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オラクルがDC投資を強化、AIブームを背景にメガクラウド勢も加速

世界のデジタルインフラ市場は、AIブームとクラウド需要の高まりを受けて急速に拡大しています。特にアジア太平洋地域では、データセンター(DC)関連の大型取引が相次ぎ、20259月だけで総額8,000億円を超える案件が成立しました。米アマゾンやグーグル、メタなどの米テック大手が次々と投資を進めるなか、AIおよびクラウド基盤を担うインフラの重要性は一段と高まっています。

  

オラクル、44兆円規模のAIクラウド契約で攻勢強化

  

米オラクルが発表した最新の取り組みは、業界関係者の大きな注目を集めています。同社は20259月、米オープンAIとの間で約44兆円(3000億ドル)規模のクラウド供給契約を締結しました。期間は5年間にわたり、オープンAIが開発・運用する生成AIの膨大な学習・推論処理を、オラクルのクラウド基盤が支える形となります。

  

両社はすでに米国内で4.5ギガワット相当の電力容量を持つDC開発を進めており、ソフトバンクグループなどが参画する「スターゲート計画」の一翼を担っています。

  

オラクルはAI需要の急拡大を受け、データセンター投資を急ピッチで拡大しています。202568月期には契約残高が前期比3.3倍の4,550億ドルに達し、「3つの主要顧客と数十億ドル規模の契約を複数締結した」と発表しました。さらに、米J.P.モルガンと三菱UFJフィナンシャル・グループが主導する約56,400億円のデータセンター融資パッケージが動き出し、ウィスコンシン州とテキサス州での大規模施設建設が進む見通しです。これらの拠点では、オープンAI向けの運用が想定されており、オラクルのAIインフラ戦略の中核を担うとみられます。

  

アジア市場でも拡大、AI社会を支える新たなインフラ競争へ

  

一方で、アジア市場でもメガクラウドベンダーの攻勢が続いています。ベイン・キャピタルが保有していた中国のデータセンターポートフォリオが約5,880億円で売却され、シンガポール政府系ファンドGICやアブダビ投資庁がマレーシアのヴァンテージ・データ・センターズに計2,300億円超を出資しました。

  

アジア全体では、アマゾンやグーグルをはじめとする米大手が年間23兆円規模のデータセンター投資を行っており、AI・クラウドの成長を支えるインフラ基盤の確立が競争の焦点となっています。

  

今後、データセンターは単なるサーバー拠点ではなく、「AI社会を支える新しい社会インフラ」としての役割を強めていくと考えられます。電力効率化や再生可能エネルギーの導入を進める企業が、持続可能な成長の鍵を握るでしょう。AI・クラウド時代を支える基盤づくりにおいて、オラクルをはじめとするグローバルプレイヤーの動向からは、今後も目が離せません。

TOPICS & NEWS

2025.10.28

オープンAIもデータセンター投資へ―AI時代のインフラ戦略が変わる

生成AIの急速な普及に伴い、AIモデルの開発・運用に必要な計算資源への需要が爆発的に高まっています。そうした中、オープンAIが自社でデータセンター(DC)投資を進めるとの報道が注目を集めています。これは、AIの開発体制だけでなく、ITインフラの主導権が変化しつつあることを示す動きといえるでしょう。

 

背景には、NVIDIAによるオープンAIへの戦略的投資があります。GPUの供給を握るNVIDIAは、AI需要の拡大に伴う演算能力確保のため、AI開発企業とより密接な関係を築こうとしています。その延長線上で、オープンAIが自社DCを持つことで、モデル開発から運用までの最適化を図る狙いがあるとみられます。

 

メガクラウドからAI企業へ、主導権の移行

 

これまでDCは、AmazonAWS)、MicrosoftAzure)、Google Cloudといったメガクラウドベンダーが主導してきました。これらの企業は、それぞれ自社仕様のサーバー設計や冷却技術を採用し、世界各地で数百MW規模のキャンパスを展開しています。たとえば、AWSはバージニア北部やシンガポール、Microsoftはアイルランドや日本での自社建設を拡大中です。Googleも欧州や米国内での拡張を継続しています。

 

一方で、オープンAIのようなAIモデル開発企業が自らDCを保有する動きは新しい潮流です。これまではクラウドベンダーが提供する環境に依存してきましたが、AIモデルの進化に伴い、高密度計算や冷却効率など、AI特化型設計を求めるニーズが高まっています。今後は、メガクラウドの仕様ではなく、オープンAIが求めるスペックが優先されるケースも増えると考えられます。

 

「演算主権」の確立が次の競争軸に

 

クラウドベンダーの多くは、初期段階ではリースや共同運営を活用し、成熟段階で自社設計の拠点を増設するハイブリッド型戦略を採っています。オープンAIもこの流れを踏まえ、自社DCによって可用性や効率性、冷却性能などを最適化しようとしている可能性が高いです。これは単なるインフラ投資ではなく、AI競争力を左右する「演算主権」の確立に向けた一歩といえます。

 

中国勢を中心とした低価格AIが台頭する中で、オープンAIは独自の技術基盤を強化し、攻勢を強めています。AIモデルの性能だけでなく、その動かす基盤にまで踏み込む姿勢は、今後の業界構造を大きく変えるでしょう。データセンター投資の主役がクラウドからAI企業へと移りつつある今、次世代インフラの在り方に注目が集まっています。

 

TOPICS & NEWS

2025.10.21