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2023.08.31
デジタル庁は、政府や地方自治体が共同利用する政府クラウド(ガバメントクラウド)の提供事業者に関する選定要件を緩和する方針を表明しました。
政府クラウドとは、政府と地方自治体が利用するクラウドサービスの共通基盤のことを指しています。ガバメントクラウドと呼ばれ、政府は2025年度末までに税金や国民年金など市町村が担う20の基幹業務に関するシステムを政府クラウドで利用できる体制にする目標を掲げています。
330ほどの要件を1社で満たす必要がある現行ルールを改定し、企業連合での参入を可能にします。これによって外資に依存する政府クラウドに、国内企業が参入しやすくなる可能性があります。
これまでの多岐にわたる選定要件を単独で満たせる事業者は決して多くありませんでした。2022年度の公募では、セキュリティーや業務継続性などの技術要件を満たす米国企業のクラウドサービスが存在感を発揮、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のほか、グーグル、日本マイクロソフト、日本オラクルの4社のみが選定。
国内企業は事業規模やサービス内容などで要件を満たせず、特にシステムの開発から運用支援する体制の構築や、複数のデータセンターを使ったサービス、人工知能(AI)が機械学習する開発環境の提供などがハードルとなっています。
1社で実現できるのはAWSやグーグルのような「ハイパースケーラー」と呼ばれる巨大IT(情報技術)企業に限られています。
同庁は8月中にも、政府クラウドの提供事業者に関する新たな選定要件を発表して公募を始めるものとみられます。選定された事業者には、新要件は現行の項目をおおむね維持しつつ、データ管理や認証などの中核技術を自社で担っていれば他社と共同でサービス提供できることを認めます。
政府クラウド事業者の選定は10月下旬に決定される予定。
選定要件緩和の背景
今回の選定要件の緩和の背景には
「政府クラウドを保管・提供するクラウド事業者の選定基準を見直すべきだ」
という日本企業、クラウド事業者からの声が高まっていることがありました。今後は、さくらインターネットやインターネットイニシアティブのような企業が、国内クラウド市場に参入する新たなチャンスをつかむ可能性は極めて高いと考えられます。
しかしこうした改正にもかかわらず、デジタル庁は、自治体が事業者を選定する権利は維持されると述べています。つまり、今回の改正が実際の選定にもたらす変化は限定的なものにとどまる可能性も。
政府クラウドに複数企業での共同参入を要望しているクラウド事業者は少なくありません。要件緩和後の選定結果に期待と注目が集まりそうです。
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