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さくらインターネット積極姿勢、更なる成長に期待

前回の記事でも紹介したさくらインターネットが、今後5年間で最大1000億円を投じて能力を増強する方針です。

 

さくらインターネットの田中社長は、今後の経営戦略として

「来期は今期の2倍に当たる最大200人の人材を採用する。サーバーを保管するデータセンターの開発力と運用力を高める」と語っています。

 

積極姿勢の背景にはデータセンター需要の持続的な拡大があります。クラウドの裾野の広がりに加え、生成AIなど計算量の多い新技術の登場で、膨大な演算を効率的に行えるインフラを有するデータセンターが世界的に不足しています。

 

更に昨年11月「25年度末までにすべての技術要件を満たすこと」(河野デジタル相)という条件付きではあるものの、政府や地方自治体が共同で使う政府クラウドの基盤部分を提供する事業者に選ばれました。AWSジャパン、Googleクラウドジャパン、日本マイクロソフト、日本オラクルの米国勢4社に続く、日本勢としては初の参入となります。

 

日本企業初の政府クラウド認定の発表に、株式市場も反応。株価は発表直後から急押し。23年通年の値上がり率は東証プライムの上場銘柄で首位となりました。

 

日本拠点を持ち味に

 

さくらインターネットはデータセンターを通じてクラウドサービスに必要な仮想サーバーなどのインフラを貸し出していますが、海外IT大手とは異なり、運営する5ヵ所のデータセンターはすべて国内にあります。開発者全員が日本で働き、クラウドの機能を顧客の要望に合わせやすい小回りの良さが持ち味です。

 

政府クラウドを先行導入する省庁や自治体では、発行済みアカウント数175のうち9割超がAWSを選択しています。個人情報保護の観点から、さくらインターネット提供の「日の丸クラウド」の利用を望む自治体が一定数いるもようですが、増収効果は年間数十億円にとどまる見込み。

 

重要なのは政府クラウド参入で得られる知名度や信頼度の高まりといった間接的な効果です。生成AIを使って業務を効率化したい製造大手や訪日外国人向けの翻訳サービスに取り組む旅行大手など、新たな取引先の開拓につなげる方針です。

 

また、昨年北海道のデータセンターに生成AI向けクラウドサービス「高火力」の開発に3年間で130億円規模の投資を行うことを決定。米エヌビディア製高性能GPU「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載したサーバーを石狩データセンターに用意。大規模言語モデルなどの生成AIを中心とした利用を想定しており、今年1月に「高火力 PHY」の提供を開始しました。

 

さらに田中社長は中長期の見通しとして、「3~5年で現在の10倍を提供できなければ国内の需要を満たせない」として、日の丸クラウドの整備を後押しする経済産業省と連携し、エヌビディアに安定供給を求めています。

 

GPUの調達見通しに沿ってデータセンターの増強を続ける場合、単純計算で投資額は1000億円規模に。生成AI関連は利益率が高く、ここで生み出した利益を追加投資の原資とし、不足分は銀行借り入れなどを検討しています。

 

更なる成長を期待

 

競合の米IT大手も日本で攻勢を強めていますが、さくらインターネットは今後も攻めの姿勢を見せていくでしょう。日本拠点の地の利を生かし、更なる成長を期待したいと思います。

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2024.03.14

さくらインターネット、国内勢で初めて政府クラウドの提供事業者に認定

さくらインターネットは、日本最大規模の大容量・高速の通信回線を保有し、高度なセキュリティと堅牢な設備環境を備えたデータセンターを自社で運営するインターネットサービス事業者です。

 

同社が提供するIaaS型クラウドの「さくらのクラウド」が、2023年11月にデジタル庁が募集した「ガバメントクラウド整備のためのクラウドサービス」に認定されました。従来はAWS、Microsoft Azure、Google Cloud、Oracle Cloud Infrastructureという外資系事業者のみだったので、国産事業者としては初めての認定となります。また本認定は、2025年度末までに技術要件をすべて満たすことを前提とした条件付きです。

 

要件を満たすには、クラウドの機能を短期間で大幅に向上させる必要があり、高度なソフトウェアを開発できる優秀なIT人材の獲得がカギとなります。同社は補助金を主にIT人材の確保に充てる見通しで、2024年度に最大200人の人材を採用する方針です。データの保管や暗号化などの技術開発を加速します。

 

生成AI向けクラウドサービスを提供開始

 

またさくらインターネットは、政府クラウドの提供事業者に認定されたのを機に生成AI(人工知能)を活用する大企業の需要を開拓しています。

 

AIに関わるコンピューティングリソースを安定供給確保することは、日本のデジタル社会を発展させるために必要不可欠であるとして、生成AI向けクラウドサービス「高火力」の開発を決定。

 

「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を搭載した、生成AI向けクラウドサービス「高火力」の第一弾として、ベアメタルシリーズ「高火力 PHY(ファイ)」を2024年1月31日(水)より提供を開始。3年間で130億円規模の投資を行うことも決定しており、引き続きサービスを拡大する予定です。

 

今回提供を開始した「高火力 PHY」は、「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」をサーバー1台当たり8基搭載し、サーバー間の通信を200GbE×4本の回線で行うことが可能であるなど、大規模言語モデルなどの生成AIを中心とした利用を想定した仕様となっているそうです。また本サービスは、再生可能エネルギー電源100%で同社が運営する石狩データセンターでの提供を予定。これによりCO2排出量ゼロを実現しながら生成AIを開発することができるとしています。

 

業界から注目を集めるさくらインターネット

 

長らく外資系のみだった政府クラウドの事業者に選定されたことで注目を集めるさくらインターネット。田中邦裕社長は、「2025年度末までに機能を充足させる計画を提出し、それを完遂させる覚悟を持って取り組みます」とコメントしており、並々ならぬ決意が感じられます。同社の今後の展開に期待が高まります。

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2024.02.22

世界大手企業、日本でのデータセンター投資を加速

この年末年始に、Amazon、Google世界大手二社からデータセンターに関して、大きな発表がありましたので紹介します。

Amazonデータセンター事業日本に2兆円投資

クラウドサービス世界最大手の米Amazon・ウェブ・サービス(AWS)は、1月、2023〜27年の5年で日本に約2.3兆円を投資すると発表しました。クラウドの基幹設備であるデータセンターの増設や運営体制強化に充てるとのこと。生成AI(人工知能)の普及などに伴うデータ処理量の爆発的な増加を見越して投資を加速します。

AWS日本法人は19日に都内で記者会見を開いて投資方針を説明しました。日本で顧客のデータを処理・保管しているデータセンターの設備投資や運用費の総額は2011年から22年の12年間の累計が1兆5100億円でした。23年から27年までの5年間では2兆2600億円を投じる予定とのこと。

成長市場であるインド向けの30年までの投資計画(1兆560億ルピー、約1兆9000億円)を超える巨額投資となり、日本市場重視の姿勢を鮮明にしました。

会見でAWS日本法人の長崎忠雄社長は「日本の顧客のデータ利活用を支え、様々な経済波及効果を生み出し、日本の成長に貢献する」と語りました。

 

Googleのグループ企業産業団地「コスモパーク加太」にデータセンター建設

 

和歌山市の産業団地「コスモパーク加太」は、関西国際空港の建設の際に埋め立て用の土砂を採取した跡地に整備された252ヘクタールに及ぶ産業団地です。

和歌山県の土地開発公社が開発を進めたものの経済情勢の悪化によって、計画はすぐに頓挫し、一部の土地を県が借り上げ産業団地として企業誘致を進めましたが、87ヘクタールは売れ残り長年の課題となっています。

こうした中、この土地のおよそ4割余りにあたる37ヘクタール余りが、アメリカのIT大手Googleのグループ企業で、東京に本社がある「Ase合同会社」に売却されることになりました。

土地の売却額はあわせて59億4000万円だということです。

また、和歌山県によりますと、データの処理の高速化や安定性を高める「データセンター」が建設される方針だということですが、事業計画の詳細は明らかにされていません。

今後、土地の売却に向け契約の手続きを進めるとしています。

 

まとめ

 

生成AI向けクラウド需要急増をにらみ、米Microsoftも日本のデータセンター投資を急いでいます。マイクロソフトは昨年2月に西日本で複数のデータセンターを稼働させました。Googleも日本初のデータセンターを千葉県印西市に建設して昨年3月から稼働しています。

また地方での展開もいよいよ加速していくことが予想されますので、今後も動向をお伝えして参ります。

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2024.02.06

アルテリア・ネットワークス株式会社と株式会社アット東京が、日本初東京港を横断する通信用光ファイバーケーブル敷設を決定

2023年12月、アルテリア・ネットワークス株式会社は、株式会社アット東京と通信ケーブル設備の敷設および利用に関する協定を締結し、多くのIT企業が集積する豊洲・有明エリアと芝浦・品川エリア間に、日本で初めて東京港を横断する通信用光ファイバーケーブルの敷設を決定しました。

この決定の背景に何があるのでしょうか。

 

通信用光ファイバーケーブル敷設の背景

 

昨今の働き方改革や動画配信等のリッチコンテンツの隆盛、DXやAI、IoTの普及などにより、通信トラフィックは急増し続けており、膨大なデータが集積するデータセンターの根幹の根幹を支える光通信設備の増強が急務となっていることが背景にあります。また、社会インフラである通信ネットワークは、いかなる状況においても断線することが許されません。

このような社会的な需要に応えるため、東京港を横断する通信用光ファイバーケーブルの敷設を決定。島部に位置するデータセンターから橋梁を通さないルートを確保しました。また、環境保全にも配慮した弧状推進工法を用いていることも特徴です。

アット東京は、2024年7月を目標に既存データセンターに並ぶネットワーク接続拠点として芝浦・品川エリアに中央第3センターの新設を進めており、日本のみならずアジア・世界の主要な金融事業者やコンテンツプロバイダー、通信事業者らが集結する東京の情報インフラを支える立場で貢献していくとしています。

アルテリア・ネットワークは通信インフラの立場から、IT企業が集積する豊洲・有明エリアとアット東京が提供する芝浦・品川エリアのデータセンター間を最短経路で大容量かつ低遅延なケーブルルートで結び、柔軟かつ多様な通信サービスで先端技術産業や国際金融都市としての東京を支えていくとしています。

 

東京港横断ルートで周辺のデータセンターと接続する理由

 

今回の通信用光ファイバーケーブルの敷設では、豊洲・有明エリアと芝浦・品川エリアを陸路と海路の冗長ルートで接続することで、さらに可用性の高いネットワークインフラを利用できるとのこと。

既存の陸路のケーブルルートだけでは災害時の浸水や液状化のリスクがあり、有事の際にネットワークが寸断される可能性があります。東京港横断通信用光ファイバーケーブルはHDD工法を用いて一気通貫の地中管路で東京港を横断するため、高耐性な海底地中エリアを船のアンカー等によるケーブルの損傷を防ぎながら、陸路との異ルートを確保した高速大容量通信を担保することができるとしています。

 

データセンター事業に対する、アルテリア・ネットワークの戦略的取り組み

 

千葉県印西エリアは地盤の強固さ、東京および成田とのアクセス性の高さに加えて、茨城県県北および千葉県南房総の海底ケーブル陸揚局との接続性も高いことから、データセンター運用に好適とされてきました。
2021年、アルテリア・ネットワークは、MCデジタル・リアルティ株式会社が千葉県印西エリアで建設中の新データセンター「NRT10」において、最大100Gbpsの専用線設備を設置すると発表。今回の東京港を横断する通信用光ファイバーケーブルの敷設は、アルテリア・ネットワークが以前から取り組んできた戦略に裏付けられたものだといえ、今後も更に推進していくと期待されます。

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2024.02.01

NTT、東京電力二社による蓄電池の共同開発に期待

NTTと東京電力が共同で新会社を設立し、データセンター事業と蓄電所事業の共同開発を行うことに合意したことは前回もお伝えしました。

今回は特に蓄電所事業について紹介していきます。

 

蓄電所事業における見通し

 

NTTアノードエナジーと東京電力ホールディングスは、嬬恋蓄電所で蓄電池の活用領域の拡大、低コスト化を目指すことに合意。この蓄電所は、リチウムイオン電池を使用し、容量は9.3MWh、出力は2MWになる予定です。

 

今後、両社は、電力及び通信のアセットやノウハウを活用し、カーボンニュートラル等、今後ますます高度化する社会ニーズにお応えするなど、新たな価値の創造と持続可能な社会の担い手となることを目指し事業展開を進めていく見通しになっています。

では、なぜ蓄電池の開発なのでしょうか。

 

データセンター事業における蓄電池の重要性

 

データセンターは膨大な電力を消費するため、再生可能エネルギーの活用が急務ですが、膨大な電力の安定供給がネックとなります。再生可能エネルギーは、天候や時間帯によって発電量が変動するためです。短時間であればUPS(無停電電源装置)や非常用発電機でカバーできますが、頻発には耐えられませんし、データセンターサービスとして致命的な欠陥となります。

蓄電池を使用することで、発電量の変動に対応することができるため、再生可能エネルギーの安定的な供給が可能になり、データセンター事業において環境に優しいエネルギーの利用が促進されると期待されています。これまでも蓄電池活用は検討されてきましたが、データセンターで活用するには、蓄電可能電力量とコストの両面から実装が進みませんでした。

 

蓄電池の技術、二社の取り組みに期待

 

蓄電池の技術は、産業界全体で非常に重要なテーマになっていますが、特にデータセンター業界においては重要かつ急務だといえます。

そのテーマへの道筋が、NTTと東京電力による新会社設立によってMW単位の大容量蓄電池の開発とコストダウンが進み、データセンター業界で普及していくことを期待していきたいと思います。

 

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2024.01.13

NTTと東電が協業事業における新会社設立へ

東京電力ホールディングスとNTTが、2023年12月19日、協業事業における2つの新たな取り組みを発表しました。

 

データセンター事業

 

まずはデータセンター事業です。NTTデータグループ、NTTグローバルデータセンター、東京電力パワーグリッドは、千葉県印西白井エリアにおいて、データセンターの共同開発および運用を目的とした新会社の設立に向けて合意しました。2023年度内に特別目的会社を設立し、電力容量50MWのデータセンターの開発を進め、2026年度下期の開設・サービス開始を目指すということです。

 

生成AIの普及などでデータセンターへの需要は高まることが期待されており、両社の持つノウハウを活かし、カーボンニュートラルの実現なども踏まえた先進的なデータセンターモデルを目指す方針を示しています。

 

蓄電所立ち上げ

 

2つ目は東電ホールディングスおよびNTTアノードエナジーによる、蓄電所事業です。群馬県吾妻郡嬬恋村に、合同会社「嬬恋蓄電所合同会社」を11月に設立しました。今後、2025年の事業開始を目指し、蓄電所構築等の準備を進めます。

 

2050年のカーボンニュートラル実現に向けて再生可能エネルギーの導入・活用が進む中、それに伴い必要となる調整力の確保や電力系統の増強対策等、電力システムにおける課題が顕在化しています。

これらの課題に対しては、これまでも東電ホールディングスおよびNTTアノードエナジー双方で蓄電池を活用した取り組みを行なってきました。

両社でこれまで培ってきたノウハウを持ち寄り、今後必要性が高まる蓄電所事業を協業することで蓄電池の活用領域拡大やコスト低減を進め、さらなる蓄電所事業の発展を目指すということです。

 

今後も動向に注目を

 

2020年のデータセンターの消費電力量は、総消費電力量(9135億kWh)の2.1%を占めており、2018年の約1.4%から拡大しています。また、国際環境経済研究所の報告書によると、計算負荷の増大傾向が将来にわたって継続する場合、2030年に国内で90TWhになるとの見通しが出されています。

拡大する電力需要を、カーボンニュートラルで満たしていくという難題をクリアするうえで、日本最大のデータデンター事業者でもあるNTTと東京電力による新会社設立は、業界全体からの注目を集めています。

日本のデータセンター市場を語るうえで重要な話題でもあるので、今後も動向を追っていきたいと思います。

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2024.01.06

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