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2025.07.21
近年、データセンター(DC)事業をめぐって、「地方分散化」が注目を集めています。政府や東京電力は、電力とデータ通信を連携させる「ワットビット連携」などを掲げ、DCの都市集中からの脱却を促そうとしています。背景には、地震や災害リスクの回避、地域経済の活性化といった目的がありますが、実は理想とはやや異なります。
ハイパースケーラーの経済合理性という壁
最大の壁となっているのは、外資系ハイパースケーラーの動向。そもそも、現在のDC需要をけん引しているのは、GoogleやAmazonといった海外の大手クラウド事業者たちです。彼らは経済合理性を最優先に立地を判断しており、「DCや通信網の集積地に進出することこそメリットがある」という認識が強くあります。そのため、地方への分散には消極的。
また、ワットビット連携を支えるには、IX(インターネットエクスチェンジ)や海底ケーブルの陸揚げ地といった、インターネットインフラの整備が不可欠です。
ある政府関係者も「経済合理性に基づいたままでは分散は進まない」と語るように、地方分散化には単なるインフラ整備を超えた戦略が求められています。
カギを握るのは政府の戦略と国内事業者への支援
地方へのDC立地を進める上で、比較的積極的なのが日系のデータセンター事業者です。日本企業は社会的使命や国内市場の特性を踏まえ、地域への展開に意欲を見せることが多々あります。しかし、たとえ補助金や助成制度を活用して地方DCを立ち上げたとしても、運営にかかるランニングコストを賄うだけの顧客獲得が見込めなければ、継続的な事業運営ができません。海外の大手クラウド事業者は地方DCを利用しませんので、日経のデータセンター事業者が地方でのDC新設を意思決定することは、極めて難しいのです。
このような現状を踏まえると、今後のカギは「政府のリーダーシップ」と「日系事業者への支援強化」にあると言えます。経済合理性のみに任せた市場原理では、分散化は進みません。
むしろ、政府がある程度、戦略的に立地を指定するなど、強い意思をもって誘導する必要があるのではないでしょうか。また、単発的な補助にとどまらず、長期にわたる運営支援や税制優遇など、実効性のある制度設計も欠かせません。地方DCを政府が大規模に利用することも有効でしょう。
果たして政府は、経済の論理を超えてまで地方分散化を進める覚悟があるのでしょうか。そして、日系企業はその流れにどう応えるのでしょう。データセンターを巡る地域戦略は、これからが正念場を迎えています。
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