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今回はまず、国内企業のデータセンター事業の現状、今後の意向を見ていきたいと思います。
NTT
今後5年間で1・5兆円以上をかけて、データセンターを増やす意向を示しています。最も増やす場所はインドで、2025年度までに現在の12か所から24か所程度に増やす予定で、ここには海外IT大手の進出や人口増など、潜在的な需要が見込まれます。北米にも14か所から23か所に増やしたいと述べています。
ソフトバンク
ソフトバンク株式会社は、米半導体大手エヌビディアと共同で、生成型人工知能と5G/6Gアプリケーションのプラットフォームを構築して、日本国内の新しいAIデータセンターに導入することを目指しています。
このアプリケーションは、エヌビディアのチップ技術に基づいています。そしてソフトバンクは、コスト削減とエネルギー効率の向上を図るため、マルチテナント型の共通サーバープラットフォーム上で生成AIと無線アプリケーションをホストできるデータセンターの構築を計画中です。
関西電力
関西電力(KEPCO)は、米国のデータセンター事業者 CyrusOneと共同で、900MWの事業規模を達成するという野心的な目標を掲げ、日本でのデータセンター開発に取り組みを始めています。CyrusOne KEPの合弁会社は、ハイパースケールプラットフォーム企業の需要に対応するために特別に調整された新しいデータセンターの開発に焦点を当て、データセンターのインフラをより広範な電力網と連携させることで、この業界における回復力、効率、スマートな開発を強化することを目指します。
このように日本国内企業のデータセンター業界は活発化して、プラス成長を遂げているようです。
では、この背景には、なにがあるのでしょうか。
データセンター業界活発化の背景
その背景には、生成AI(人工知能)など、デジタル化の進行があります。データに基づいて意思決定するデータ・ドリブンの社会になれば、データが加速度的に蓄積されていきます。
データセンター事業に注力するNTTの島田明社長は、
「30年以降に、(電子の代わりに)光を使う半導体を開発したい。研究開発に年間1000億円を投資していく。手始めに、光を使った関連部品の製造を25年以降に始める予定だ。通信機器やサーバーに組み込むほか、より一般的な電子機器への応用も目指す。」
と、データセンター事業が、半導体開発と密接にリンクしていることを示唆しています。
光を使った半導体であれば、電力消費が圧倒的に少なくなるので、持続可能性の観点からも時代に合っていると言えます。
ソフトバンクの宮川潤一社長は、
「AIと共存する時代に入りデータ処理と、電力需要が急速に増加する。日本でのデジタル化社会を支えるための次世代社会インフラの提供を目指す」
としています。
生成AI(人工知能)の発達の目覚ましい今日。成長戦略について展開するサービスを高度化させる、転換期にきているのかもしれません。
2023.08.10
クラウドの利用が加速する中にあって、一度はクラウドに切り出した社内システムをオンプレミスに戻す、いわゆる“オンプレ回帰”の動きが顕在化していると言われています。
昨年には、楽天グループが、オンプレ回帰を決断しました。プライベートクラウド「One Cloud」の環境を拡充し、グループ企業の各種事業が用いるIT基盤の統合を進めています。現在、パブリッククラウドで稼働させている多数のシステムは、原則としてOne Cloudへのシフト。グループ全社でIT基盤のプライベートクラウドへの集約を進めてコスト効率を高めるほか、IT基盤のノウハウを蓄積し安定稼働や、セキュリティ強化につなげるとしています。
プライベートクラウドは、新たに参入を計画する法人向けITサービスの基盤にも活用されます。計画するのは本人確認に使うeKYCやWebサイトのアクセス分析、電子決済の機能などです。いずれもグループの事業で使うために開発した技術で、従量制のパブリッククラウドサービスとして外販する方向で準備を進めています。
クラウドファーストが叫ばれる中、オンプレミスでサーバーを導入する機会は多くの企業で確実に減っていると言われています。ただし、サーバー市場に目を転じれば、いまだ動きは堅調。一見すると矛盾するようですが、この背景にはいったい何があるのでしょうか。
“オンプレ回帰”の背景
サーバー市場は22年度も対前年比1~2割増と好調に推移している様子です。
サーバー仮想化が流行り始めた2000年代前半も、サーバー統合を通じて、サーバーは売れなくなると言われました。しかし、現実はそうなることはなく、仮想化によりサーバー調達の容易性が増し、逆に各種システム導入が活発化したことで、より多くのサーバーが求められるようになりました。
現在、DXを追い風にIT投資も活発化し、従来なかったシステム活用も広がっています。クラウドが必要とするサーバーリソースの急増という状況からも、サーバー市場の拡大はむしろ自然と言えます。
一方で、一般企業のオンプレでのサーバー利用がここにきて盛り返している背景には、実際に使ってみて、クラウドに対する誤解が解けていることがあります。振り返ればクラウドは、極めて低廉なコストでのリソース利用や、運用の外部への切り出しによる作業負荷の軽減で大きな期待を集めました。
しかし、現実は、コスト面でクラウドの特性を理解しないまま利用を進めた結果、予想外の高額な料金が請求されるケースも少なくありません。
また、運用面でも、ハードのお守りこそなくなりましたがシステム自体の運用は依然として残ります。クラウドの管理作業にはオンプレとは異なる知見が必要で、多くの企業がオンプレとクラウドの双方にシステムを抱えている現状では、二重管理がどうしても発生してしまいます。これによる負担は多忙なIT部門にとって決して小さくありません。
セキュリティの問題もあります。機密性が高いデータを扱う既存のレガシーシステムはパブリッククラウド上で運用できないといった理由でオンプレミスでの運用を廃止できず、その結果としてIT運用が複雑化することによる運用管理負荷が増加するといった問題が生じています。
これらの“現実”への理解が進んだことで、一度はクラウドに切り出したシステムについて、「合わない」と判断したものから順次オンプレに戻し、クラウドと併存させるスタイルへの揺り戻しが起こっています。
現在進行形でオンプレ回帰は進みます。ただ、クラウドを経験した企業はその良さも知っています。そうした企業が目指すべきIT基盤は、従来型のオンプレでよいのでしょうか。
現状の“オンプレ回帰”のアプローチは2通り
現状のオンプレ回帰のアプローチは2通りあります。サーバー関連はクラウドに残しつつ、DXで鍵となるデータのみをオンプレに戻すやり方が1つ。システム全体をオンプレに戻すのがもう1つです。問題となるのは後者の方法です。
コスト面だけを重視したSPOF(単一障害点)が存在する設計の3Tier型(サーバー群と共有ストレージをネットワークファブリックで接続するシステム形態)でないことだけは明白。ただし、全ての提案において3Tier型がよくないと言っているわけではなく、適切な課題への対策などを考慮した上でも、大規模になるほど複雑さが増し、見直しの都度、サーバー、ストレージ、ネットワークの担当者による議論で長いリードタイムが生じたり、ハードの世代などの問題で高額なリプレースコストが生じたりといった状況には誰も戻りたくはないと考えています。
目指すべきは、やはりクラウドライクな仮想化基盤の採用です。その観点から今、注目を集めているのが、クラウドライクなシステム基盤を実現するHCI(Hyper Converged Infrastructure)。このHCIが評価を大きく高めているようです。事前に検証済みのサーバーとストレージ、ネットワークの機能をソフトウェアで実装して1つの筐体に収め、仮想化ミドルウェアと一体で提供されるHCIは、IT基盤の構成を格段にシンプル化します。専門的な知識が乏しくともノードの追加で簡単にリソースを拡充でき、クラウドに近い拡張性を実現します。
大規模になるにつれ複雑さを増す3Tier構成に対し、シンプルな構成を保てるHCIは、今後も注目を集めることになりそうです。
2023.07.25
大阪を中心とした関西圏は、データセンター事業としては、アジア・パシフィック最大規模である首都圏に次いで急速に成長している市場です。企業のDX(デジタル・トランスフォーメーション)が進む中、地元企業だけでなく、国内外企業から幅広い需要があります。
データセンター新設ラッシュ
2019年、NTTコミュニケーションズ(NTT Com:NTTコム)が大阪府茨木市に関西地域で最大のデータセンターを開設。
2023年2月には、三菱商事とデジタル・リアルティのデータセンター合弁会社であるMCデジタル・リアルティが、大阪で新たなデータセンターを開設。
この2カ月間で、大阪エリアではアジアの不動産企業であるESR Groupが19.2MWのデータセンターの建設を開始。そして株式会社オプテージが2026年1月に開業予定の14階建てのキャリアニュートラルデータセンターの建設計画を発表しています。
関西電力、データセンター開発で米サライスワンと新会社
データセンターを開発・運用する米サイラスワンは、日本のエネルギー会社である関西電力株式会社(KEPCO)と提携し、日本国内における新規データセンター開発に取り組んでいます。
5月22日、関西電力は、サイラスワンと、日本でデータセンター事業を展開する合弁会社を設立すると発表。今後10年間で少なくとも1兆円(70億ドル)を投資し、電力消費を示す「受電容量」が1カ所あたり5万キロワット以上の「ハイパースケール」と呼ばれる大規模データセンターを関西圏や首都圏で開発・運用、夏にも活動を始める予定です。
10年後には合計の受電容量で90万キロワット以上と、ほぼ原子力発電所1基分の電力を使用する事業規模を目指します。
新会社の代表取締役は両社から派遣。関西電力グループがデータセンターへの電力供給や不動産取得などに関するノウハウ、サイラスワンはデータセンターの顧客となるIT(情報技術)企業への営業力など、両社の強みを持ち寄ります。既に1号案件の建設地は関西に確保しており早期に着工する方針です。
関西圏のデータセンター業界に注目を
関西圏のデータセンターは新設ラッシュが続き、その需要は、今後も一層高まると想定されています。関西電力のハイパースケールデータセンター運用によって、関西圏のデータセンター業界の動向に、更に注目が集まることになりそうです。
2023.06.08
デジタル技術への依存度が高まる中、データセンター業界は目覚ましい成長を遂げており、経済の不確実性が続く中でも比較的影響を受けず、強力な代替的資産クラスとして投資家や金融機関からの注目を集めています。
市場規模の拡大
Global Market Insights Inc.が発行したレポートによると、世界のクラウドデータセンター市場は、2022年に200億米ドルと推定され、2023年から2032年にかけて10%のCAGR(年平均成長率)で進行し、2032年までに700億米ドルの評価額を突破すると予測されています。
クラウドコンピューティング技術の開発を促進する取り組みが、市場拡大の主な要因になると予測。クラウドコンピューティングを活用したプロジェクトでは、自動的な問題解決、エンドツーエンドのセキュリティ管理、実際のデータ使用量に基づく予算編成など、統合的な管理が可能です。
電子行政の実践に向けたクラウドコンピューティングインフラの改善は、インドを含むいくつかの国の政府にとって優先事項となっています。また、これらの政府は、デジタル化を進めるためのスキルセットを拡充するプロジェクトを立ち上げ。
導入モデルによると、パブリッククラウドデータセンターの市場は5年に2022億米ドル以上と評価され、2032年まで収益性の高い成長が見込まれています。
目覚ましい成長、日本でも
日本の通信会社である日本電信電話(NTT)は、今後5年間で8兆円(590億ドル)をデータセンター、人工知能、その他の “成長分野” に投資する計画を発表しました。
そのうち、少なくとも1.5兆円(110億ドル)は、データセンターの拡張やアップグレードに充てるとして、AIやロボットを含むデジタルビジネスには、少なくとも3兆円(220億ドル)が投じられます。
同社は、この支出により、2028年3月期の利払い、税引き、減価償却前利益が、前年度比で20%程度上昇する見込みであると述べ、これはつまり、約4兆円(294億ドル)の利益を意味します。
島田明社長は記者会見の中で、「成長分野に投資し、キャッシュ創出力を拡大する」と述べたと日経新聞は報じています。
このような市場拡大、成長予測にもかかわらず、その一方で、重くのしかかる課題もあります。
ウクライナ戦争、労働力不足、重くのしかかる課題
サプライチェーンの制約は、パンデミックのピークから緩和されたものの、完全には解消されておらず、欧州やアジア太平洋地域の地政学的緊張のためにさらに再燃するリスクがあります。
例えば、ウクライナ戦争により、半導体製造に不可欠なネオンの供給が制限されています。この供給圧力により生産に遅れが出ています。それは、労働力の不足にも起因しており、データセンター分野では特に深刻で、そのスキル不足、人材不足についての問題が顕著になっています。
事業者は、人材を見つけるのが難しいだけでなく、人材を確保するのにも苦労しており、熾烈な労働市場の中で多くの人が同業他社に採用されていることが報告されています。
データセンターの成長を妨げるもう一つの課題は、より広範な世界経済の問題です。データセンターは、建設や買収の資金を借入金に依存しているため、今後12〜24ヶ月間に借入金残高が最も増加すると予想される資産クラスの上位3つに含まれています。金利が高騰していることから、利幅が縮小。金利がさらに上昇し、経済が不安定になれば、企業が大規模な取引を行うことが難しくなる可能性があります。
市場拡大は続く、各国の取り組みに期待
課題は多々ありながらも、データセンター業界の市場規模は拡大し続けています。課題と向き合いながら、どのように更なる拡大を進めていくのか、世界各国の取り組みに関心が高まっています。
2023.05.31
データセンターの投資及び開発の競争が激化する中で、データセンターの事業に携わるDCオペレーター、DC開発事業者及び投資家等(以下、「DC事業者等」という)は、不動産市場における他の用途との競合を極力排除しながら、データセンター事業の収益の適正化を図るために、CRE戦略を活用することが望まれます。
■CRE戦略とは
「CRE」は1960年代に米国で注目され始めた「Corporate Real Estate」の略で、直訳すれば企業用不動産という意味になります。企業が保有している不動産のことを指し、事業を行うために必要となるオフィスや工場、倉庫などの不動産のほか、保養所や社宅、福利厚生施設、遊休地などもこれにあたります。
CRE戦略とはこうした不動産を効果的に活用することで、企業価値の向上を図る中長期的な経営戦略です。
具体的なCRE戦略としては、現オフィスを見直し、余剰になったオフィスを第三者に賃貸したり、遊休地の活用として様々な用途の不動産を開発・建設することで長期安定の賃料収入を確保する、などが挙げられます。
日本国内においてCRE戦略が注目されるようになったのは、2008年に国土交通省が「CRE戦略実践のためのガイドライン」を出したことがきっかけとされています。ガイドラインでは「CRE戦略は企業用不動産について、『企業価値向上』の観点から経営戦略的視点に立って見直しを行い、不動産投資の効率性を最大限向上させていこうという考え方である」と定義しています。データは少し古くなりますが、日本のCREの規模は490兆円※とも言われ、現在の不動産価格に換算すると、さらに膨れ上がっていることが予想されます。
- 平成18年「土地基本調査」による。
■CRE戦略の過去と現在
CRE戦略が明確に認知される前においては、企業用不動産所有者は①消極的放置、②単純売却、③単純貸付(土地又は建物)のスキームしか選択しなかったような気がします。一つの要因として、企業内でバランスシート戦略が積極活用されていなかったことや、企業用不動産所有者が不動産のプロフェッショナルでないことが要因だとも考えられます。
CRE戦略が徐々に認知され、現在に至っては、不動産会社(デベロッパー等)や建設会社が積極的に企業用不動産にアプローチを仕掛け、上記①、②、③のみならず、企業価値向上という観点に基づく有効利用の提案や、共同事業の提案により、CRE戦略による事業化が多数実現しています。また、金融商品取引法の施行(2007年)により、不動産の流動化及び投資家の参入が容易になった点のも注目すべき点です。
■データセンターの投資及び開発におけるCRE戦略の役割
CRE戦略をデータセンターの投資及び開発に適用することで、DC事業者等は以下のような利点を享受できます。
- 企業用不動産所有者側の意図を把握
不動産を売却したいのか、貸し付けたいのか、自社で有効活用をしたいのか、共同事業をしたいのか等に加え、その時期についても把握することができるため、所有者との信頼関係に基づくコミュニケーションが実現します。
- 機会損失・逸失利益の回避
他用途の不動産と比べ、データセンター適地の判定は事前調査に相応の時間を必要とします。例えば、不動産オークション等に参加の場合、検討期間内に意思決定できないこともあります。また、未確認項目のリスクを甘受して不動産投資を実行してしまうケースも考えられます。一方で、CRE戦略に基づけば、関係当事者の意思決定プロセスにより、DC事業者等はデータセンターに適した物件を選定しやすくなり、投資リスクを低減することができます。
- 投資効率の最適化
データセンターの開発は土地取得資金のみならず、建物・設備に巨額な投資資金が必要となります。CRE戦略を活用することは、資金拠出のタイミングが関係当事者の協議で進められ、先行取得にかかる非効率的な投資資金の問題を回避することが可能となります。また、共同投資におけるSPC組成のスキームにおいては、資金調達方法や融資条件の慎重な検討、最適な資金調達戦略の策定が可能となります。
- 関係当事者の利害関係の一致と出口戦略
データセンターの開発においては、巨額の投資資金と、DC竣工後安定稼働に至るまでの相応の期間を必要とします。関係当事者それぞれの思惑に合致した協議を重ねることにより、CRE戦略は、開発当事者、所有及び経営の分離が実現し、最終的な出口戦略のシナリオ構築が可能となります。
以上のように、データセンターの投資及び開発におけるCRE戦略の活用は、リスクを最小限に抑えながら収益性を最大化するための有益なアプローチと考えられます。
2023.04.30
データセンター投資をいち早く実現するために、今後需要が高まるデータセンターのトレンドを知り、習熟していくことは重要です。
テレワークやクラウドの普及、IT革命など今後もネット通信の需要は大きく伸びることが予想されますが、最新のトレンドは単にHPCによる膨大なデータ処理等、高電力消費が可能という観点に加え、更に視点を拡大することが重要になってまいります。
今回は、2023年のデータセンターのトレンドをご紹介します!
・ハイパースケールへのシフト
近年クラウドサービスを支えているのは、従来型のDC(データセンター)ではなく、HSDC(ハイパースケールデータセンター)です。
HSDCとは、膨大なデータ通信とストレージを必要とする企業が建設する大規模な施設のことで、その名の通り、従来のデータセンターよりも規模が大きく、ユーザーにはGAFAMに代表されるようなメガクラウド企業が見受けられます。
メガクラウド企業が要求するのは、「適切な立地」「大規模」「統一された品質」のデータセンターです。
最近まで、HSDCはメガクラウド事業者が大量のサーバを設置するために作られた施設でしたが、現在はGAFAMより規模の小さい SaaS 事業者なども使い始めています。
クラウドサービスの普及にともない、HSDCが世界的に増加するなか、世界中のデータセンターが消費する電力の増加が、地球環境に深刻な影響を及ぼすと予想されてきました。
しかし2020年、米ローレンス・バークレー国立研究所などの共同調査によると、2010~2018年にかけてDCの処理容量が約6倍に増えているのに対し、消費電力の伸びは全体の6パーセントの増加にとどまっていることが報告されています。
少ない消費電力で多くのデータ処理が可能なHSDCの普及により、DC全体の消費電力の増加が抑えられているのです。
HSDCは結果的に高い省エネ性能を持ち、環境への負荷低減にも貢献していると言えます。
サステナビリティが求められてくるこれからの時代ではHSDCは欠かせない施設になってくると言えます。
・再生エネルギー
DCの脱炭素化は大きく2つに分かれます。
1つは空調、電源など施設の電力使用効率の向上、2つ目が再生エネルギーへのシフトです。
近年CO2排出による地球温暖化が問題となり、再生可能エネルギー電力へのシフトが加速しています。
HSDCの普及により電力消費の増加は多少抑えることができるようになりましたが、消費電力自体が増えていくことに変わりはありません。
サステナブルなデータセンターであることは生き残りに向けて必須要件とも言えます。実際に、グローバルの大手DC事業者は再生エネルギー100%の導入目標を掲げています。
国内では寒冷な気候や再生エネルギーの立地に近いという利点を活かして、石狩市のゼロエミッションDC計画が進んでいます。
再生エネルギーでの運用が今後のデータセンターのトレンドになることは疑いの余地がありません。
・エッジコンピュータ市場
エッジコンピューティングとは、IoT端末などのデバイスや、その近くに設置されたサーバでデータ処理・分析を行う分散コンピューティングのことを指します。
クラウドにデータを送らず、エッジ側でデータの処理・分析を行うためリアルタイム性が高く、負荷が分散されることで通信の遅延も起こりにくいという特長を持ちます。
近年はIoTやAIの進化により、大量のデータを瞬時に処理する必要性に迫られました。
従来のクラウドでは大量のデータを取り扱う際に、どうしても処理リードタイムが増加してしまいますが、それに対応したのがエッジDCです。
今後はデータ量増大によるクラウドのボトルネックとなる処理遅延を避けるため、エッジコンピュータ化が更に進むと予想されます。
Google、Microsoftなどもクラウドのエッジソリューションを出し、新たなニーズを探っている段階です。
HSDCはもとより、エッジコンピュータも投資対象となる可能性を秘めています。
上記のようなデータセンターの今後のトレンドを把握し、今後の投資予測に役立ててください。
2023.01.10
CBRE(日本本社:東京都千代田区丸の内)は、「データセンター利用におけるリーシングサービス」の一環として、CBREが運営する国内最大級の事業用不動産専門ポータルサイト『PROPERTY SEARCH(プロパティサーチ)』に、データセンター専用ページ(検索サイト)を開設しました。
検索サイト開設の背景
コロナ禍以降、オフィススペース縮小に伴うサーバールームの移転や、災害・地政学的リスクを踏まえたBCP拠点の設立、DX化推進によるクラウド需要の急拡大など、データセンターに対する需要は年々高まっています。
日本国内ではデジタルサービスの拡大で、データ通信量が2021年までの2年間で倍増しており、今後、さらなるクラウドサービスの利用拡大などにより、データセンター需要が一層高まるとみられています。一方、政府によるデジタル社会基盤整備の方針の下、大都市に集中しているデータセンターの地方分散化や、「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」において、2030年までに全ての新設データセンターを30%省エネ化、データセンター使用電力の一部再エネ化義務づけを検討されていることから、新たな局面を迎えています。
CBREは、このようなビジネス環境の変化に対応するため、データセンター事業者と協業することで、一般事業会社をはじめとするデータセンター利用者に対し、利用するデータセンターの選択肢を広げていただく目的で、データセンターの物件情報を収集し、国内初のデータセンター物件の検索サイトを構築しました。
検索サイト主なサービス内容
データセンターに関わる不動産戦略策定から開発・取引および運営まで、お客様の課題解決の実行を一気通貫・包括的にサポート。
主なサービス内容は、以下の通りです。
- データセンター事業の「不動産戦略策定」アドバイザリー
- データセンター用地の「取得」における売買・賃貸仲介
- 既設データセンターの「鑑定評価」、新規データセンターの
「コンサルティング」レポート作成
- データセンター建設の「開発プロジェクト」マネジメント
- データセンター運用の「プロパティ」および「ファシリティ」マネジメント
さらなる拡大のフェーズを迎えるデータセンター業界。コロナを機に、動画配信やネット通販などは伸び、データセンターの社会インフラとしての重要性がさらに高まったことで、データセンターは、不動産投資の対象アセットとしても注目されています。グローバルをみても、通信事業者やITサービス企業が積極的な投資を行ってきました。日本国内のデータセンターマーケットは、今後、さらなる成長が見込まれることから、国外のデータセンター事業者が相次いで参入しています。年々、増える投資額を受け、国内のデータセンターの開発も急ピッチで進んでいることに加え、政府主導で進んでいる、地方分散誘導や、カーボンニュートラル対応等の社会課題にも、対応しなければいけない状況にあり、データセンター開発を戦略的に全方位で対応することが求められています。
CBREのこれまでの物流・倉庫、工場、インフラ、データセンターなどの施設におけるアドバイザリー・コンサルティング・マネジメントの知見・経験、CBREが有する国内外のネットワークと盤石なプラットフォームを組み合わせた新たな付加価値を提供するサービスに、期待が高まっています。
2022.12.10
以前、日本において安定的に稼働できるデータセンターを見極める立地条件として、
①通信遅延の解消と冗長性の確保
②高電力及び冗長性の確保
③自然災害への対策
以上の3つについて紹介させていただきました。
今回は、世界においてはどのような場所がデータセンターの立地として選出されているのか取り上げていきます。
データセンター立地ランキング、米国が圧倒的~バージニア北部がトップ
不動産専門会社 Cushman & Wakefield (クッシュマン&ウェイクフィールド)が毎年発表する「世界で最も魅力的なデータセンターの立地」にバージニア北部が再び選出されました。
グローバルデータセンター市場比較レポートでは上位8都市に米国が選ばれました。このレポートは、光ファイバーの接続性、税制優遇、土地や電力の価格などの基準に従ってインターネット中心地をランク付けしています。トップ10は米国に偏っており、Cushmanは、現在の容量が1.7GWのバージニア北部が、今後2年間で2GW以上に達する可能性が高いと予測しています。
バージニア北部が3年連続で再び総合ランキングのトップに立ったことは驚くことではありません。バージニア州は世界最大のデータセンター市場であり、強力な建設パイプラインを備えています。優れた接続性、魅力的なインセンティブ、低コストの電力を提供しています。空室率は非常に低く、需要は高く、事業者もテナントも同様に拡張に関心を持っています。このような状況から、この地域は今後2年間で世界初の2ギガワット市場になる可能性を持ち合わせています。
また、シリコンバレー、シンガポールは、土地と電力の不足がよく知られており、シンガポールの場合は実際に政府がデータセンター建設の認可にブレーキをかけたにもかかわらず高いランキングに入っています。
高電力確保は、日本においては重要な立地条件として挙げられていますが、土地と電力はCushmanがランキングで考慮した13の要因の中で最も優先順位の低い3つの項目です。これは建設業者が常にハブの既存の容量に近いという最優先事項の点数が高い場所で、キャパシティを絞り込む方法を見つけることが期待されていることを示しています。
Cushmanの上位3要素は、ファイバー接続、市場規模、クラウドの利用可能性です。
その次に位置する要素は、基本的にオプションとして提供されるもので、持続可能性、政治的持続可能性、税金、インセンティブなどが含まれます。日本で重要視される自然災害による環境リスクは、最もウエイトの低い要素です。
香港は再生可能エネルギーの利用率が非常に低く、データセンター事業者は温室効果ガスを大量に排出していることになりますが、この要素ではトップ10圏外から6位にランクインしています。
一方シアトルと新規参入のポートランドが同率10位に入ったことについては、「どちらも米国太平洋岸北西部にある持続可能性に重点を置いた都市」と環境問題への配慮を評価されています。
米国の優位性
データセンター米国優位の背景には米国のソーシャルメディアやクラウドのハイパースケーラがインターネットを支配している点にあると思われます。しかし、これは中国が他の国々と同じように国際的な不動産市場に参加していないという事実を反映していることが考えられます。北京と上海はこのリストに含まれていますが、上海は600MWで世界第4位のデータセンター・ハブであるにもかかわらず、上位をにぎわしていません。
トップ10には米国のハブが8つ含まれており、アトランタ、ポートランド、フェニックスが新たにランクインし、ニューヨーク(昨年の第9位)の陥落を補っています。ロンドン(前回7位)とアムステルダム(昨年10位)は、それぞれ800MWと400MWの規模であるにもかかわらず、トップ10から外れました。
米国以外では、シンガポール、香港、シドニーの3都市がランクインしています。なお、10位が同点であったためトップ10には11の都市が含まれています。
このような世界のデータセンターの事情が、日本にどのような影響を及ぼすのか、今後も注目が必要です。
2022.11.25
前回は、資産や負債をバランスシートに計上しない、バランスシートをスリム化する「オフバランス化」が注目される理由について、ご紹介させていただきました。
様々なメリットがあるオフバランス化ですが、今回はオフバランス化の問題点について、いくつかの要点を列挙してみます。
問題点1:トータルコストの上昇
オフバランス化のために資産を売却し、サービス利用に切り替えることで、トータルコストが上昇するケースがあります。
例えば、自社で保有するサーバー機の購入費用が200 万円で、平均6年間サーバーを使用していたとした場合に、同等スペックのクラウドサービスを月額3万円で6年間使用すると216万円となり、トータルコストが上昇します。
もちろん、サーバー機が6年より早く壊れてしまう可能性もありますし、サーバー機をメンテナンスする人員の確保に人件費がかかり、実際のトータルコストは購入費の200万円より高かったというケースもあると思います。結果としてオフバランス化しない方がトータルコストを安く済ませるケースが存在する為、サービス利用等を開始する際には慎重な判断が必要となります。
問題点2:資産価値上昇による機会損失
資産の保有は、資産を失うリスクを伴いますが、資産は価値上昇により利益を生む場合があります。
例えば国土交通省が毎月発表している不動産価格推移によると、マンション価格は2010年から12年で約1.8倍まで上昇しています。
2010年頃にマンションを売却した人の中には、“あの時売らずにもう少し保有しておけば良かった”と後悔している方も少なくないかもしれません。
保有資産の売却・処分のタイミングは、様々な要素を考慮しながら慎重に判断する必要があると思います。
問題点3:手数料がかかるケース
バランスシートをスリム化する手段の1つとして、ファクタリングサービスがあります。売掛債権を期日前に債権譲渡するものですが、ファクタリングサービスの手数料は10~20%ともいわれ、例えば1000万円の売掛金が、800万円に減ってしまうようなことが起こり得ます。
売掛金をすぐに・確実に回収できることはメリットも大きいですが、例えば資金繰りの改善が目的であれば、銀行融資を受けた方が良かったというケースも存在するでしょう。
ファクタリングを含め、オフバランス化のコンサルティングを受ける際は、その手数料についてもしっかりと確認をすることが重要です。
以上、オフバランス化の問題点にも目を向けていただくことで、より安心してオフバランス化を実施していただけるのではないかと思います。
2022.11.01
10月7日、Googleが日本のネットワークインフラに総額1000億円を投資する計画を発表しました。千葉県印西市に同社としては日本初となるデータセンターを稼働させることがニュースとなりましたが、データセンターに詳しい方以外は「なぜ印西市?」「千葉ニュータウン中央駅」ということのようで、SNS上で話題を呼んでいます。
近年はベッドタウンとして人気も高まっている印西市ですが、実はIT業界では、データセンター(DC)が集まる『DC銀座』として有名なのです。以前から海外企業向けの大型データセンターが続々と建設されています。アマゾンのデータセンターも印西市にあり、いまや海外でも、『INZAI』の名は知られているそうです。
データセンターは、サーバーやネットワーク機器を収容する施設なので、現在の企業にとっては生命線ともいえる存在です。そのため、地震などの災害にも耐える必要がありますが、印西市はどうなのでしょうか。
印西市は千葉県北部にあり、南東部に印旛沼、北西部に手賀沼、北部を利根川が流れています。しかし市の大部分は、標高20~30メートルの平坦な台地にあり、データセンターが多く集まる北総線・千葉ニュータウン中央駅周辺も、その大地の上に位置しています。
千葉ニュータウン周辺は下総台地の平坦地にあり、地盤もよく、災害リスクも低い土地にあたります。この付近の下総台地の地盤は、10数万年前にできた締まった砂層と、安定した関東ローム層の地盤からなっています。地震の揺れが増幅されづらく、液状化も発生しにくい特徴があります。
さらに、海から離れた内陸にあるため津波の心配もなく、水害のリスクも少ないと言えます。
「DC銀座」となった理由は、災害リスクが低いからだけではありません。
東京都心から約40km、成田空港から約15kmという立地で、アクセスが良好。また、アメリカなど海外と結ぶ海底ケーブルの陸揚げ拠点である茨城や南房総と、東京の通り道にあることも大きな強みです。更にデータセンターは非常に多くの電力を消費しますが、2023年に東京電力の超高圧変電所ができるなど、データセンター建設において必要不可欠なインフラが充実しているのです。
千葉のデータセンターは、日本に対する7億3千万ドルのインフラ関連投資の一部であるとGoogleのCEOピチャイ氏は述べています。この投資には、太平洋を横断し、2023年の開通時には日本とカナダ西海岸を結ぶ最初の光ファイバケーブルとTopaz海底ケーブルも含まれます。
2022年3月に大東建託が発表した「子育て世帯の街の住みここちランキング2021<首都圏版>」によると、東京都中央区に次いで第2位の印西市。
Googleの進出によって、今後もますます注目を集める場所になりそうです。
2022.11.01