TOPICS & NEWS
2025.12.20
ソフトバンクは近年、通信事業者という枠を超え、AI時代の社会基盤を担う企業へと進化しようとしています。その中心となっているのが、全国に分散配置されるAIデータセンターと、通信・計算処理を統合した次世代インフラ構想です。同社は大規模な処理能力を特定の都市に集中させる従来型のモデルから脱却し、全国どこでも高度なAI処理を利用できる環境の実現を目指しています。
分散型AIデータセンターで広がる新モデル
ソフトバンクが重視するのは、「Brain Data Center」をはじめとする大規模AI拠点に加え、「Regional Brain」や基地局レベルのエッジAIサーバまでを連携させる、分散型の計算ネットワークです。これにより、処理が必要な場所に近い拠点でAI演算を行うことができ、これまで数百ミリ秒かかっていた応答を数十ミリ秒まで短縮できます。
この即応性の高さは、防災システム、スマート工場、道路監視、自動運転など、リアルタイム性が求められる領域で大きな価値を発揮します。
さらに、同社は具体的なデータセンター建設にも積極的です。北海道・苫小牧では約70万平方メートルの敷地を活用したAIデータセンターを建設中で、再生可能エネルギーの活用を前提とした大規模施設が計画されています。大阪・堺市では旧工場跡地を活用して150MW級の拠点整備を進め、将来的には400MW規模まで拡張する構想もあります。これらの取り組みにより、国内のAI処理基盤は一段と強化される見込みです。
クラウド強化と地域活性化につながる広がり
ハードウェア面だけでなく、クラウド・AIサービス基盤の強化も進んでいます。ソフトバンクはOracleと連携し、国内データセンターを活用したソブリンクラウド基盤の整備を推進しています。企業や自治体が重要データを国内に留めたままAIを活用できる環境が整いつつあり、データ主権への関心が高まる中で大きな意義を持ちます。
また、分散型AIデータセンターは地域社会のデジタル化にも直結します。AI活用が都市部に集中しがちだったこれまでとは異なり、全国の自治体や企業が高度なAI処理を身近に利用できるようになるため、地域経済の活性化にもつながります。医療、防災、物流、製造など、地域の実情に応じた活用も期待できます。
もちろん、データセンター建設には電力確保や冷却設備、土地調整など多くの課題があります。しかしソフトバンクは自治体との迅速な協議を進め、短期間での合意形成に成功した例も見られます。これは、AI社会を支えるインフラ整備の重要性が自治体側にも共有されていることの表れだと言えます。
総じて、ソフトバンクの取り組みは、AI社会に不可欠となる新たな社会インフラづくりに挑む姿勢を明確に示しています。通信・AI・クラウドを融合した独自の基盤を全国に展開することで、国内産業の発展を下支えする役割を果たすことが期待されます。今後の動向にも注目が集まります。
dil_admin
TOPICS & NEWS



EN