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2025.06.17
東京電力パワーグリッド株式会社(東電PG)は、デジタルインフラ事業の推進に向けて「TEPCOデジタルインフラ株式会社」を設立しました。背景にあるのは、データ需要の爆発的な増加と、生成AIをはじめとした高度なデジタル技術の普及に伴う、電力インフラの再定義。もはや電力会社は単なるエネルギー供給者ではなく、データ社会の根幹を担うパートナーとして進化しつつあるのです。
その象徴ともいえる取り組みが、NTTデータグループ・NTTグローバルデータセンターと東電PGによる千葉県印西白井エリアでのデータセンター共同開発。2023年末に発表されたこの計画では、特別目的会社(SPC)を2023年度中に設立し、2026年下半期のサービス開始を目指しています。第1弾として、IT機器向け電力容量50MWという大規模なデータセンターの建設が計画されており、今後も首都圏を中心に共同開発が順次検討されています。
電力会社の知見とICT企業の技術が融合する時代へ
このプロジェクトの意義は、東電PGが有する広大な設備資産と電力運用のノウハウ、そしてNTTグループが持つ先進的なICT技術とグローバルなデータセンター運用能力が融合し、より高度でサステナブルなデータセンターのモデルを構築しようとしている点にあります。特に脱炭素や分散電源といった社会課題にも対応しうる設計思想は、次世代型インフラの方向性を示唆しています。
同様の動きは他の電力会社にも見られます。東北電力はコンテナ型の移動式データセンターを活用した生成AI向け新ビジネスの展開を始めました。この取り組みでは、GPUを搭載したサーバーを数か月で稼働可能とし、スピード重視で市場参入を果たした点が特徴です。若手や中途人材の発案を基にスタートしたこのプロジェクトは、冷涼な東北の気候を活かした電力消費の効率化、そして将来的な大規模データセンター誘致の布石ともなります。
データ社会の基盤としての“電力”の存在感
こうした背景には、電力需要の構造変化があります。データセンターや半導体工場の新設・拡張により、2034年には電力最大需要が715万キロワットに達すると予測されており、今後の日本における電力供給体制の再設計が喫緊の課題となっています。安定供給、再エネ対応、ベースロード電源の確保といった課題を同時に解決するには、電力とデジタルの一体的な取り組みが欠かせません。
このように、電力会社がデジタルインフラに深く関与し始めた現在、データセンターと電力は切っても切り離せない存在となりました。高密度化・常時稼働が前提のデジタル基盤には、大容量かつ安定した電力が不可欠であり、一方で電力会社にとっては、脱炭素や新たな収益源を模索する上で、データセンターは最も現実的な成長ドライバーです。
つまり今、電力会社とデータセンター事業者は、単なる供給者と利用者という関係を超えて、共に社会基盤を築く「パートナー」へと関係性を変えつつあるということ。安定供給と持続可能性を両立する未来を描くには、両者がタッグを組んで共に挑戦していくことが必要不可欠なのです。
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