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その2:データセンター(DC)とカーボンニュートラル

カーボンニュートラルへ向けた再生可能エネルギー等の取組みの状況

 

 現在、日本に限らず発電への依存が最も大きいのが化石燃料による発電です。石炭、石油、天然ガス等の化石燃料は、発電する代償として、大量のCO2を大気中に放出することが問題となり、地球温暖化を食い止める観点から世界中でCO2削減が叫ばれています。自動車、航空、運輸産業等においても同様で、化石燃料に代わるエネルギー源を模索し、開発・研究に力を入れている状況です。

 また、元々エネルギー資源の乏しい日本においては、1980年代から原子力発電への舵取りに踏み切ったものの、福島第一原発事故に伴い、今後、原子力発電へ依存するか否かは不透明な状況となっています。

 このような状況下、今一番注目されているのが再生可能エネルギー(以下、再エネという)の活用です。再エネには太陽光、風力、バイオマス、地熱、潮力、水中、その他と多岐に渡りますが、最も一般的に活用されているのが、太陽光発電です。太陽光発電はDCと一緒になって活用されるケースが日本でも最近は多くみられるようになりました。ただ、再エネの発電効率を考えると、現時点ではカーボンニュートラルと言えるには程遠く、結局のところは化石燃料由来の電力会社の電力に依存せざるを得ないのが現状です。

 

 ところで、メガクラウドベンダーと言われるGAFAMの動向について触れてみると、マイクロソフトは、2030年までに「カーボンネガティブ」にする計画を発表しています。アマゾンは2025年までに再エネを100%使用することをコミットしており、Googleは同社の全てのDCPUE値が1.1を下回っており、他社DCより消費電力が少なく、業界平均をはるかに下回っていると発表しています。

 では、何故メガクラウドベンダーはこのようなカーボンニュートラルの施策が可能となるのでしょうか。ひとつは、北欧エリアの豊富な再生可能エネルギーを活用(開発や再エネの購入)していると共に、同エリアにDCを誘致して、寒冷地DCを実現していることにあります。また、アメリカ大陸においては、広大な土地を活用して、太陽光の大量発電とセットでDCを誘致し、再エネで電力を賄う規模で開発されている状況です。残念ながら日本において同様のDC開発は地理的観点から難易度は高く、実現性が乏しい先例となります。日本には日本に合ったカーボンニュートラルを実現するほかありません。そのためには、再エネの技術開発により一層注力して、例えば、水素、メタン、アンモニア等を活用して、再エネ分野で発電効率を上げることが重要と考えています。そして最も重要なのが、日本におけるDCの寒冷地エリアへの地方分散の実現です。

 

 日本において寒冷地DCとして、高スペックの機能を発揮しているのが、さくらインターネット株式会社の石狩DCと株式会社データドックの新潟・長岡DCに代表されるものがあります。これらのDCは寒冷地特有の外気冷房方式を採用して、PUE値が1.2を下回る数値となっています。また、京セラコミュニケーションシステム株式会社は、再生可能エネルギー100%で運営するDCを石狩市で開業します。

 このように、DCのカーボンニュートラル実現への近道は、寒冷地を中心としたDCの地方分散化が近道であり、国もDCの最適配置に向けて舵を切っている真っ只中にあります。

(その3)では、DCの最適配置に向けての地方分散と現状の矛盾について触れてまいります。

(文責)小杉 雅芳

Founder Message

2022.09.05

その1:データセンター(DC)とカーボンニュートラル

 今回はカーボンニュートラルなDCの実現の観点から考察してみたいと思います。

 DCはサーバーやネットワーク機器類などを安全かつ安心して格納することを目的として作られる施設(不動産)です。サーバーは大量の電力消費が必要な機器です。よって、DCでは大量の電力が消費されます。加えて、サーバーは大量の熱を発生するため、サーバーを正常に稼働させるためにはDC内を一定温度に管理する必要があります。つまりDCはサーバーのみならず、空調機器も大量に電力を消費する、カーボンニュートラルの観点から、大変厄介な施設と言えます。

 大雑把なデータですが、日本国内電力消費の約1.4%(2018年)をDCが消費していると言われており、2030年には2018年比6倍以上になるとの分析もあります。

 世界におけるデジタルインフラ分野の成長加速は不可欠で、その中でDCは重要な位置付けになる一方、CO2排出の観点で悪役にもなり兼ねません。

 DCとカーボンニュートラルの両立は、はたして成しえることが可能でしょうか。

 

 DCの電力消費をみる一つの指標としてPUEPower Usage EffectivenessDC全体の消費電力/IT機器の消費電力)があります。1.0に近ければ近いほど、IT機器以外の消費電力が少なく、効率的なDCということになります。

 一昔前のDCPUE2.0前後であると言われていましたが、最近竣工しているDCのスペックを見ると、PUE1.4程度のものが主流となっているようです。また、これから着手するDCにおいては、PUE1.2を下回る設計値を謳っているものも目立ち始めました。

 このようにPUE値が下がり、1.0に近づいている要因は、①空調機器等の性能の向上、②サーバールームの効率的冷却を実現するための設計レベルの向上です。ただ、PUE値を押し下げるにはもっと重要な点があります。それはDCが立地する自然的条件です。

 サーバールームは一般的に室温を20℃〜27℃に保っておく必要があるため、空調機器類が最も電力を消費するのは真夏で、且つ昼間の外気温が高温になる時間帯です。DCの立地が寒冷地であれば、大都市と比べ空調効率も良く、更に日中夜の寒暖差が大きいところでは、夜は外気を活用した冷却も可能となります。つまり寒冷地等の地方の立地では、空調機器を極力利用せずにサーバールームの室温を管理することが可能となり、空調機器を使用しない分、PUE値改善に大きく貢献することとなります。

 このように、DCを開発する事業者等はCO2削減、カーボンニュートラル社会に向けて鋭意努力していますが、DCは大量の電力消費が不可欠であることは変わりません。

 次回のブログ(その2)では、カーボンニュートラルを目指したDCの再生可能エネルギー活用の取組みにつきご紹介したいと思います。

(文責)小杉 雅芳

 

 

  • 総合資源エネルギー調査会(経済産業省:令和43月)

20220324001-b.pdf (meti.go.jp)

Founder Message

2022.09.05

「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」総務省、第一回の採択結果から見るデータセンター事業の未来

採択事業者一覧

 

令和4年6月27日、総務省は「データセンター、海底ケーブル等の地方分散によるデジタルインフラ強靱化事業」の令和4年度1回公募採択結果を公表しました。

採択された事業者は以下の通り。

間接補助事業者

間接補助事業実施場所

合同会社石狩エネデータセンター第1号

北海道石狩市

ヤフー株式会社

福島県白河市

NTTグローバルデータセンター株式会社

京都府相楽郡

株式会社オプテージ及び合同会社KS東梅田

大阪府大阪市

ソフトバンク株式会社及びBBIX株式会社

奈良県生駒市

株式会社インターネットイニシアティブ

島根県松江市

株式会社QTent

福岡県福岡市

 

公募の目的は?

 

総務省はこの公募の目的について、大規模震災の発生等が予測される日本において、データセンター、海底ケーブル、インターネット接続点(IX)等のデジタルインフラを設置する支援を行い、地方分散による強靱な通信ネットワーク拠点の整備を行うことは、経済安全保障の観点等から、国内外のデータを「安全・安心」に蓄積・処理できるデータ・ハブとなることに貢献できる旨を掲げています。

 

データセンターを誘致したい地方自治体

 

これに先立ち、令和4年4月12日、経済産業省はデータセンターの新設に前向きな土地のリストを公式サイトで公開しました。

データセンター配置の最適化に向け、新設に前向きな地方公共団体と意見交換したところ、100を超える地方公共団体から候補地の提示があり、その多くは実現可能性に向けた検討段階であったこと、そしてデータセンター事業者などへの認知拡大を望む声もあったことから公表に至ったようです。

 

データセンター事業の未来は?

 

2021年に発表されたIDC Japan 株式会社の国内データセンターサービス市場の最新予測によると、2025年のデータセンターの国内市場規模は2兆7,987億円。2020年から2025年の年間成長率は12.5%になると予測されており、クラウド需要を背景に引き続き拡大すると期待されています。

 

また同社の調査によると、2021年から4年間ほどはデータセンターの新設が相次ぐと予測されており、この期間に新設される事業者データセンターは、延床面積ベースで毎年20万平方メートル(東京ドーム4個分)前後の見通しです。

 

ますます活性化するデータセンター投資から目が離せません!

 

デジタルインフラの知見を活かして、

オフバランス化をご提案します。

 

データセンターに代表されるデジタルインフラへの投資は、非常に高額で、かつ多様な情報収集が必要なため、スピーディーな意思決定ができずにビジネスチャンスを逸するケースが散見されます。私たちデジタルインフラ・ラボは、日本におけるデジタルインフラ投資を持続可能に促進するため、事業性評価、ファンドマネジメント及びアセットマネジメント、建設及び開発、そしてデータセンター運営の実務経験者が集っています。

 

デジタルインフラ領域の知見に基づくオフバランス化スキームを中心に、貴社にメリットのあるESG投資のご提案を致します。

 

詳しくはこちら

https://delta04.main.jp/dil/proposed-scheme/

 

引用・参考:
https://www.ciaj.or.jp/ciaj-wp/wp-content/uploads/2022/06/20220627saitaku.pdf
https://www.ciaj.or.jp/dc_inf/#inner_info
https://www.meti.go.jp/press/2022/04/20220412003/20220412003.html
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prJPJ48272821

TOPICS & NEWS

2022.08.09

MW単位の地中熱活用について

地中熱活用というと「地中熱発電」が思い浮かび、不安定さが指摘されます。
しかし、地中熱は常に一定の温度を維持しているため、熱交換により冷暖房にも利用できます。

デジタルインフラ・ラボは地中熱活用の権威である笹田 政克氏(地中熱利用促進協会 理事長)を訪問し、地中熱の活用状況について伺いました。
大型病院でのは空調設備でMW単位の活用事例もあり、ゼネコン等から笹田氏への問い合わせが増えているとのこと。

データセンター用地で人気があり、かつ地中熱活用に適しているエリアに関する情報を聞くこともできました。
具体的な提案に活用するべく、引き続き研究していきます。

TOPICS & NEWS

2022.06.27

次世代デジタルインフラの
構築・発展のために

 デジタルインフラ・ラボ株式会社は、デジタルインフラ分野のアセットを対象に、日本における投資の促進を目的として設立したアセットマネジメント会社です。

 

 デジタル及びデジタルインフラ分野の発展と加速は、今や世界経済成長の大黒柱となっています。そんな中、日本におけるデジタル化は、先進主要欧米諸国やアジア圏諸国と比べ遅れをとっている状況(「世界デジタル競争力ランキング2020」で、日本は27位)です。21世紀に入って早20年余り、海外勢が鎬を削り、デジタル分野と経済が一体となって成長を加速させている一方で、日本のデジタル分野においては、政治、行政、経済、社会に至るまで従来型の手法から脱皮できず、大きな変革が進まなかったことが要因の一つではないかと考えています。 ところで、少し時代を遡った1990年代末期、日本は、バブル崩壊後の金融恐慌に陥りました。その際、巨額資金を持つ欧米の投資ファンド等が、日本の不良債権・不動産投資を加速させ、多大な利益を獲得しました。日本も、最悪のシナリオから脱却、徐々に経済が再生するとともに、その後は日本の金融改革も進みました。この中で、間接金融から直接金融への足がかりはできたものの、欧米諸国、中近東及びシンガポールのような巨大投資ファンド等の組成には、今も至っていない状況です。私は、私たち日本人の国民性が一つの要因なのではないかと考えています。リスクを取る感性が、農耕民族と大陸系民族とで異なると感じています。ただ、この状況は、巨額な設備投資を必要とする成長著しい企業の立場からすればどうでしょうか。間接金融での資金調達には限界があります。リスクを積極的に受け入れる資金を調達できなければ、更なる日本経済成長は見込めず、新たなビジネスを目論む優秀な人材・企業の多くの芽を摘んでしまうことになりかねません。

 

 今日、私たちは、新型コロナウイルス禍後の経済再生、デジタル化の急速な推進、脱炭素化、国民の価値観の変化と多様化、SDGs、共生社会重視といった新しい潮流の中にいます。

 私たちが取り組むものは、デジタル化推進の屋台骨となるデジタルインフラ分野の成長・加速です。現在、デジタル分野においては、、AI(人工知能)やディープラーニング(深層学習)が不可欠ですが、これらを可能にするHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)を安心して設置するためのデジタルインフラの環境が整っていない状況です。高性能データセンター、エッジデータセンター及び通信網・基地局等デジタルインフラ全般を早期に整備する必要があります。また、日本のデータセンターの約8割が、レイテンシー(通信の遅延時間等)や交通アクセス等の理由で関東及び関西に集中しているため、BCPの観点からも問題となっています。さらに、現存するデータセンターは、築年数が20年以上経過したものが40%以上を占め、老朽化が進んでいます。加えて、低電力データセンター(2kVA/ラック以下)の割合が約60%以上であり、AI等の膨大なデータ処理(少なくとも6kVA/ラック以上必要とされています)ができない状況となっています。そして、最も重要な点は、デジタルインフラの投資には巨額の資金が必要ということです。データセンターを新規開発するために必要な資金は、延べ床面積当たり@300万円/坪以上と言われ、これは通常のオフィスビル等の建設に必要な資金の3倍程度です。例えば、1,000ラック規模のデータセンターの建設には概ね100億円以上の投資資金が必要となり、容易に投資判断ができるような規模ではありません。日本では、一部の資金力のある大手キャリア系や大手システムインテグレーター系の企業が限定的に投資を進めているのが一般的であり、巨額の投資資金がデータセンター開発促進の足かせとなっていると考えられます。これを解消するため、私たちは、アセットマネジメント業務を通じて不動産投資資金の流動化(オフバラ)を積極的に活用すべきと考えています。つまり、所有と経営の分離により、デジタルインフラ分野への投資を加速させていくことが可能となります。一方で、投資の推進に際しては、脱炭素化の潮流に配慮する必要もあります。デジタルインフラ分野の投資が、ESG投資の位置づけでなければならないということです。

 私たちは、デジタルインフラ分野において必要とされ続ける企業として、アセットマネジメントの手法を活用して、日本におけるデジタルインフラへの投資促進を図り、次世代デジタルインフラの構築と経済発展に微力ながら貢献したいと考えております。

 

 私たちの思いを、ステークホルダーの皆様にご理解・ご共感いただき、良好な関係性を構築していけることを心より期待しております。

 

20225

デジタルインフラ・ラボ株式会社

代表取締役  小杉 雅芳

Founder Message

2022.06.24

水中発電機が日本で近く実用化へ

データセンターの消費する莫大な電力が、今後の投資マインドに大きく影響するとの指摘が聞こえてきます。
持続的で信頼性の高い再生可能エネルギー由来の電力供給をいかに実現するのか、その重要性は日に日に高まっていると言えます。
 
その解決策となる可能性を水中発電に感じました。
今後10年で実用化の段階に入った、水流発電システム“かいりゅう”は、潮力発電機とは違い、海流からのエネルギーを利用するように設計された実験機であり、海中のほうが流れはゆっくりですが、はるかに広い範囲で発生する可能性があります。
つまり、より多くの発電機を配置し、発電地域を拡張できるようになるということです。
また、水中発電は風力よりもはるかに効率が良く、太陽光ほど断続的ではありません。日本は太陽エネルギーに関して理想的な地域ではなく、かつ近海では各国海軍の活動が活発なため、潮力発電機の設置が難しくなっています。
これらの課題があるからこそ、再生可能エネルギーを活用した素晴らしい発電技術が日本で生まれたのでしょう。
デジタルインフラ・ラボの標榜する「ESG投資の優等生となるデータセンター」実現に向けて、心強いニュースとなりました。
 
 

引用:https://www.ihi.co.jp/var/ezwebin_site/storage/original/application/5a7bd9898dee90868aa1e1e085beb50b.pdf
ESG + DC

2022.06.06

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