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日本におけるStargate Projectの起点、堺で始動

ソフトバンクグループとOpenAIが進める大規模AIインフラ構築プロジェクト「Stargate Project」。その国内展開の中心として注目されているのが、シャープが保有していた堺市の旧液晶パネル工場の再活用です。ソフトバンクはこの工場の一部を約1000億円で取得し、最先端のAIデータセンターに転用する計画を進めています。

  

この施設は、東京の既存拠点、北海道で建設中の施設に続く3拠点目であり、電力容量150メガワットという国内最大級の規模を誇ります。2026年の稼働を目指し、将来的には250メガワットまで拡張する方針が示されています。堺の立地やインフラ条件も整っており、長期的なデータセンター運営の安定性が期待されているところです。

  

SB OpenAI Japanによる国産AIの開発と普及

  

プロジェクトの中核を担うのが、20252月にソフトバンクとOpenAIが共同設立した「SB OpenAI Japan」。この合弁会社では、日本語に特化した大規模言語モデル(LLM)の開発や、企業向けの生成AIサービス「クリスタル・インテリジェンス」の提供を目指しています。

  

堺のデータセンターでは、OpenAIが提供する基盤モデルをもとに、GPUを活用したAIエージェントの運用が予定されています。人事やマーケティングといった企業の業務に特化し、それぞれのニーズに応じたAIソリューションをカスタマイズ提供していくとしています。

  

こうした取り組みによって、日本企業のデジタル変革が一気に加速する可能性があります。

  

巨額投資と産業融合による未来創出

  

ソフトバンクはこのAIインフラ構築において、GPU10万基を必要とする規模の開発を計画しており、単純計算で1兆円に迫る巨額投資となる可能性があります。GPUの供給は米NVIDIAStargate Projectからも行われる見通しです。

  

ソフトバンク宮川社長は「堺をAIと既存産業の融合拠点とし、新たなビジネスモデルや課題解決の実験場とする」と語っており、単なるデータセンターとしてだけでなく、国内外におけるAI産業の進化を牽引する起点となることが期待されています。

  

加えて、産業全体の生産性向上や人手不足への対策としても、極めて重要なステップとなりそうです。

 

TOPICS & NEWS

2025.04.30

AIの進化と推論フェーズへの移行

NVIDIA20253月、年次開発者会議「GTC」を開催し、AIの進化が「学習」から「推論」へとシフトしている現状を背景に、推論処理に特化した新ソフトウェア「Dynamo」を発表しました。

  

これまで学習向け技術に強みを持っていた同社は、推論においても自社のハードウェアとソフトウェアが不可欠であると強調。CEOのジェンスン・ファン氏は、推論処理の高速化がAIサービスの質を左右する鍵であると訴えました。

  

新ソフトウェア「Dynamo」の特徴

  

Dynamoはオープンソースで提供され、複数のGPUを効率的に連携させることで推論処理を高速化します。最新のGPUアーキテクチャ「Blackwell」と組み合わせることで、中国のAI企業DeepSeekAIモデル「R1」の処理速度を従来比30倍にまで引き上げることが可能だということです。

  

中核的な特徴は「細分化サービング」と呼ばれる手法で、推論処理を「プリフィル」と「デコード」の2フェーズに分離して別々のGPUに割り当て、処理効率を大幅に改善します。

  

また、「KVキャッシュ」と呼ばれる技術を活用し、過去のトークン情報を記憶・再利用することで計算量を削減。Dynamoに搭載された「KVキャッシュマネージャ」により、GPUメモリの限界を超えないように効率的なキャッシュ運用が可能です。

  

トレードオフ問題とハードウェアの進化

  

ファンCEOは基調講演で、推論における「1秒あたりの全体トークン数(処理量)」と「ユーザーごとのトークン数(速度)」のトレードオフ関係を紹介。応答速度を速めればユーザー数が制限され、ユーザー数を増やせば応答遅延が発生するというジレンマが浮き彫りとなっています。

  

これに対しNVIDIAは、ハードウェア強化によってこのトレードオフを打破する戦略を掲げました。新たに発表された「Blackwell」は従来の「Hopper」と比較して最大25倍の処理能力を持ち、質と量の両立を可能にします。

  

今後も堅調なAI関連データセンター投資

 

AIの利用フェーズが推論中心へと変化する中で、演算処理の需要は飛躍的に増加しています。NVIDIAは「Blackwell」に続き「Rubin」や「Feynman」など、さらに高性能なGPUの開発計画を明らかにしており、それらに対応したソフトウェア基盤としてDynamoも進化しています。

  

このような高密度・高性能なAI処理を支えるためには、分散型かつ大規模な計算環境が不可欠です。すなわち、AIエージェントや生成AIの拡大にともない、それを支えるインフラとしてのデータセンターへの投資は今後も堅調に推移すると見込まれます。

TOPICS & NEWS

2025.04.22