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NTTと東京電力が共同で新会社を設立し、データセンター事業と蓄電所事業の共同開発を行うことに合意したことは前回もお伝えしました。
今回は特に蓄電所事業について紹介していきます。
蓄電所事業における見通し
NTTアノードエナジーと東京電力ホールディングスは、嬬恋蓄電所で蓄電池の活用領域の拡大、低コスト化を目指すことに合意。この蓄電所は、リチウムイオン電池を使用し、容量は9.3MWh、出力は2MWになる予定です。
今後、両社は、電力及び通信のアセットやノウハウを活用し、カーボンニュートラル等、今後ますます高度化する社会ニーズにお応えするなど、新たな価値の創造と持続可能な社会の担い手となることを目指し事業展開を進めていく見通しになっています。
では、なぜ蓄電池の開発なのでしょうか。
データセンター事業における蓄電池の重要性
データセンターは膨大な電力を消費するため、再生可能エネルギーの活用が急務ですが、膨大な電力の安定供給がネックとなります。再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変動するためです。短時間であればUPS(無停電電源装置)や非常用発電機でカバーできますが、頻発には耐えられませんし、データセンターサービスとして致命的な欠陥となります。
蓄電池を使用することで、発電量の変動に対応することができるため、再生可能エネルギーの安定的な供給が可能になり、データセンター事業において環境に優しいエネルギーの利用が促進されると期待されています。これまでも蓄電池活用は検討されてきましたが、データセンターで活用するには、蓄電可能電力量とコストの両面から実装が進みませんでした。
蓄電池の技術、二社の取り組みに期待
蓄電池の技術は、産業界全体で非常に重要なテーマになっていますが、特にデータセンター業界においては重要かつ急務だといえます。
そのテーマへの道筋が、NTTと東京電力による新会社設立によってMW単位の大容量蓄電池の開発とコストダウンが進み、データセンター業界で普及していくことを期待していきたいと思います。
2024.01.13
東京電力ホールディングスとNTTが、2023年12月19日、協業事業における2つの新たな取り組みを発表しました。
データセンター事業
まずはデータセンター事業です。NTTデータグループ、NTTグローバルデータセンター、東京電力パワーグリッドは、千葉県印西白井エリアにおいて、データセンターの共同開発および運用を目的とした新会社の設立に向けて合意しました。2023年度内に特別目的会社を設立し、電力容量50MWのデータセンターの開発を進め、2026年度下期の開設・サービス開始を目指すということです。
生成AIの普及などでデータセンターへの需要は高まることが期待されており、両社の持つノウハウを活かし、カーボンニュートラルの実現なども踏まえた先進的なデータセンターモデルを目指す方針を示しています。
蓄電所立ち上げ
2つ目は東電ホールディングスおよびNTTアノードエナジーによる、蓄電所事業です。群馬県吾妻郡嬬恋村に、合同会社「嬬恋蓄電所合同会社」を11月に設立しました。今後、2025年の事業開始を目指し、蓄電所構築等の準備を進めます。
2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの導入・活用が進む中、それに伴い必要となる調整力の確保や電力系統の増強対策等、電力システムにおける課題が顕在化しています。
これらの課題に対しては、これまでも東電ホールディングスおよびNTTアノードエナジー双方で蓄電池を活用した取り組みを行なってきました。
両社でこれまで培ってきたノウハウを持ち寄り、今後必要性が高まる蓄電所事業を協業することで蓄電池の活用領域拡大やコスト低減を進め、さらなる蓄電所事業の発展を目指すということです。
今後も動向に注目を
2020年のデータセンターの消費電力量は、総消費電力量(9135億kWh)の2.1%を占めており、2018年の約1.4%から拡大しています。また、国際環境経済研究所の報告書によると、計算負荷の増大傾向が将来にわたって継続する場合、2030年に国内で90TWhになるとの見通しが出されています。
拡大する電力需要を、カーボンニュートラルで満たしていくという難題をクリアするうえで、日本最大のデータデンター事業者でもあるNTTと東京電力による新会社設立は、業界全体からの注目を集めています。
日本のデータセンター市場を語るうえで重要な話題でもあるので、今後も動向を追っていきたいと思います。
2024.01.06
データセンターの地方分散化の流れについては前回もお伝えしました。今回は、その中でも北海道にデータセンター建設予定のソフトバンクの動きについて見ていきます。
ソフトバンク宮川社長、北海道鈴木知事と面会
ソフトバンクは、生成AIの開発などに活用する国内最大規模のデータセンターを苫小牧市に段階的に整備していく計画を11月に正式決定し、国も整備費用として最大300億円の補助を決めています。
11月24日に、ソフトバンクの宮川潤一社長が道庁を訪れ、鈴木知事と面会しました。
宮川社長は2年半ほど前から鈴木知事と話し合ってきたことを明かした上で、冷涼な北海道の気候のおかげでサーバーを冷却するための電気代の大幅な節約が見込めることなど利点を挙げつつ、「東京や大阪などデータニーズがあるところからちょっと離れており、通信に遅延がある」といった不利な点についても言及。
インターネットの基幹回線の整備や、通信の遅延があまり問題とならないというAIの学習モデルづくりなどを、主たる用途にすることで地理的課題を克服するという考えと、再生可能エネルギーを夜間などにも供給ができるよう蓄電設備や水力などの電源開発を進める考えも示しました。
3年後に開業予定のデータセンターで進める生成AIの開発については「都会などのデータを学習させた上で、いろいろな地域で使えるサービスモデルを構築したい」と抱負を述べました。
それについて鈴木知事は「先端半導体の国産化を目指すRapidusも進出し、研究と人材育成の一体的な複合拠点を北海道で実現したい。
今回の整備計画の決定を契機にして『データセンターパーク』としての機能も集積させていきたい」と応じました。
北海道とソフトバンクは今後、地域の課題の解決に向けて包括連携協定を結ぶことにしています。
データセンター事業によって地域の活性化はなされるのか
データセンターでの生成AIの開発。そして、研究と人材育成の拠点の実現。
この目的が達成されることで考えられる地域の経済などへの影響は計り知れません。
データセンター事業が地域の活性のカギを握るのか。
今後もソフトバンクの北海道のデータセンター建設の動向に注目していきます。
2023.12.26
データセンターの一極集中化の問題が顕在化する中で、政府はデータセンターの地方分散化に取り組んでいます。すでに複数の省庁で事業や検討がはじまっています。
広島県三原市にデータセンター建設が明らかに
三原市の本郷産業団地に東京の企業がデータ処理の高速化と安定性を高めるため、大規模なデータセンターを建設することが明らかになりました。
この企業はアメリカのIT大手「グーグル」のグループ企業だということです。
三原市の本郷産業団地は、広島県と三原市が出資して27万5000平方メートルの敷地を一昨年に整備し、11月17日に結ばれた契約で土地の売却価格は58億円あまりとなっています。
また、データセンターの整備に伴う投資額は1000億円規模になると見込まれています。
本郷産業団地が選ばれた理由
広島県によると、本郷産業団地が選ばれた理由としてデータセンターは膨大な情報を取り扱うことから災害リスクが少ないほか、広島空港から車で15分ほどの場所にあり、高速道路のインターチェンジも近く、保守点検や機器更新のための交通アクセスの良さなどが評価されたということです。
この企業では段階的に施設の整備を進め、すべての施設が稼働するのは10年後の2033年ごろになる見込みだとしていて、今後、県は三原市と連携して必要な支援を行う方針です。
経済産業省、データセンターの地方分散化を支援
経済産業省は通信大手のソフトバンクが生成AIの開発などに活用するための新たなデータセンターを苫小牧市に整備する計画に対し、最大で300億円を補助すると発表しました。
国内のデータセンターは東京や大阪の周辺に集中していることから、地方への分散を進めることで大規模な災害に備えるとともに、膨大な電力を使用することによる電力負荷の地域的な偏りを解消する狙いがあります。
西村経済産業大臣は11月7日の閣議のあとの会見で「地方にある再生可能エネルギーの利用の促進にもつながるので、今後もデータセンターの地方への分散をしっかりと支援をしたい」と述べました。
データセンターの地方分散の流れに注目を
ChatGPTなど、目覚ましい進化を遂げているAI(人工知能)。大量のデータがやりとりされるため、通信環境に問題があると、ユーザーに大きなストレスをもたらすことになります。データのやりとりの基盤となる良好な通信環境を実現しなければなりません。一部の地域にデータセンターが集中することは、街の機能維持の観点から、都市の電力が逼迫することの可能性も懸念されています。リスク分散等の観点からも、データセンターの地方分散化は重要です。
データセンター建設による地域経済の活性化に繋がる可能性も考えられます。今後のデータセンター地方分散の流れには、大いに注目していきたいです。
2023.12.16
先日、アイルランドから韓国への貿易使節団が派遣された際に、アイルランドの開発会社LLUMCLOONエナジー社とSKグループの建設子会社との間で契約がとり交わされました。
アイリッシュタイムズによると両社はアイルランドで送電網への接続を行わず、ガス燃料電池を利用した「燃料電池を動力源とするデータセンター」を計画しているとのことです。
燃料電池とは
燃料電池とは、エネルギーを利用して電気を生成する装置のことを言います。
車載燃料(通常は水素)と酸素などの酸化剤との間の化学反応。特に、固体酸化物型燃料電池 (SOFC) は高温で動作し、効率が高いですが、通常は天然ガスなどの炭化水素燃料を使用します。
この化学エネルギーを電気エネルギーに変換し、将来的にはより環境に優しい燃料源の進歩により水素に移行する見通しです。
燃料電池の開発を進めるSKプラント
SK E&Cとして知られていたSKエコプラント社は、SKテレコムや SKハイニックスなどを所有する韓国のコングロマリットSK グループの建設子会社。サンノゼに拠点を置くブルーム・エナジー社と提携し、現在燃料電池と水素発電設備の開発を進めています。
重要な技術を提供するだけでなく、データセンターの建設において包括的な役割も担うことになります。
データセンターにおける燃料電池の可能性
データセンターの需要は増加しています。データセンターが使用するエネルギー、送電網への負担、データセンターの二酸化炭素排出量は、ここ数年、多くの政治的議論の原因となっています。
開発のスケジュールと運用能力に関する詳細はまだ明らかにされていませんが、この取り組みはアイルランドにおける将来のグリーンエネルギーソリューションに向けた大きな前進を示しています。
マイクロソフトやアマゾンなどの世界的なハイテク大手も同様に、自社のデータセンターに電力を供給するための燃料電池アプリケーションを検討しており、より持続可能なバックアップおよび主電源への業界全体の方向転換を示しています。
計画の成功は、実際に、ヨーロッパ全土および日本を含むその他の地域のデータセンターにおける燃料電池の将来の開発のベンチマークとなる可能性があります。
2023.11.15
今年7月に、マイクロソフトが新たな方針を発表しました。これまでマイクロソフトの生成AIの事業のデータセンターは主にアメリカと欧州に位置していましたが、日本の顧客に対するサービス品質の向上とデータ管理を強化するために、日本の企業の生成AI事業用途のデータセンターは、すべて日本国内に切り替えることを明らかにしたのです。
今回の方針の背景には、データセンターの拠点が海外にあることによって機密性や重要性の高い情報管理に対する懸念が、以前から指摘されていたことがあります。
マイクロソフトはこの懸念を解消するため、全てのデータのやりとりを日本国内で行うことにしました。
現在東日本に設置しているデータセンターを拡充し、生成AIの拠点に。これにより、機密性の高い情報の処理を国内だけで行えるようになります。また、生成AIの事業の拡大に合わせて、今後は西日本に置かれているデータセンターの拡充も検討するとしています。
マイクロソフトの動きは、NECも日本国内のデータセンターを利用した新サービスを開始するなど、業界全体にも影響を及ぼしています。
デジタル社会推進本部も認識
マイクロソフトの新たな方針は、自民党のデジタル社会推進本部でも認識されています。
AIの活用に関する作業チームの会合を開き、マイクロソフト側から新たな方針について説明を受けた平井元デジタル大臣は、「世界各国で研究開発がどんどん進んでおり、日本でも環境を与えるという意味では有力な選択肢が増えることになる」との見解を示しました。
また、作業チームの座長を務める平将明衆議院議員は、「データセンターが海外にあるとセキュリティの問題が出てくるので、国内に拠点が整備されることは懸念の一つを解消する重要な提案だ」と評価。
国内のデータセンター拡充によって、政府や各省庁による生成AIの活用における最大の懸念点が解消されることになります。今回の新しい方針の発表によって、今後の生成AIの発展にますます期待が高まっていくことになりそうです。
2023.10.28