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以前、日本において安定的に稼働できるデータセンターを見極める立地条件として、
①通信遅延の解消と冗長性の確保
②高電力及び冗長性の確保
③自然災害への対策
以上の3つについて紹介させていただきました。
今回は、世界においてはどのような場所がデータセンターの立地として選出されているのか取り上げていきます。
データセンター立地ランキング、米国が圧倒的~バージニア北部がトップ
不動産専門会社 Cushman & Wakefield (クッシュマン&ウェイクフィールド)が毎年発表する「世界で最も魅力的なデータセンターの立地」にバージニア北部が再び選出されました。
グローバルデータセンター市場比較レポートでは上位8都市に米国が選ばれました。このレポートは、光ファイバーの接続性、税制優遇、土地や電力の価格などの基準に従ってインターネット中心地をランク付けしています。トップ10は米国に偏っており、Cushmanは、現在の容量が1.7GWのバージニア北部が、今後2年間で2GW以上に達する可能性が高いと予測しています。
バージニア北部が3年連続で再び総合ランキングのトップに立ったことは驚くことではありません。バージニア州は世界最大のデータセンター市場であり、強力な建設パイプラインを備えています。優れた接続性、魅力的なインセンティブ、低コストの電力を提供しています。空室率は非常に低く、需要は高く、事業者もテナントも同様に拡張に関心を持っています。このような状況から、この地域は今後2年間で世界初の2ギガワット市場になる可能性を持ち合わせています。
また、シリコンバレー、シンガポールは、土地と電力の不足がよく知られており、シンガポールの場合は実際に政府がデータセンター建設の認可にブレーキをかけたにもかかわらず高いランキングに入っています。
高電力確保は、日本においては重要な立地条件として挙げられていますが、土地と電力はCushmanがランキングで考慮した13の要因の中で最も優先順位の低い3つの項目です。これは建設業者が常にハブの既存の容量に近いという最優先事項の点数が高い場所で、キャパシティを絞り込む方法を見つけることが期待されていることを示しています。
Cushmanの上位3要素は、ファイバー接続、市場規模、クラウドの利用可能性です。
その次に位置する要素は、基本的にオプションとして提供されるもので、持続可能性、政治的持続可能性、税金、インセンティブなどが含まれます。日本で重要視される自然災害による環境リスクは、最もウエイトの低い要素です。
香港は再生可能エネルギーの利用率が非常に低く、データセンター事業者は温室効果ガスを大量に排出していることになりますが、この要素ではトップ10圏外から6位にランクインしています。
一方シアトルと新規参入のポートランドが同率10位に入ったことについては、「どちらも米国太平洋岸北西部にある持続可能性に重点を置いた都市」と環境問題への配慮を評価されています。
米国の優位性
データセンター米国優位の背景には米国のソーシャルメディアやクラウドのハイパースケーラがインターネットを支配している点にあると思われます。しかし、これは中国が他の国々と同じように国際的な不動産市場に参加していないという事実を反映していることが考えられます。北京と上海はこのリストに含まれていますが、上海は600MWで世界第4位のデータセンター・ハブであるにもかかわらず、上位をにぎわしていません。
トップ10には米国のハブが8つ含まれており、アトランタ、ポートランド、フェニックスが新たにランクインし、ニューヨーク(昨年の第9位)の陥落を補っています。ロンドン(前回7位)とアムステルダム(昨年10位)は、それぞれ800MWと400MWの規模であるにもかかわらず、トップ10から外れました。
米国以外では、シンガポール、香港、シドニーの3都市がランクインしています。なお、10位が同点であったためトップ10には11の都市が含まれています。
このような世界のデータセンターの事情が、日本にどのような影響を及ぼすのか、今後も注目が必要です。
2022.11.25
前回は、資産や負債をバランスシートに計上しない、バランスシートをスリム化する「オフバランス化」が注目される理由について、ご紹介させていただきました。
様々なメリットがあるオフバランス化ですが、今回はオフバランス化の問題点について、いくつかの要点を列挙してみます。
問題点1:トータルコストの上昇
オフバランス化のために資産を売却し、サービス利用に切り替えることで、トータルコストが上昇するケースがあります。
例えば、自社で保有するサーバー機の購入費用が200 万円で、平均6年間サーバーを使用していたとした場合に、同等スペックのクラウドサービスを月額3万円で6年間使用すると216万円となり、トータルコストが上昇します。
もちろん、サーバー機が6年より早く壊れてしまう可能性もありますし、サーバー機をメンテナンスする人員の確保に人件費がかかり、実際のトータルコストは購入費の200万円より高かったというケースもあると思います。結果としてオフバランス化しない方がトータルコストを安く済ませるケースが存在する為、サービス利用等を開始する際には慎重な判断が必要となります。
問題点2:資産価値上昇による機会損失
資産の保有は、資産を失うリスクを伴いますが、資産は価値上昇により利益を生む場合があります。
例えば国土交通省が毎月発表している不動産価格推移によると、マンション価格は2010年から12年で約1.8倍まで上昇しています。
2010年頃にマンションを売却した人の中には、“あの時売らずにもう少し保有しておけば良かった”と後悔している方も少なくないかもしれません。
保有資産の売却・処分のタイミングは、様々な要素を考慮しながら慎重に判断する必要があると思います。
問題点3:手数料がかかるケース
バランスシートをスリム化する手段の1つとして、ファクタリングサービスがあります。売掛債権を期日前に債権譲渡するものですが、ファクタリングサービスの手数料は10~20%ともいわれ、例えば1000万円の売掛金が、800万円に減ってしまうようなことが起こり得ます。
売掛金をすぐに・確実に回収できることはメリットも大きいですが、例えば資金繰りの改善が目的であれば、銀行融資を受けた方が良かったというケースも存在するでしょう。
ファクタリングを含め、オフバランス化のコンサルティングを受ける際は、その手数料についてもしっかりと確認をすることが重要です。
以上、オフバランス化の問題点にも目を向けていただくことで、より安心してオフバランス化を実施していただけるのではないかと思います。
2022.11.01
10月7日、Googleが日本のネットワークインフラに総額1000億円を投資する計画を発表しました。千葉県印西市に同社としては日本初となるデータセンターを稼働させることがニュースとなりましたが、データセンターに詳しい方以外は「なぜ印西市?」「千葉ニュータウン中央駅」ということのようで、SNS上で話題を呼んでいます。
近年はベッドタウンとして人気も高まっている印西市ですが、実はIT業界では、データセンター(DC)が集まる『DC銀座』として有名なのです。以前から海外企業向けの大型データセンターが続々と建設されています。アマゾンのデータセンターも印西市にあり、いまや海外でも、『INZAI』の名は知られているそうです。
データセンターは、サーバーやネットワーク機器を収容する施設なので、現在の企業にとっては生命線ともいえる存在です。そのため、地震などの災害にも耐える必要がありますが、印西市はどうなのでしょうか。
印西市は千葉県北部にあり、南東部に印旛沼、北西部に手賀沼、北部を利根川が流れています。しかし市の大部分は、標高20~30メートルの平坦な台地にあり、データセンターが多く集まる北総線・千葉ニュータウン中央駅周辺も、その大地の上に位置しています。
千葉ニュータウン周辺は下総台地の平坦地にあり、地盤もよく、災害リスクも低い土地にあたります。この付近の下総台地の地盤は、10数万年前にできた締まった砂層と、安定した関東ローム層の地盤からなっています。地震の揺れが増幅されづらく、液状化も発生しにくい特徴があります。
さらに、海から離れた内陸にあるため津波の心配もなく、水害のリスクも少ないと言えます。
「DC銀座」となった理由は、災害リスクが低いからだけではありません。
東京都心から約40km、成田空港から約15kmという立地で、アクセスが良好。また、アメリカなど海外と結ぶ海底ケーブルの陸揚げ拠点である茨城や南房総と、東京の通り道にあることも大きな強みです。更にデータセンターは非常に多くの電力を消費しますが、2023年に東京電力の超高圧変電所ができるなど、データセンター建設において必要不可欠なインフラが充実しているのです。
千葉のデータセンターは、日本に対する7億3千万ドルのインフラ関連投資の一部であるとGoogleのCEOピチャイ氏は述べています。この投資には、太平洋を横断し、2023年の開通時には日本とカナダ西海岸を結ぶ最初の光ファイバケーブルとTopaz海底ケーブルも含まれます。
2022年3月に大東建託が発表した「子育て世帯の街の住みここちランキング2021<首都圏版>」によると、東京都中央区に次いで第2位の印西市。
Googleの進出によって、今後もますます注目を集める場所になりそうです。
2022.11.01