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2025.10.21
生成AIの急速な普及に伴い、AIモデルの開発・運用に必要な計算資源への需要が爆発的に高まっています。そうした中、オープンAIが自社でデータセンター(DC)投資を進めるとの報道が注目を集めています。これは、AIの開発体制だけでなく、ITインフラの主導権が変化しつつあることを示す動きといえるでしょう。
背景には、NVIDIAによるオープンAIへの戦略的投資があります。GPUの供給を握るNVIDIAは、AI需要の拡大に伴う演算能力確保のため、AI開発企業とより密接な関係を築こうとしています。その延長線上で、オープンAIが自社DCを持つことで、モデル開発から運用までの最適化を図る狙いがあるとみられます。
メガクラウドからAI企業へ、主導権の移行
これまでDCは、Amazon(AWS)、Microsoft(Azure)、Google Cloudといったメガクラウドベンダーが主導してきました。これらの企業は、それぞれ自社仕様のサーバー設計や冷却技術を採用し、世界各地で数百MW規模のキャンパスを展開しています。たとえば、AWSはバージニア北部やシンガポール、Microsoftはアイルランドや日本での自社建設を拡大中です。Googleも欧州や米国内での拡張を継続しています。
一方で、オープンAIのようなAIモデル開発企業が自らDCを保有する動きは新しい潮流です。これまではクラウドベンダーが提供する環境に依存してきましたが、AIモデルの進化に伴い、高密度計算や冷却効率など、AI特化型設計を求めるニーズが高まっています。今後は、メガクラウドの仕様ではなく、オープンAIが求めるスペックが優先されるケースも増えると考えられます。
「演算主権」の確立が次の競争軸に
クラウドベンダーの多くは、初期段階ではリースや共同運営を活用し、成熟段階で自社設計の拠点を増設する“ハイブリッド型戦略”を採っています。オープンAIもこの流れを踏まえ、自社DCによって可用性や効率性、冷却性能などを最適化しようとしている可能性が高いです。これは単なるインフラ投資ではなく、AI競争力を左右する「演算主権」の確立に向けた一歩といえます。
中国勢を中心とした低価格AIが台頭する中で、オープンAIは独自の技術基盤を強化し、攻勢を強めています。AIモデルの性能だけでなく、その“動かす基盤”にまで踏み込む姿勢は、今後の業界構造を大きく変えるでしょう。データセンター投資の主役がクラウドからAI企業へと移りつつある今、次世代インフラの在り方に注目が集まっています。
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