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ソフトバンク、海底ケーブル開通で広がるAI基盤の未来

ソフトバンクが進めてきたAIインフラ整備において、大きな節目が近づいています。苫小牧と糸島を結ぶ国際海底ケーブルが2028年に開通予定となり、日本のデジタル基盤を強化する動きが本格化してきました。苫小牧に続いて旭川でもAI対応型データセンター(以下DC)の建設計画が進められており、地域分散と国際接続を両立させる布陣が整いつつあります。今回の動きは、ソフトバンクが長年温めてきたAI戦略の成果を目に見える形で示すものでもあります。 

  

苫小牧から世界へ直結する海底ケーブル

  

 苫小牧の「Core Brain DC」は、ソフトバンクが描くAI社会基盤の中核に位置するものです。その強みをさらに後押しするのが、2028年に運用開始予定の国際海底ケーブルです。苫小牧から北米やアジアへの直接接続が実現すれば、AI学習や推論に必要な膨大なデータを世界と迅速にやり取りできる環境が整います。国内AI基盤の国際競争力を一段と高める要素となるでしょう。

  

また、九州・糸島からのケーブルも2028年下期に開通予定であり、北海道と九州という二つの拠点を結ぶ強固な通信ネットワークが形成されます。これにより、災害リスクの分散、通信遅延の低減、国際回線の安定確保が可能になり、日本全体のデータ通信基盤の信頼性が高まります。さらに、国内外のAI企業にとっても、日本を拠点にした高性能データ処理環境が魅力的な選択肢として浮上することになります。

  

旭川DCが加える分散戦略の厚み

  

 旭川で計画されている新DCは、苫小牧の国際接続機能を補完する役割を持ちます。内陸に位置する旭川は津波リスクが低く、災害に強い立地として注目されています。苫小牧が大規模学習を担うのに対し、旭川は推論や地域データ処理を担い、役割分担による効率化を図る構想です。さらに北海道の再生可能エネルギーを活用すれば、環境配慮型のグリーンDCとしての価値も高まるでしょう。これにより、ソフトバンクのDCネットワークは単なるデータ処理施設に留まらず、持続可能性と安全性を兼ね備えた次世代型インフラへと進化します。

  

苫小牧と糸島を結ぶ海底ケーブルの開通は、日本のデータ基盤に新たな段階をもたらす大きな一歩です。旭川を含む分散型戦略と組み合わせることで、ソフトバンクは国内外での競争力を一層高め、日本のAIインフラの未来を着実に切り拓いていくことになるでしょう。今回の開通を契機に、国内外のAI産業の拠点として日本がさらに注目されることが期待されます。

TOPICS & NEWS

2025.08.27

ポスト印西を狙う相模原市 ― データセンター誘致の新たな舞台

首都圏におけるデータセンター集積地として長らく注目を集めてきた千葉県印西市は、豊富な土地と都心からのアクセスの良さを背景に、大手事業者の進出が相次いできました。しかし近年は、電力供給の制約が顕著となり、新規立地にとって大きな課題となっています。さらに現市長がデータセンター誘致に積極的な姿勢を示していないこともあり、かつてのような最有力候補地とは言い難い状況にあります。このため、業界内ではポスト印西を模索する動きが広がっています。

 

相模原市が打ち出す積極戦略

 

その候補地として存在感を高めつつあるのが神奈川県相模原市です。同市はリニア中央新幹線の開業により橋本エリアが注目され、過去にはデータセンターが誘致された実績を持ちます。現在も市として立地促進に強い意欲を示しており、令和76月定例会での代表質問に対して市側は「データセンター立地には安定的な電力供給体制が不可欠」と強調。東京電力パワーグリッドと連携し、高圧受電設備の整備や供給ルートの強化について協議を進めていることを明らかにしました。さらに再生可能エネルギーの活用可能性についても検討を行い、持続可能な都市インフラを構築する姿勢を示しています。

 

誘致の有力候補地とされる麻溝台・新磯野の「A and A地区」は、厚木基地に近接するという制約がある一方で、東京からの距離の近さという大きな利点を備えています。物流施設の開発を手掛けるグッドマンなど有力企業が関心を寄せているとの情報もあり、市場からの注目度は高まっています。

 

電力確保と今後の展望

 

もっとも、相模原市が十分な電力余力を確保できるかどうかについては、なお不透明な部分が残っています。過去に橋本エリアでの誘致後、電力枯渇が課題となった経緯もあり、事業者は慎重な見極めを迫られることになるでしょう。ただ、市が早期から電力事業者と協議を進めている点や、再エネ活用を重視する姿勢は、長期的な安心材料といえます。

 

生成AIやクラウドの利用拡大を背景に、国内のデータセンター需要は急速に拡大しています。印西における受け入れ余力の限界を背景に、相模原市への関心が高まっている現状は、産業構造の転換を象徴する動きといえます。今後、電力供給体制や周辺インフラの整備がどこまで進むかによって、相模原が「ポスト印西」としての地位を確立できるかが決まることになりそうです。

TOPICS & NEWS

2025.08.26