーンにとって転換点になりました。Nvidiaのハードウェアに対する直近の驚異的な需要の伸びが強調され、アナリストは通年の売上高予想を約40%上方修正したのです。(出典:Refinitiv)

 

2023年5月24日に行われた投資家向け決算説明会で、予想を上回る売上高見通しを説明する際には、同社は56回以上も「データセンター」について言及。同社の高度なGPUが、高性能で安全かつ安定したデータセンター環境に全面的に依存していることが明らかとなったのです。

 

AI対応のデータセンターの問題点

 

AI対応のデータセンターには問題点もあります。機械学習とAI活用は、HPCサーバーやGPUサーバーに多くの電力が必要になります。これらのサーバーは多大な電力を消費するため、基本、1ラック内に複数収まりきらないのが現状です。その結果電力供給が追い付かないため高密度に高性能サーバーを設置できないという問題を抱える企業が増加しています。HPCサーバーやGPUサーバーの大量電力消費は抑えられないため、サーバーは大量の熱が溜まり、適切に冷却する必要があります。そのためAI対応のデータセンターには、節電技術や空調技術の向上が更に求められています。

 

まとめ

 

今回は、AI活用の拡大とデータセンター需要について説明してきました。

 

データセンターは、今後もデジタル経済を支える重要なインフラとして、消費者や企業に新しいAIツールを提供する上で重要な役割を果たすことになります。また企業の技術動向・ビジネスニーズに合わせたサービスの提供が求められていくでしょう。

 

データセンター事業者は問題点などについても慎重に見極めながら議論を進めて、DXの波に乗っていってほしいと思います。

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2023.10.18

データセンターの液体冷却市場の拡大、その背景と課題

データセンターの液体冷却の世界市場は、予測期間(2023年から2028年)の間に26億米ドルから78億米ドルに達し、24.84%の平均成長率(CAGR)になると予測されています。

 

最新の調査によると、世界のさまざまな地域の中で、アジア太平洋地域が予測期間中にデータセンター液体冷却市場で最も急成長する地域となる見込みです。アジア太平洋地域では、持続可能なプラクティスとグリーンデータセンターの価値に対する認識が高まっています。

 

液体冷却システムとは

 

データセンターから排出される温室効果ガスを削減するため、再生可能エネルギーを利用したグリーン・データセンターの構築や、エネルギー効率の高いソリューションの開発が加速しています。現在の推計では、データセンターは世界の総電力量の約3%を消費、データセンターで使用されるエネルギーのほぼ大半は冷却に関連しています。

 

液体冷却システムは、水やその他の液体を使用して、データセンター内のサーバーやその他の機器を直接冷却するシステムです。これらのシステムは、空気ベースの冷却システムよりも効率的ですが、専用の機器とメンテナンスが必要。データセンターにとって冷却は、機器が最適な温度で動作し、システム障害やデータ損失につながる過熱を避けるために不可欠です。

 

液体冷却市場拡大の背景

 

技術の進歩により、液体冷却の保守が簡単になり、拡張が容易になり手頃な価格に。その結果、ビルトインの高温多湿の気候のデータセンターでは液体の使用量が15%以上削減され、涼しい地域では80%削減されました。液体冷却専用のエネルギーは、建物や水を加熱するためにリサイクルでき、高度なエンジニアリングクーラントの適用により、空調の二酸化炭素排出量を効果的に削減します。

 

液体冷却のその他のさまざまな利点には、空気冷却と比較してより高い容量、はるかに大きな容量で同じ冷却を提供すること、高出力密度コンポーネントを直接適用することによる全体的な容量要件の削減、および効率的な熱除去が含まれます。直接液体冷却方式で使用される誘電性液体は、効果的に熱を吸収。したがって、より多くのハードウェアをより少ないスペースに挿入できるため、ハードウェアを収容するための追加スペースの必要性が低くなります。

 

液体冷却は、データセンター市場、特にAIやMLのワークロードをサポートする高性能コンピューティングアプリケーションで最も人気のある冷却技術と報告されています。Googleのような業界をリードする企業は、既存のデータセンター・インフラをこの技術に対応するように改修することで、最新のAIハードウェアに液体冷却を採用しています。

 

同様に、メタ(旧フェイスブック)は最近、同社の設備に特化した新しいAI設計を開発する計画を明らかにしました。

 

課題に直面する運営者

 

一方、冷却システムの採用を希望するデータセンターの運営者は、適応性の要求から大きな課題に直面しています。データセンターは複雑で、膨大な数のサーバーが配置され、量、タイミング、場所の不確実性を伴います。このような高密度で冷却する場合、多くの余分な費用が発生します。データセンターの要求を満たすには、適応性と拡張性が必要です。企業は、現在の冷却システムが将来的に増加するサーバーの負荷をサポートできるかどうか心配しています。そのため、インフラの変更が頻繁に行われ、企業は新しい冷却システムにあまり投資したがらないのです。

 

データセンターの運営者は、新しい冷却システムに移行する際の潜在的なダウンタイムの損失に注意しています。したがって、運用費を見落とし、時代遅れの冷却システムを使い続けています。この傾向は、テストされていないと認識されている新しいテクノロジーの採用を遅らせます。

 

間接冷却が大きな市場シェアを占める見込み

 

間接冷却は、今後重要な市場シェアを占めると予想されます。

 

間接または直接チップ冷却は、液体からチップ、間接、または直接チップ冷却システムを含む、最も一般的な液体冷却方法です。間接冷却または液体からチップへの冷却は、直接チップまたはコールドプレート冷却とも呼ばれ、サーバー内部のコールドプレート上の冷却剤と冷水ループを使用して熱を外部に運びます。

 

データセンターは現代においてかつてないほどの計算量とコア数が要求されるアプリケーションに突入しています。データセンターの運営者は、高密度化と、従来の空気冷却が限界に達したときに課せられる課題について再考する時期が来ているのかもしれません。

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2023.09.27

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