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2023.10.26
今回は、今年5月末に時価総額が一時1兆ドルの大台に乗ったことで話題になった、アメリカの半導体メーカー・エヌビディアについて探ります。
エヌビディアの製造するGPU
エヌビディアが製造しているのはGPU(画像処理半導体)です。GPUは動画・画像・アニメーション表示などのディスプレー機能のために設計されたチップで、ゲーミングPCなどで映像をなめらかに表示するために用いられてきました。近年は、自動運転技術や暗号資産の採掘作業(マイニング)で高度な演算処理の担い手として脚光を浴びました。
今、このGPUの需要が拡大しています。その起爆剤となっているのが、「データセンター」とChatGPTに代表される「生成AI」なのです。
GPUと生成AIとデータセンター
これまでデータセンターにはCPU(Central Processing Unit)のみ搭載するケースが一般的でしたが、AIの普及によってCPUと併せて、GPUもデータセンターに搭載する流れが進みます。ただデータセンターの中でGPUが搭載されているものは全体の1〜2割程度でした。
それが、生成AIの普及によって事情が変わります。
画像生成や自然言語生成などの生成AIでは、学習によって作り上げたAIモデルを動かして結論を得る「推論」というプロセスが必要になります。ChatGPTに質問をした際、答えが返ってくるのは「推論」の結果です。推論プロセスでは、学習プロセスよりも多くの計算が必要になります。そのため、大量の計算に適したGPUも併せて搭載する必要があるのです。
今後、世界のほとんどのデータセンターで情報を生成する主要な作業が生成AIになることは明らかで、また10年間で、世界のほとんどのデータセンターにGPUが搭載されることになるだろうと言われています。
エヌビディアの直近四半期決算(5-7月期)では、深刻な供給不足で出荷量が需要に追いついていないにもかかわらず、データセンター部門の売上高がわずか3カ月で2倍以上に増加。アナリストらは同部門の売上高が来年度(25年1月期)には600億ドルを超え、昨年度(23年1月期)の4倍以上になると予想しています。
なぜエヌビディアはこれほど強力なリードを保っているのでしょうか。
GPU市場、エヌビディアがほぼ独占状態の背景
エヌビディアは非常に早い時期からAIを推進するための地位を築いていました。エヌビディアは2006年、開発業者がGPU向けアプリケーションを書くためのプログラミング言語である「CUDA」を発表。CUDAはその後のAI事業にとって重要な構成要素となったのです。
CUDAはやがてAI開発業者が利用する250のソフトウェアライブラリを擁するまでになり、この幅広さのおかげでエヌビディアは実質的にAI開発業者が大いに頼りにするプラットフォームとなったのです。
CUDAはライバルが到底乗り越えられない競争上の「掘」としてエヌビディアを守っています。バーンスタイン・リサーチ主催の7月の電話会議で、元エヌビディア副社長のマイケル・ダグラス氏は、エヌビディアが競合他社を引き離すための「矢筒の中の重要な矢」はソフトウェアだと指摘。エヌビディアのシステムの今後数年間にわたる性能向上の多くは「ハードウエア主導ではなくソフトウェア主導によるものだろう」と予想しました。
エヌビディアの独占状態の背景のカギは、ソフトウェアの開発にあったのです。
当面はエヌビディア1強が続く
当面はデータセンター向けのGPU市場はエヌビディアのほぼ独占状態が予測されます。
とはいえ競争は激しくなっていきそうです。インテルやAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)といったすでにGPUを扱っている半導体メーカーとの競争はもちろんのこと、グーグルやアマゾン、メタといった巨大IT企業も自社製のAI半導体の開発に乗り出しています。
更なる生成AIの進化とエヌビディアの動向とともに、GPUを扱う他の企業の動きにも注目していきたいと思います。
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